私情協ニュース

第14回臨時総会開かれる



 第14回総会は、9年3月28日(金)午後1時30分より、東京の私学会館にて開催。当日は、平成9年度事業計画と収支予算の決定を行うとともに、平成9年度情報処理関係設備政府予算案の内容、シラバスデータベースの開発、学内LAN運用関連規程などについて報告・協議した。以下に、主な点について紹介する。


1.平成9年度事業計画

 9年度事業は、前年度の事業を継続することを基本としているが、新規事業としては、第一に、インターネット等を介して、教材及び素材データの共有、共同授業など大学連携による授業の支援環境の試行的な開始。第二に、賛助会員の協力の下で衛星通信による授業の実験、第三は、補助金を活用した授業支援システムモデルの共同開発、第四は、法人・大学事務部門の事務局長、部長、課長を対象に事務部門管理者会議を新規開設し、教育の高度情報化、情報関係の補助金に対する理解を深めることを計画している。


2.大学連携による授業支援環境の研究・構築

 インターネット等を介して、テキスト、教材情報、素材データの共有化、情報技術の習得及び相談・助言、一部交換授業・共同授業の実現を図る。
 連携のための体制は、私情協に情報を集中させるのではなく、インターネットを通じて個々の大学に直接情報を取りに行けるような分散指向の方法を基本としている。なお、大学外の機関から教材の素材データの提供が受けられるよう、企業団体等関係機関に働きかける必要があること。情報技術の相談・助言は、私情協のサーバー上に情報技術のニュースグループ、メーリングリストを構築し、技術分野ごとに拠点大学、賛助会員、関係団体の担当者によりネットワークを介して行う。将来は、情報技術習得のための支援体制を設け、シラバスデータベースのモデル構築、ネットワークやマルチメディアの応用技術、インターネット倫理に関する解説等をデータベース化し、ネットワーク上で学習できるようにする。当面は各大学所有のサーバ上に必要な情報をおき、それを個々の学校から自由にリンクをはって利用できるよう計画している。


3.補助金を活用したシラバスデータベース開発のガイドライン

 シラバスは、教員にとって教授法の研究になること、事前・事後の授業が実現できる点で、また、学生にとって学習方法について適切な指導を得ることが可能になり、教員とのコミュニケーションによる双方向授業や個別学習が可能となる点で、大学になくてはならない基本情報である。
 そこで、シラバスが持つ機能を最大限に活用することが授業改革に大きく寄与するものと判断し、データベースの開発補助を活用して、多くの大学がシラバスデータベースを構築できるよう基本的に留意しなければならない要件をガイドラインとしてとりまとめた。
  1. シラバスデータベースは、単なる印刷物の電子化ではなく、印刷物からは得ることができない授業情報の提供を前提とする。
  2. 画像、音声、文字を組み合わせた機能があり、テキスト・資料等の情報を居ながら収集できるよう関連情報へのリンク機能があること。
  3. 学生と教員とがコミュニケーションできるような双方向機能があり、事前・事後学習に対応した機能があること、を掲げた。
 具体的には、以下の通り、大学としてオーソライズした大学授業情報、教員固有の詳細授業情報、事前・事後学習情報、授業運営情報とした。
  1. 大学の授業情報とは、大学が公に設定する授業情報で、授業科目の一覧、キーワード検索の他に、教員の顔・声、授業風景などをよりリアルに近い状態で学生の目線に合った語りかけができるようなマルチメディア機能があり、その上で、毎週の授業内容が文字で表現されていることを想定。
  2. 教員による詳細授業情報とは、教員が必要度に応じて用意したテキスト、教材等をネットワーク上で利用できるようにするとともに、学内外に所在する関連資料を検索、収集できるような機能をもつことを想定。
  3. 事前・事後学習支援では、メール等による質問機能とレポート提出機能等、履修者への課題提示機能、自己の学力を点検できる機能や学生の進度に応じた個別課題提示機能などの支援機能とグループによる学習支援機能をもつことが望ましいとした。
 なお、本データベースは、シラバス情報を中心としたデータベースとしたが、授業の履修情報の提供についても、情報をリンクすることで多様な発展性が確保できるよう配慮した。当面、賛助会員の協力を得てモデルを試作する予定。




