特集

ネットワークの運用・管理(事例1)


甲南大学



1.ネットワークの概要

 甲南大学は文学部(定員420名)、理学部(400名)、経済学部(400名)、法学部(450名)、経営学部(400名)の5学部と大学院(修士81、博士18)で構成されいる。情報教育の歴史は1959年4月に始まり、翌年には当時としては最新鋭のIBM650型汎用中型電子計算機の導入契約が結ばれ、情報教育に使われたことに始まる長い歴史を持つ。現在、情報教育研究センターには約400台のパソコン(OSはWindowsNT4.0)をギガビットイーサネットで結ぶ富士通のクライアント・サーバシステムが設置されており、各実習室および学内基幹LANには光ファイバーによる高速なLAN環境を実現している。センターの開館時間は9時から20時までであるが、各研究室からのLANによるセンターのサーバ使用は24時間可能である。在籍者10,353名の学部学生と院生全員に対し、入学と同時にアカウントを発行している。また、専任教員、専任職員、情報教育関連の非常勤講師等にもアカウントを随時発行し、総人数約11,000名に達している。
 甲南大学には、キャンパスネットワークと事務用ネットワークがあり、キャンパスネットワークは幹線がFDDI、支線が10Base-Tで構成され、各建屋にルータ、各フロアに10Mのスイッチングハブを設置している。また、研究室・教室・実習室・図書館等ほとんどすべての部屋に総数約650個の情報コンセントが設置され、現在、1,000台を超えるWS・PCが接続されている。
 外部ネットワークへの接続は、ORIONS(大阪地域大学間ネットワーク)とは512Kbpsで、WCN(大阪メディアポート)とは1.5Mpbsで接続しており、ネットワークのトラフィック緩和のため、2台のプロキシサーバを立ち上げ、通信をドメインで切り分けることにより、WWW等の通信速度のアップを計っている。
 また、本学では、昨年度文部省のジョイントサテライト事業に応募し、学内30箇所に無線ブリッジを取り付け、ゼミ単位に120台のノートPCを貸し出し、教育用モバイルコンピューティングの実験を始めている。これにより、学生がラウンジや食堂、校庭等から自由な時間にセンターのシステムを利用することが可能になっている。この事業は年次計画で拡張していく予定である。


2.運営・管理要員の構成と割合

 情報教育研究センターは所長、副所長、専任教員2名、専任職員4名、外部委託SE4名、アルバイト1名で構成されている。また、夜間監視とトラブル対処のためのテクニカル・インストラクタ(月曜日〜金曜日各1名:16時30分〜18時30分)と、情報処理入門のティーチングアシスタント(年間30コマ:1コマにつき2名、のべ29名)などに学生・院生アルバイトを採用している。


3.業務分担と役割内容

 センターは、全学の基礎的な情報教育の実施、情報処理専門教育およびマルチメディア教育と研究の支援を行い、学内ネットワークの運営・管理を担っている。その管理・運営に関する意思決定は、所長、副所長、センター専任教員、各学部及び国際言語文化センター選出の委員、センター事務室課長で構成する運営委員会を設置し、センター規程及び同利用内規にもとづいて行っている。また、新たなネットワークの構築などの必要が生じた場合、運営委員会の下に専門委員会を設け、専門的な事項について同委員会に委嘱できる体制を整えている。
 また、ネットワークの運営を円滑に行うために、各学部・各学科毎にノード管理者(専任教員)1名を設置し、ボランティアベースで各ノードの管理を行っている。
図 KUKINDSネットワーク図


4.システム運用の外部委託について

 システム運用の外部委託については、現在ネットワークの運用・監視要員として2名(内1名は夜間の監視要員)とセンターシステムの運用・管理要員として2名のSEが常駐している。
 業務としては、ネットワークのトラフィック管理、DNS、メール、プロキシ等サーバの運用管理、ユーザー登録・削除、マシンの登録、バックアップ等の学内ネットワークとセンターシステムの運用・管理全般に亘る。また、日常発生するトラブルの対処については専任教員、専任職員とSEとの話し合いの中で行われている。
 最新の技術を持つSEを常駐させるメリットとしては、専任職員の負担を低減し、適切な技術面でのアドバイスが得られることの他に、ネットワーク工事等においても、業者のSEと直接交渉してもらうことにより無駄なコストが抑えられ、対業者との折衝がスムーズに運ぶ点などがあげられる。


5.運営・管理上の問題点・課題

 ネットワークの使用が学内に広がるにつれて、倫理の問題、セキュリティの問題や技術的な問題、経済的な問題等が増えることは他大学と同じである。著しく進歩・発展するネットワーク技術やマルチメディア技術を取り入れ、常に最新の状態を維持することは大規模大学以外の大学では、技術的にも、経済的にも人材的にも大変である。特に現在、甲南大学で進められているモバイルコンピューティングの実験が実用化に入り、さらにマルチメディアを利用した高度な教育が開始されれば、予期しない新たないろいろな問題が発生し、全学的な協力と私情協を核とした他大学との連携による新しい運営・管理体制を確立することが必要になると思われる。



文責:甲南大学理学部教授 辻田 忠弘
    〃 情報教育研究センター課長 佐々木良太郎
    〃 情報教育研究センター課長補佐 谷口 純司

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