私情協ニュース4

平成10年度事務システム基礎講習会報告



 事務システム基礎講習会は、大学の事務情報システムの目標・特徴・手法ならびに情報技術の基礎を習得し、私立大学職員の資質向上に寄与することを目的として企画・実施されており、今年度は、平成10年7月14日(火)から16日(木)までの2泊3日の日程で、118大学18短期大学合わせて339名の参加を得て、静岡県浜松市のグランドホテル浜松を会場として開催された。
 近年、各大学における事務情報化は様々な環境の変化を反映する形で転機にさしかかっており、新たな取り組みが必要となっている。このような状況のなかで、事務情報化を一層推進するため、事務情報システムに関わる講習会の必要性が認識されているためか、本講習会の開催意義も認められ、過去最高の参加者となった。
 この講習会は、担当運営委員がそれぞれのテーマを分担して講師となり、資料や事例を紹介しながらレジュメにしたがって講義を行う形式で進められる。各講師は、それぞれの所属する大学で事務情報システム構築の経験を有し、推進役を務めており、その豊富な経験を活かした熱心な講義が特徴である。また、本年度は、質疑応答の時間を設け、参加者の理解を深める工夫をした。
 それぞれの講義の内容は、一般的な内容に加え、大学における考え方、位置づけも明確にしながら、大学職員としての取り組みの意識を喚起するよう努めている。
 また、講義以外には、3日間のプログラムの冒頭に研修運営委員会委員長の小島孝治氏(工学院大学)より「これからの大学職員の役割と情報システムの活用」と題した全体講演を行い、今後の事務職員の役割と目指すべき方向性について、参加者への提起を行う形で意識を高めた。
 他方、青山学院大学、東海大学、山梨学院大学、立命館大学の4大学の事例紹介とデモンストレーションが行われ、昨年との変更点として全ての事例を聞けるよう配慮した。
 さらに、合宿方式の特徴を活かして、夕食後にフリーディスカッションの場を設定したが、例年にも増して多くの参加者があり、大学相互の情報交換や、講師を交えての講義のフォローアップなどヒューマンネットワーク形成の有効な場であると好評であった。
 この講習会は、継続実施される予定であるため、今後とも関係各位の積極的な参加とさらに講習会の成果を高めるための提言を期待したい。
 なお、今年度の講習会の内容は次のとおり。



講義内容


(1)大学の業務プロセスとデータベース

担当:金子 勝信氏(大東文化大学)

 大学が保有するデータを業務に有効活用するため、大学の共有情報として統合的に蓄積・管理された「統合データベース」の考え方、利活用の方法について、大学事務の「業務プロセス」をもとに講義を行った。
 まず、業務プロセスの仕組み、業務を図式化した「データフロー図」について説明した上で、データベースの考え方や作り方について、また、エンドユーザーコンピューティングやデータウェアハウスなどの情報の利活用についても解説した。


(2)業務システムの構築と運用

担当:千葉 幸喜氏(東北福祉大学)

 多様化したニーズに対応できる、品質の高い良いシステムを構築・運用するためにはどのようにすればよいかについて、システム計画から設計、プログラム開発、運用、ドキュメンテーション化までの基本的なポイントを解説した。


(3)事務システム構築のためのハードソフト

担当:山田 憲男氏(日本女子大学)

 大学の事務情報システムがここ数年、ホストコンピュータ至上型のシステムから、パソコン利用の分散システムに変化してきている中で、業務に合ったシステムを構築し、これを支えるためにハードウェア、ソフトウェアの選定は重要である。そこで本講義では、今後のコンピュータ業界の動向にも触れながら、事務システムにおけるハードウェア・ソフトウェアについて解説した。


(4)ネットワークの仕組みとその活用

担当:杉町 宏氏(立命館大学)

 各大学で整備が進んだ学内LANとインターネットを中心に、その概念と大学における活用の意義と有り様を理解していただけることを主眼に講義を行った。
 今回の講義では、ネットワークの基本的な仕組みを理解していただけるよう、ネットワークの発展過程、ネットワークの種類、通信のしくみ、インターネットにおけるサービスの概要などについて解説し、利便性と裏腹にネットワークに潜む罠としてのセキュリティーの課題について、大学における心構えと対処方法について解説した。また、今後における大学の教育・研究・事務の各分野でネットワークシステムの果たす役割とその意義、将来展望について解説を行った。


(5)情報倫理とプライバシー保護

担当:直村 裕二氏(産能大学)

 今日、学内で流通する情報の大半がコンピュータシステムで管理されているが、情報を管理する明確な基準を持つところは少なく、情報の「漏洩」や「改ざん」、「破壊」等の危険度が高くなっている。そのため、私情協の情報倫理教育振興研究委員会作成による「ネットワークの運用体制に関するガイドライン」(中間報告)を踏まえて、情報社会の特質に触れながら、学内で取扱われる情報の保護と情報倫理教育に関して基本的な考え方を解説した。



文責: 立命館大学 杉町 宏
  私情協事務局

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