第15回通常総会開かれる



 第15回総会は、9年5月30日(金)午後1時30分より、明治大学100周年記念大学会館にて開催。当日は、理事・監事の改選、平成8年度事業報告及び収支決算の決定を行うとともに、平成10年度情報処理関係設備等予算に対する協会要求方針、基礎的情報教育のモデルシラバス、教育研究の意思決定支援システムなどについて報告・協議した。以下に、主な点について紹介する。


1.理事・監事の改選

 改選は、規程に基づき事前に書面投票を実施し、5月27日に立ち会い人の下で開票し、集計結果の役員候補者を第15回総会に報告し、諮った。その結果、理事20名、監事3名を選出し、第15回総会終結を待って就任した。なお、会長の選出は6月7日の理事会とした。


2.平成10年度情報関係設備等補助に対する当協会としての要求方針

 財政構造改革会議において、平成10年度から12年度までの3年度間を集中改革期間と位置付け、大幅な歳出削減又は抑制が方針として議論されており大変厳しい状況となるが、当協会としては、情報関係設備、LAN、ソフトウエア等の環境は、教育研究の基盤設備の基本であるとの認識に立ち、少しも遅れることなく実現できるよう大学等の計画を尊重しつつ要求していくことにした。
 第一に、経常費補助金特別補助の情報化推進特別経費の「借入補助」は、複数システムの導入、マルチメディア教育設備を配慮する。「教育学術情報ネットワーク補助」は、特に、専用回線の高速化、ネットワーク保守管理委託費、データベースの開発維持費と衛星通信活用プログラムの維持費を要求。「教育研究用ソフトウエア補助」は、補助金を受けた大学及びこれから受けようとする大学を対象に20万円以上500万円未満のソフトウエアの借入、購入に伴う所要経費の2分の1を要求。「教育・学術データベース開発補助」は、特にシラバスデータベースの段階的な整備を政策的に盛り込むとともに、マルチメディア教材の開発についても、政策的に要求する。
 第二に研究設備補助金については、大学、短期大学、高専門学校の全校に適用されることになったことから、小規模なシステムを希望される大学、短期大学を十分考慮して要求する。また、併せて、衛星通信活用プログラムの映像音響設備についても要求することとした。
 第三に私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助金の「学内LAN装置」は、大学で8割、短期大学で4割の整備を目標とし、3分の2補助で要求する。「私立大学ジョイント・サテライト事業」の衛星通信活用プログラムは、メディア教育開発センターを活用した事業を対象に、装置の購入費、装置設置工事費、ケーブル等敷設工事費、映像音響等の設備費等について、教育装置と研究設備の両方の補助金で要求。維持費は教育学術情報ネットワークの補助等で要求する。
 移動体情報通信ネットワーク活用プログラムについては、郵政省と文部省の共同事業であることから、両省の動向を見極めた上で必要に応じて考えることとした。


3.基礎的情報教育のモデルシラバス

 授業の道具として、コンピュータやネットワークを駆使することが避けて通れないような状況を踏まえて、情報技術を主体とした基礎的な教育の在り方をどこまで、どのようにして行えばよいのか、多くの先生方が試行錯誤されている状況を考え、基礎的情報教育の授業の進め方のガイドラインを作成することと、短期大学と大学の2章で構成。
 「短期大学」の基本枠組は、情報機器を使用した情報活用能力を速成的に学べるような授業方法を心がけた。授業の内容は、小・中・高で基礎的な情報教育を進めていることを踏まえながらも、2,000年までの間は情報の操作技術も含め、情報活用能力と情報概論とに分け、情報の表現、加工、交換、情報の社会、情報と倫理の視点でとりまとめた。また、モデル授業科目を情報活用1群、情報活用2群にわけ、種々組み合わせて運営することを提示。特に、基礎的な部分の教育を充実するため情報活用1群に比重をおいているが、将来への発展を考慮して応用的な教育を情報活用2群として設け、共通のモデル授業科目を情報活用ABCDとして、授業運営の目標、時間配分、重要なキーワード、授業内容、実習・演習の進め方、課題提示、教材の項目でシラバスを作成した。また、専門科目の中での基礎教育のモデルとして、食物系の問題を入れながら基礎的な情報技術を修得できるように栄養管理などを折り込みながら実施していく授業も用意した。
 「大学」における授業は、自ら問題発見し、問題解決できるよう情報技術を駆使して主体的に学習できる授業として、知的活動の基盤となるコミュニケーションの能力、知的活動を行うための手段としてのコンピューティング、その成果を表現するためのプレゼンテーション能力の育成を想定して、授業の基本枠組みを考えた。コミュニケーションは、さらにインターネット上のコミュニケーションとマスコミュニケーションを対象とし、その内容をそれぞれシラバスとして展開したが、短期大学とは異なりあえて一つの授業科目として設定しなかった。例えば、インターネットコミュニケーションでは、13週にわたるテーマを設け、そのテーマに対してとりあげるキーワードをモジュールにしてシラバスを構成した。範囲が流動的であることと、多くの関係者の経験の上で授業が運営できるよう、授業を部品化した。例えば、第2週のインターネットの仕組みでは、インターネットの構造と特徴、情報検索(ホームページ)の2つのモジュールを用意して授業を構成することにした。


