情報教育と環境

名城大学の情報教育環境と情報教育について



1.はじめに

 名城大学は、3つのキャンパスに分かれており、愛知県名古屋市に天白キャンパスと八事キャンパス(薬学部)があり、また1995年4月から岐阜県可児市に可児キャンパス(都市情報学部)が新たに開設されている。天白キャンパスには、法学部(法学科)、商学部(商学科・経済学科)、理工学部(数学科・電気電子工学科・機械工学科・交通機械学科・土木工学科・建築学科)、農学部(農学科・農芸化学科)、短期大学部(商経科)、教職課程部および大学院(法学研究科・商学研究科・理工学研究科・農学研究科)が設置されている。八事キャンパスには、薬学部(医療薬学科・薬学科)および大学院(薬学研究科)が、そして可児キャンパスには、都市情報学部(都市情報学科)が設置されている。6学部14学科、1短期大学部から構成されている総合大学で、学生数は全学で約14,400名である。
 本学の情報教育は、各学部で決められたカリキュラムで実施されており、全学で統一されているとはいえない。1993年4月に全学部で利用できる共同利用施設で、初等情報処理教育を中心にした情報センター附属情報処理教室が初めて設置された。附属情報処理教室は各学部の授業で利用されているが、1教室しかないため、これまで通り文系学部、理工学部、農学部では独自の情報処理教室を設置し、初等情報教育の一層の充実を行いながら、問題解決型の応用情報教育、専門情報教育が実施されている。
 本稿では、本学の情報教育環境と情報センターでの情報教育を中心に紹介する。


2.情報教育環境

 本学の電子計算機を使用して行う教育研究の推進をはかるための基本的な理念の確立と、それに基づく長期の電算総合計画については、電算総合計画検討委員会が平成元年に設置され、現在までに附属情報処理教室の設置や全学のネットワークの敷設が計画され、実施されてきた。1993年4月には、全学共同利用施設の電子計算機室を発展・改称して、新しく情報センターが設置されると同時に、初等情報処理教育のための附属情報処理教室が設置された。その運用・管理は情報センターが行っている。1995年10月に、全学の教育・研究情報ネットワークが敷設され、さらにネットワークを有効利用するための教育・研究用の各種サーバと情報処理教室を設置した。

2.1 ネットワーク

 名城大学教育・研究情報ネットワークは、天白キャンパスの情報センターを中核とし、八事、可児の各キャンパスおよび名古屋大学を結ぶ広域ネットワーク(WAN)と、天白、八事および可児キャンパス内に敷設する学内LANに大別できる。本学のネットワークの構成を図1に示す。

  1. 広域ネットワーク
     広域ネットワークは、天白を中心とし、天白−八事間、天白−可児間を高速ディジタル回線(128Kbps)で接続、インターネットへは近隣の名古屋大学(NICE接続)−天白間を高速ディジタル回線(512Kbps)で接続している。天白−農学部附属農場間(春日井市)はISDN(INSネット64)回線を設置し、利用者が使用するときに回線接続をして使用する。一般の商用データベースへは、学内LANから電話回線(7回線)経由で接続する。学外(教職員、学生)からの大学へのアクセスも利用可能となっている。

  2. 学内LAN
     本学の学内LANは、可児キャンパスが1995年4月に新しくオープンされ、幹線が FDDI、支線がEtherNetで敷設された。1995年10月に天白と八事キャンパス内に、幹線として建物間を光ケーブルで敷設し、最新のネットワーク機器であるATMスイッチ(Lattis Cell:155Mbytes)と各建物内にEtherスイッチングハブ(EtherCELL)を設置した。ネットワークの形態は、ATMスイッチを中心にしたスター型LAN構成で、バーチャル(仮想)LANの機能を採用した。バーチャルLANは、LANに接続されている端末を論理的にグループ化する機能をもっていて、物理的なケーブリングの変更を行うことなく、ネットワーク機器の移動、追加、変更をソフトウェアで自由に行うことができる特徴がある。
     IPアドレスはグローバルアドレスCクラス8本しかないため主としてローカルアドレスを採用している。
     支線は将来のことを考え、建物内にUTPカテゴリ5のケーブルを敷設し、全学で約750箇所の情報コンセントを設置した。支線の情報コンセントからは回線速度10Mbpsの通信ができるようになっている。設置当初は、接続された端末数は約400台ぐらいであったが、この1年半で約1,350台にもなった。
     ネットワークに流すプロトコルは、TCP/IPのみが望ましいが、最終的にはTCP/IP、Apple Talk、NetWareの3つとした。

    図1 ネットワーク構成

2.2 各種サーバ構成

 上記のネットワークを教育・研究に有効利用するためのサーバを設置している。サーバ・システムの構成を図1に示す。なお、センターのメインのサーバは、計算サーバ(HPが3台)、ファイルサーバ(HPが1台)、データベースサーバ(HPが1台)で、センター内のFDDIに接続されている。外部向けのサーバは、WWW&Ftpサーバ(HPが1台)とMailサーバ(HPが1台)がある。学内向けにはCD-ROMサーバ(DOS/Vが2台とHPが1台)、PPPサーバ(DOS/Vが2台)、Printサーバ、FAXサーバ(DOS/Vが1台)などがある。これらのサーバは、各学部の情報処理教室、各研究室などから利用できるようになっている。

