機械工学の情報教育
3次元CAD/CAMによる設計演習
土井 雅博(武蔵工業大学工学部機械工学科教授)
1.教育内容
平成11年度から開講予定の「機械設計および演習」では、工業部品の実際の製作を主眼にして、設計の基本方針を講義する。その後に、実際に3次元CADによる立体図形処理および構造設計と機構シミュレーションを導入したCAEの演習を行う。このように設計された製品は3次元プロッターとして、またCAMの体験学習として、近年急速に活用範囲および加工精度の進展の著しい高速造形法(Rapid Proto-typing)の一種である光造形法(Stereo Lithography)によりプロトタイプの実体を造形する。
2.企業現場におけるCAD活用の現状
企業現場においては基本的には従来までの図形情報の伝達手段としての三角法による三面図の利用が採用されている。しかし、製図作業の能率化、過去の情報の再利用、拡大縮小、パラメトリック技法による多品種製品への対応あるいは電算化情報の伝達などの要望からCADはいずれの企業においても必須の強力なツールとして導入されている。さらに立体処理、CG表現による干渉チェック、運動シミュレーションあるいは実体の掌握など2次元のCADにはない優れた機能が評価されて、ほぼ30%の企業で3次元CADへの移行が行われ、この動向にはますます拍車がかかっている。また企業内情報通信網(LAN)あるいは広域情報通信網(WANあるいはVAN)による情報ネットワークからの孤立は命取りにもなりかねない状況にある。そこで本科目での演習は学生にとって貴重な体験学習効果が期待できる。
3.研究室における研究内容との関連
従来より研究課題の一つである「CAD/CAMシステムの統合」において2.5次元CADとマシニングセンタおよびCNC旋盤によるシステムを構築して設計情報のCAMにおける加工情報への変換時に生ずる不整合の統合について下記のような機能を有する新システムの開発を行っている。
- 図形情報の加工情報への変換作業の自動化
- 最適加工条件の自動決定
- 加工時における異常発生時への自律的対応
中心となるコンピュータアルゴリズムとしては、バックプロパゲーションによるニューラルネットワークを用いた自動化生産システムを目指した課題である。
しかし、これを授業に導入することは現行のカリキュラムでは困難であり、3年後期に講義している「CAD/CAM」の最後の時間に見学だけさせていた。現在はこの研究の一手段としても光造形システムを導入している。この造形法では使用工作機械、使用工具、加工順序あるいは加工条件などの入力は不要である。演習では3次元CADソフト、解析ソフトおよび機構シミュレーションを搭載したコンピュータで設計を行い、スライスデータ作成の編集ソフトで各層の断面形状データへの自動変更を行って、レーザー光線で硬化する液状樹脂で3次元立体モデルを造形する。そのために、このシステムによって比較的短時間の演習でCAD/CAMおよびCAEの教育を行うことができる。
4.使用機材
(ソフトウエア)
3次元ソフトウエア
:Mechanical Desk Top Ver.2.0
解析ソフトウエア
:ANSYS/Structural
機構シミュレーションソフトウエア
:Simply Motion
立体断面作成ソフトウエア
:Auto Edit
(ハードウエア)
5.問題点
- 学生数(約70名)に対して3次元CADの機能を持つコンピュータの台数(他科のコンピュータを合わせても7台)が少ない。
- 作品は学生の自由課題としたいが、時間の不足のために当初は基本的な機械要素の製作を予定している。
|
図1 システム構成 |
|
図2 図形データの流れ |
【目次へ戻る】
【バックナンバー 一覧へ戻る】