4.教育・研究の意思決定支援システムについて

 教育研究の充実・向上を図るため、自己点検・評価を通じて適宜改善のための施策を講じることが要請されてきている。教育研究活動に関する実態を常に把握し、改善のための情報を提供できるよう学内の情報システムを体系的に整備しておくことが望ましいが、これまでは担当部署単位で情報が作られ他部門への利用が円滑でないことに鑑み、意思決定のための支援手段として、望ましい情報システムのあり方について一つの成案を得た。
 当初、意思決定支援に有用な情報とはどのような範囲で考えるべきか、自己点検情報から広範囲に検討を進めたが、それでは将来予想される課題に応えられる情報とはなりにくいと判断し、改めて原点に戻り検討し直した。その結果、教育・研究の質的向上に求められる戦略的な支援情報として、本誌P.53に掲げた教育・研究活動の意思決定項目のモデルを設定した。
 自大学での情報と合わせて他大学の情報を入手して比較・分析できるようにすることが重要と考え、大学間で情報の相互利用が可能となる情報システムとした。具体的には、どこかに情報を集中し、利用するのではなく、インターネットを通じて情報を利用する大学が必要とする大学のサーバーに直接接続し、情報を入手できるような分散管理方式の情報システムを考えた。情報を集めても蓄積するためのサーバーに限界があること、情報は自大学で更新・管理するもので大学の主体性が尊重されるものであることから、それぞれの大学のサーバーに掲載することが適切と判断。特に、情報の一極集中化は権力の肥大化を招くことになることと、漏洩の危険、それにかかわる人、物、金の負担の増大化を招くことになることから適切でないと判断し、分散管理型の情報システムを大学間に構築して行くことが望ましいとした。
 具体的には、私情協ホームページに情報の所在リストを掲載し、大学はそこで接続先を選定して、私情協のホームページから自動的に大学に接続できるようにする。そのためには、相互に情報を利用するための大学の体制や公開のための手続き・手順の標準化についてルールづくりが必要で、今後理事会で検討していかねばならない課題とした。
 いずれにしても、大学に新たな負担を伴わないよう、既設の情報環境を最大限活用してシステムを構築できるようにしたいと考えている。当面は、本システムをイメージできるようにするため、2校程度のモデル大学の間でパイロットシステムを構築し、システムの有用性を検証し、11年度頃には正会員の多くが参加できるシステムにしたいとしている。


5.学生へのパスワード発行の状況

 情報倫理教育の実施状況を推測する一つの手段として、学生へのパスワード発行に関する教育及びメール文章の取り扱い等の実情について、本年3月に239の加盟大学と164の短期大学に対して問い掛けたところ、実施は大学で55%と半数の大学が何等かの対策を講じており、短期大学では1割に満たない状況となっている。
 パスワードやアカウントネームの取り扱いは、殆どの大学がオリエンテーションを実施したり、注意文書の配布、掲示、さらには、関連授業の中で「パスワードは教えてはいけません」などのような常識的なレベルでの注意が行われている。しかし、メール文書作成に伴う禁止事項や内容に関するガイダンスの実施は6割程度であり、授業中に教員が指導している例が多くあった。
 ホームページ作成のガイダンスについては、さらに1割程度低くなっており、5割程度の実施率であった。その他にアカウントネーム、URLを学外に公開している大学は、さらに低くて2割に満たない状況であった。セキュリティーやプライバシー保護のために非公開としていることが主な理由とのことであった。


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】