第５分科会 情報活用の重要性と情報システム部門の役割
運営委員 廣野 哲郎（慶應義塾大学）
小野 浩樹（日 本 大 学 ）
青山 敦史（東 洋 大 学 ）
１．分科会のねらい
情報システムの最適な環境なくして、大学の教育・研究・管理運営の活動は機能しない。情報システム部門は、大学の使命・課題、取り巻く環境の変化を的確に把握し、その整備により、大学の使命遂行や課題解決に貢献することが求められている。その課題として、例えば、経済的・人的負担の軽減に効果的と言われるクラウド・コンピューティングの導入問題、災害に備えた情報システムの再構築、情報資産を守るためのセキュリティ対策、高機能携帯端末等の利用に対応した情報システム、情報投資に対する費用対効果の検証、投資効果を踏まえた情報システムの基準作り等があげられる。
本分科会では、以上のような課題を確認する中で情報システム部門としての役割と責任について省察し、真に大学の使命に応えられる情報環境の在り方について人的・物的・財政的な観点から経営戦略について探究する。
２．討議テーマ
グループ編成し、「情報システム部門に今求められること」を想定したテーマを設定し、下記の検討項目から情報戦略の構想・提案をする。
（１）情報システム部門の役割の変化
大学を取り巻く外部環境の変化と学内から情報システム部門に求められる内容について分析を行い、役割の変化を認識する。
（２）新しい情報技術の導入による効果とリスクの評価
クラウド・コンピューティングや仮想サーバの利用、外部データセンターの活用、ソーシャルメディアツール等についての評価を行う。
（３）情報資産管理運用のあり方
大学における情報資産の認識および洗い出し及び守るべき情報と活用すべき情報について点検評価を行う。
（４）非常時における情報システム部門の心がけやその対応
ICTの特性を活かした平常時・非常時の心がけと対応策を検討する。
３．獲得目標
（１）大学の使命、大学を取り巻く環境変化を踏まえて、自大学の情報システム部門の役割の変化を認識する。
（２）新しい情報技術の導入による効果とリスクを認識する。
（３）マネジメントの視点から、情報システムやその投資について構想をまとめ、説明責任を果たせるようにする。
４．概要
（１）全体的な流れ
本分科会は、１７名の参加者を得て、事前研修、集合研修、事後研修の構成で行った。
�〇�前研修
事前に自己紹介を兼ねて、主たる業務、業務上抱えているICT的課題等をレポートにまとめメーリングリスト上に提出した。互いにレポートを閲覧し、課題共有を行った。
�⊇弦膰�修
初日は分科会の趣旨説明及び自己紹介を行い、事前レポートから共通的課題であった「システム的な要因による課題」と「情報セキュリティ的な要因による課題」に分類し、グループ分けを行い、グループ討議を行った。創造技法の一部を取り入れながらグループテーマの掘り下げ・課題の洗い出し・成果発表を行なった。成果発表では１グループ20分程度行い、相互に評価を行なった。
��事後研修
メーリングリスト及びグループウェアを利用しディスカッションを重ね、各グループの最終結論とした報告書と各自から業務に活かす考え方をレポートした「アクションプラン」を提出した。
（２）ミニ事例紹介
�‥賤梁膤悄＼鳥外儖�より
・「東日本大震災の教訓」
震災直後からの情報収集と提供、事業継続に向けた情報環境整備と課題について発表された。
��日本大学 小野委員より
・情報セキュリティDVD教材「あなたのパソコン大丈夫？PART２〜残存リスクの落とし穴〜」（制作：NECネッツエスアイ（株））の上映
上映内容は私有パソコンの業務利用の危険性、P2Pソフトによる業務データ流出の危険性を提示し、組織としての対応等を含めたドラマ仕立ての内容。
（３）討議内容
各グループの討議内容は下記のとおりである。
Aグループテーマ「情報システム部門の存在意義の考察 ・・・９名
本グループでは、自学の情報部門における課題等を紹介し、共通項目を洗い出した。大学の取り巻く環境、特にICT技術の進化、普及等を踏まえ、従来の情報システム部門から、今後、求められている情報システム部門に変化するために共通認識を持ち、できるだけ多角的な視点からの検討を行った。
Bグループテーマ「安心安全な情報システム環境の提供」 ・・・８名
本グループでは、「情報セキュリティ」をキーワードに据え、学内における事例を紹介しながら、意識合わせを行い、テーマを掘り下げていった。情報セキュリティ対策には個々のリスクに対する意識付けが必要であるが、個々の対応では限界がある。組織として、情報システム部門としてどのように対応するか、検討を重ねた。
５．まとめ
（１）分科会のねらいに対する結論
事後研修における各自のアクションプランから、大学情報システム部門の転換期、役割変化、情報資産の捉え方等、相互に討議を重ねるごとに、互いに“気づき”を感じていただけたと思われる。
（２）討議テーマに対する結論
Aグループテーマ「情報システム部門の存在意義の考察」
従来の情報システム部門としてのシステム運用及び管理では不十分であることは周知の事実である。本グループでは、これからの情報システム部門として、下記の役割が必須であるとした。
�‖膤愾澗里離轡好謄爐離哀薀鵐疋妊競ぅ鵑棒儷謀�に関与していくこと
�⊂霾鵐轡好謄猊�門が情報教育に参画すること
上記の役割を担い、情報システム部門が「情報」を的確に提供可能とし、教職協働の推進を図り、強いては大学運営の核となり得ると結論付けた。
Bグループテーマ「安心安全な情報システム環境の提供」
情報セキュリティ対策の重要性は改めて認識することができた。大学を取り巻く多くの関係者を守るためにも情報システム部門として、下記の対策を掲げ、率先した推進していく必要があると結論付けた。
�．罅璽供爾離札�ュリティ意識向上
�⊂霾鷸饂困稜聴�・整理
��ユーザニーズの把握
�ぅ札�ュリティ対策の確実な実施
以上のとおり、グループ討議においては、職場に戻り、問題解決の牽引役となれるよう、「なぜ」の繰り返しにより問題の本質を追求する姿勢を身につけること、（システム提供者、利用者、経営層の）複眼的視点から問題に取り組むことを心がけた。他のグループの発表に対して、それらを背景にした質問を投げかけることにより、他のグループに“気づき”を与える場面も見られ、この目的も達成できたといえる。
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