2.3 運用・管理とサポート

 情報センターでは、職員3名と教員1名で、ネットワーク、サーバ、附属情報処理教室の運用・管理とユーザのサポートを行っている。しかし、全てのサポートを行うことはできないため、ネットワーク運用のためのサポートに各学部から教員1名に協力をお願いしている。また、学部学科内でもネットワークやサーバをサポートするグループ作りもお願いしている。


3.情報教育

 本学の情報教育は、法・商・短期大学部に4教室(Windows95約190台)、理工学部に4教室(Windows95約270台)、農学部に1教室(PC約42台)、都市情報学部に2教室(DOS/V70台、WS70台)、情報センターに1教室(Mac80台)の情報処理教室が設置されており、各学部で初等情報教育、応用・専門情報教育が行われている。情報センター附属情報処理教室は、各学部の初等情報教育を中心に授業が行われている。

3.1 サーバを利用した情報教育

  1. 計算サーバの利用
     教育・研究用に6台のUNIXの計算サーバが設置されている。計算サーバは各学部の情報処理教室からネットワーク経由でアプリケーション(Mathematicaなど)やプログラミング授業、インターネット授業などで利用されている。

  2. 電子メール
     教職員や学生及び学外との情報交換が行われている。授業のなかで電子メールを利用し、ネットワーク上でのエチケットなどの教育がされている。

  3. NetNews
     国内で購読できるニュースの一部 fj、tokai等を用意し、教育・研究での情報収集に利用されている。

  4. インターネット
     各学部にWWWサーバを設置し、教職員及び学生が自由に利用できるように予定している。インターネット上にはたくさんのデータが蓄積されているため、この代理サーバを利用して、インターネットの中から自分の望むデータを効率良く検索できるようにすることで、問題解決能力の育成を図っている。また近年では就職のために利用されている。
     インターネットでの情報発信は、現在準備中で、学部単位でこれから実施される予定である。

  5. 商用データベース
     研究用としてネットワーク経由で商用データベースのアクセス用に発信4回線(28.8Kbps)の電話回線を利用している。一部のゼミ等で利用されている。

  6. 電子掲示版
     NetNewsの中でローカルの掲示板を用意し、学内ローカルニュース及び外部のニュースを教育・研究で利用する。

  7. 学外からの利用
     教職員、学生が家庭等から学内の計算機等を利用できるようにPPP(Point to Point Protocol)接続用の電話回線(着信12回線、28.8Kbps)とINSネット64を1回線用意している。着信12回線は学生も利用しており、回線数の増設なども検討しなければならない状態である。

3.2 情報処理教室での教育

 各学部で設置されている情報処理教室の教育内容はここでは省略し、情報センターでの情報教育について述べる。

  1. 情報センター附属情報処理教室
     情報センター附属情報処理教室ではMacintosh(先生機1台、学生機LCII80台)、ネットワークプリンタ11台、ファイルサーバ5台、100インチのマルチスキャンプロジェクタ1台等が設置されており、5学部と短期大学部の教員が授業時間にセンターに来て授業を行い、その一部をセンターの専任教員が担当している。1部と2部の授業が行われ、初等情報教育の授業が実施されている。時間数では、32コマ/週のうち19コマの授業が行われ、そのうち初等情報教育関係が13コマ、応用情報教育関係が4コマ、専門情報教育関係が2コマである。残った時間は学生が自由に利用できる時間であり、出された課題を作成するのに利用されている。初等情報教育として、ワープロ教育、表計算教育、図形処理(お絵描き等)教育、データベース教育、ネットワーク教育等が行われている。ネットワーク教育では、ネットワークエチケットや著作権等の教育も行われている。応用情報教育では、表計算を利用したシミュレーションが行われている。専門情報教育では、CADやプログラミング教育等が行われている。
     機器を購入して5年経過するため、他の機器との処理速度の差が大きくなり学生から機器変更の要望などがでていること、またバージョンアップされるソフトウェアの使用メモリが大きすぎるため、現在の計算機では利用できない等の問題点がでている。次年度には解決できると考えている。


4.課題

 教育・研究情報ネットワークが敷設されて1年半になるが、各学部の情報教育関係のカリキュラムが新しく見直され、整備されて各学部の情報処理教室等でも情報教育が実施されているが、教育効果についてはまだ確認していない。今後の情報教育の課題でもある。また、学生数に対する情報処理教室の数が足りないことが言われているが、今後増設する必要があると考えている。


5.おわりに

 本学の教育・研究情報ネットワークシステムの環境とサーバ及び情報センターでの情報教育について述べたが、次年度には、現在敷設されているネットワークとサーバ及び附属情報処理教室の更改があり、現在見直しが進行中である。これからの新しいネットワークの利用技術、運用・管理方法、教育・研究への支援、教育への応用などを検討するとともに、より効果のでる情報教育を進めていきたいと思っている。



文責: 名城大学(前)情報センター長 小山 宏
  農学部教授

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