私情協ニュース2
第5回短期大学部門会議開催概要
1.事例紹介
2短期大学から「基礎的情報教育の展開例」の紹介があった。
まず、東京経済大学短期大学部の堀 泰裕氏から「コンピューターリテラシー入門」について次のような紹介がなされた。
大学学部と共同のネットワークTKU-NETがあり、入学時にネットワーク参加の登録が自動的に行われる。情報教育の講義科目として情報処理、経営情報システム論がある。また、実習科目として英文タイピングIとII、ワードプロセッシング、プログラミングIとIIがある。大学学部との共同開講、複数の教員が担当している関係で、教育内容(授業方法や成績評価方法など)の標準化を進めている。
情報処理は通年科目で、第一部で情報リテラシーの意味、ハードウェア、ソフトウェア、情報インフラストラクチャを内容とする。第二部は企業経営や製造、流通、家庭などでの情報化、情報処理技術者など情報に関する応用分野を講義する。プログラミングIは、パソコンの基本的操作方法と日本語ワープロ、表計算ソフトの操作方法の半期授業である。プログラミングIIは通年授業で、インターネットとグループウェアを学ぶ。電子掲示板、電子会議、電子キャビネットを使いながらグループウェア実習を行う。そのほか表計算で条件関数や演算法、データベースなどを体験させる。ワードプロセッシングは一太郎を使ったビジネス文書の作成、文書処理の知識などワープロ検定を目標にしている。また、自宅から大学のネットワークに参加できるようなサービス、マルチメディアとか映像の制作実習専用教室のメディア工房、資格取得を目標とした特修コースがある。
次に愛知大学短期大学部の龍 昌治氏から「情報処理基礎演習」について、次のような紹介がされた。
4年制大学に併設された短期大学部で、文化と生活化の文科系2学科構成である。情報処理2単位半期1コマ、応用情報処理2単位半期1コマを開講。クラス不足でその分は、社会人対象のオープンカレッジを受講して単位を認定。情報処理では、キーボードの扱い、簡単なワープロ、WWWの検索を中心に電子メール、表計算で半期を構成している。WWWはただ見るだけでなく、見た内容を引用、加工して自分のレポートに仕上げる。応用情報処理では、コミュニケーションのための文章として分かりやすい文章をどうやって作るかが主眼となっている。表計算ツール、ソフトを使った統計処理も後半の3分の1ぐらいにある。重点的な項目は電子メールとそれを通してネチケットの意識向上、データファイルの考え方である。この情報教育を受ける形で、専門科目でも、生活科の栄養計算、環境デザインコースのデザイン、卒業研究でのコミュニケーションツールとして電子メールと情報関連を扱っている。また、学部と共同研究で学内にインターネットサーバを置いていてそこに教材を集約し、各教員が自由に利用できる環境作りを進めている。
2.基礎的情報教育のサンプル教材の説明
短期大学会議運営委員会より前回の会議で提示した「短期大学における基礎的情報教育指導マニュアル」を実際に展開するときの参考例として、「基礎的情報教育のサンプル教材」について、次のような説明があった。
サンプル教材は、指導マニュアルを実際に展開するときの一つの参考例として、このような教材、データを用意して進めることが考えられるという方向性を示したものである。今回は、指導マニュアルにある4科目のうち、情報活用A、情報活用B、情報活用Cについての教材を示している。指導マニュアルの週別シラバスに対応させて、各週ごとに説明資料(説明内容、参考図など)、実習(実習の進め方などの内容、実習問題)、演習(演習問題、必要なデータ、演習結果)、課題(問題、進め方など)についてそれぞれの教材例をあげている。
このサンプル教材は、最低限これだけの教材で授業を展開すれば、基礎的情報教育の目的を達成できるという参考例である。これによって、「短期大学における基礎的情報教育指導マニュアル」での授業のイメージがより鮮明になり、これを基により良い教材を作成して授業の成果を高める出発点となることを意図している。
3.全体会議
「基礎的情報教育のサンプル教材」を受けて、以下のような質疑応答、意見交換が行われた。
−文書作成に関して−
- タイピングを教えるとしてもその文章の例として、その情報的な意味合いをどうとらえるか。
- 表計算ソフトでした方がよいような例をワープロで、という取り上げ方は、頭が固くなってしまうので反対である。
- 例としてビジネスフォームを取り上げるとすれば、なぜビジネスフォームなのか、なぜそのような様式になっているかといったことにも触れないといけない。そうしないと、単なるタイプ練習、ワープロ検定用の教材になる。
−電子メールに関して−
- 受け手の環境、送る内容によっては表示できないことがあるといった、アプリケーションの多様性、適正な表現形態についても教える必要がある。
- 文字で表現できるものは文字で、絵でしか表現できないものは絵で出すといった切り分け、共通化するのが難しい。
- 開示できるデータと開示できないデータも難しい問題で、その辺をガイドラインでどこまでやるのか。
−表計算に関して−
- 表計算のサンプル例の形で授業を進めると、データの入力に時間が割かれてしまい、本題から離れて授業が進まない。
→共通のサーバにデータを入れておいて、それを引き出すとかいった仕掛けが考えられる。
- 学生が自分でデータを入れていくという過程が大事で、むしろ教育効果をもつ。
- サーバを使ってデータを入れるなら、サンプル教材程度の例ではなくて、もっと膨大な例で
- 表計算のところでは、どんな表の例がほしい。
- 表計算のところでは、どんな表を作るか考えさせるというのが一つである。
→今回は提示していないが、情報活用Dに表計算のより応用といった展開がある。
−その他−
- ソフトの習熟、表計算をどうするのか、ワープロをどう捉えインターネットをどう活用するのかといった点に終始している気がする。
→まず基礎を理解してもらう。その上で高等教育機関としての本質的な授業を展開しなければならない。
- これを実現するための情報環境、教員など最低限を指示してほしい
→各大学の規模、情報環境が違うし、機種によって操作方法も違うので、短期大学で最低限知っておかないといけないことを目安にしているのでその点は出してない。
4.教材相互利用システムの構想
事務局より教材相互利用システムの構想について次のような説明があった。
教材相互利用システムは、作成した教材または教材データを大学間相互で利用するためのシステムであり、作成した教材を各大学のサーバに蓄積して公開するのが基本である。教材を私情協に登録してもらい、私情協のサーバが教材情報の検索エンジンの役割を果たすというスタイルを考えて、検討中の段階である。
文責: |
短期大学運営委員会委員長 |
|
海大学短期大学部教授 加藤 昭 |
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