特集

ネットワークの運用・管理(事例5)


日本女子大学



1.はじめに

 日本女子大学では平成7年度より全学がネットワークで接続され、ほぼすべての研究室や図書館からインターネットに接続して電子メールなどが使えるようになった。こうした設備の充実は、必然的に学内のネットワークを管理するコンピュータセンター(以下センター)の業務の増大をもたらし、それに対応してセンターの体制も単に端末等の保守だけでなく、安定した運営を前提とした学内ネットワークの保守管理が業務の大きな部分を占めるようになっていったのである。
 授業で使う情報量に加えて、インターネットを通じてさまざまな情報が学内に流れ込み、ネットワークを流れるトラフィックは増加の一途をたどっている。ネットワークは安定しているときは誰もその存在に気がつかないが、障害や保守点検で停止すると学園活動の一部が同時に停止してしまうほどの影響力を持つに至っているといえる。最近では外部からの侵入に対しても監視する必要が出てきた。
 また、電子出版をはじめとして従来テキストだけであった情報の内容がいわゆるマルチメディア化してきており、業務量だけでなくセンターが関係する分野が広がってきていることも事実である。


2.ネットワークの概要

(1)ネットワーク規模
 本学のネットワーク規模は以下のとおりである。

アカウント数3,596(目白キャンパス)
1,299(西生田キャンパス)
演習室端末数137(目白キャンパス)
74(西生田キャンパス)
研究室端末数515(目白キャンパス)
110(西生田キャンパス)
インターネットサーバ機9(目白キャンパス)
7(西生田キャンパス)

(2)ネットワーク構成
 ネットワークはキャンパスごとに敷設され、主にイーサネットにより構築されている。目白キャンパスの演習室では一部FDDIが敷設されている。
 インターネット接続については、目白キャンパスにおいてJOIN経由で東京理科大学と接続しており、ファイアウォールを経て学内LANへ到達する。
 キャンパス間は専用線で接続され、西生田キャンパスおよび図書館はサブドメインとして設定してある。


3.運営・管理要員の構成と割合

専任研究員(教員)3名(目白キャンパス)
2名(西生田キャンパス)
非常勤研究員12人日/週(目白キャンパス)
11人日/週(西生田キャンパス)
 学生アルバイト、ボランティアは採用していない。
 ネットワーク管理の業者への外部委託については以前より議論されているところであるが、現在は障害時にスポットで対応を求めている状況である。


4.業務内容と役割分担

 コンピュータセンターの前身は計算研究所と呼ばれていたもので、教育用ホストコンピュータの利用に関する業務が主たるものであった。運営も学内役職者によるコンピュータセンター運営委員会と、各学科からの代表で構成されるコンピュータ運用委員会がセンターに関与している。センター構成員を見ても分かるとおり、センター長以下、研究員(教員)がそのメンバーであり、研究・教育におけるコンピュータ利用についてのサポートがその範囲となっている。そのためネットワークの保守管理といった業務は当初予定されなかったものであるが、現在は多くの時間をそこに費やしているのが現状である。


5.外部委託について

 本学では電算演習室のシステムについて、保守契約を締結し、維持管理にあたっている。保守形態はリモート接続および電話によるもので、障害発生時にリアルタイムに復旧作業が進められるようにはなっていない。
図 日本大学JWUネットワーク構成図


6.運用・管理上の問題点や課題

 本学のネットワーク構成はいわゆるマルチベンダーであるため、一社がすべてをカバーするのは難しいと考えている。特に教室系のネットワークについてと、基幹の配線部分、ファイアウォールそれぞれが別個の業者による施工のため、障害時の問題点の切り出しには時間がかからざるを得ない。また、OSについても従来からサーバ群を構成していたUNIXと、現在導入が進んでいるWindows NTが混在しており、マルチメディア通信の普及と相まって問題発生の可能性は日々増大していると言えるだろう。
 インターネットに関してはセキュリティの確保が大きな課題である。インタラクティブなWebの活用が進むにつれ、ファイアウォールだけでは十分とは言えない。またインターネット利用の面では最近、就職や入試をはじめとする事務の利用が加速度的に増大している。学生も就職については最新の情報を手に入れるために、終日パソコンに向かっている姿も見受けられる。このことはトラフィックの増大だけでなく、学内に設置するクライアントマシンの数も拡大していかなければならないことを意味する。いくつかの大学で学生へのパソコンの貸与システムが開始されているが、本学ではキャンパス内にモバイルコンピューティングの環境を準備し、学生が携帯(無線)端末を使ってLANへ接続できることも計画している。これにより端末数の不足が即時に解消されるとは思えないが、学生サービスの一環にはなるであろう。
 また日本女子大学は附属校園を設置しており、各附属校からのインターネット接続も始まっている。学園規模のネットワーク管理=情報管理がこれからのセンター業務の中に占める割合を増大させることは確実である。
 こうしたことを改善するためには、学内のネットワークを根本から見直さなければならない訳だが、折良く3年後に創立百周年を迎える中で、「学園全体のネットワークの充実」を一つの柱として取り組みを始めている。ギガビットイーサネットによる学内バックボーン構築、キャンパス間のネットワークの高速化、前述のキャンパス内モバイルコンピューティングといったインフラの構築が中心である。こうした大規模なネットワーク整備にあたってはセンターだけでなく、学内の力を結集しておかなければインフラ整備後の運用が円滑には行えないであろう。センターでは今後もさらに学内外の情報の発信・受信・中継の役割を果たしていきたいと考える。



文責:日本女子大学
 コンピュータセンター長 上川井 良太郎

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