巻頭言
久留 都茂子(東京女学館短期大学学長)
社会の高度情報化の進展に伴い、大学・短期大学の情報教育は今や必須の内容となっている。特に、修業年限2年の短大は、4大と専修学校の狭間にあって、いかにしてそのidentityを保つかに苦心してきた。短大における情報教育の目的は、我々の身近なメディアから世界にまたがる広範囲の情報に至るまで、その情報の持つ意味、問題、価値などを的確に把え、有効に活用する能力の育成にある。
そのための教育体系を、本学では、4本の柱によって構築する。第一に、家庭・地域・世界の問題、企業組織・経営に人間の特性への認識を深め様々な場に対応できる理論と応用に関する教育、第二に、具体的な問題把握と解決のための情報の収集・分析・活用・評価を可能にする科学的手法、第三に、これらの情報を効率的に処理できる情報メディアの実践的技術の習得である。この3本の柱により、幅広い知識と適応力・技術力を磨きつつ、第四に、情報の基礎技術を含め、各教員の専門分野のゼミを通じた学習によって、学問をする意義を会得してもらうべく工夫を重ねている。
限られた時間内で、そのすべてをキャリアアップに役立つレベルにまで引き上げることは容易ではない。カリキュラムの作成に当たっては、内容を厳選し、基礎的知識を重視するとともに、学生自ら応用能力を開発し、創造性を発揮できるようにする指導が不可欠と考える。情報化時代への警告として、コンピュータに依存する結果、人間関係が希薄になり、対人的問題の処理に欠ける傾向が懸念される。本学では、情報社会学科の開設に当たり、特にこの点に留意し、技術面のみを偏重せず、倫理観を含め、人生に対しより深い洞察力を持った人材を育てるよう心がけてきた。併設の国際文化学科で開講されている多くの講義科目の選択を認めているのも、このような配慮に基づくものである。
他方、最近の情報機器の発達は、日進月歩の勢いで止まるところを知らない。就職の氷河期とはいえ、高齢化・少子化による労働人口の減少を考えると、情報教育を受けた短大女子卒業生の活躍への期待は、今後、益々高まると言えよう。本学でも、平成10年度以降、一定の科目を履修すれば、全国大学・短期大学実務教育協会を通じて、優れたビジネスセンスと高度の情報処理技術を持つ者として、情報処理士・上級情報処理士の資格を取得できることとなった。この資格を得られる短大は数少なく、学生のニーズにも応え、社会にも貢献できるものと確信している。
私情協発足以来20年を経過し、加盟大学・短期大学の情報環境整備も飛躍的に向上した。21世紀のフロンティアと言われる宇宙への挑戦を目指し、宇宙探査に直接関わる理工系の加盟大学の存在は心強く、私共を奮い立たせてくれる。また、昨夏、ハワイ・コミュニティ・カレッジ・システム、全国公立短期大学協会、日本私立短期大学協会の共催による日米短大国際交流セミナーに参加し、遠隔教育を実地に見学して、離島間の情報教育の必要性を改めて認識させられた。過疎地と都市、地上と宇宙を結んで果てしなく拡がる情報教育の前途には、洋々たるものがある。実利と夢の双方を追い求めつつ、加盟大学間の連携を強め、情報教育のさらなる振興を願ってやまない。