社団法人私立大学情報教育協会
第2回文学教育IT活用研究委員会議事概要


I.日時:平成15年9月19日(金)午後5時から午後7時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:竹本、安田、佐伯、西澤、板坂、浜口、金子、原、宇都宮委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1.授業実験実施の可能性について

本委員会として、今後実施すべき共同授業や実験授業の計画について自由討議したとこ ろ、原委員より下記の旨の提案があった。

中京大学では、本年度舞台教室が設立され、それに伴い民俗芸能や狂言の授業を開始し た。しかし、中京大学には演劇を専攻している教員がいないため、必ずしも十分な内容で 授業を行っているとは言えない。そこで、例えば竹本委員長など専門家による遠隔授業な
どにより、自大学にはない授業を実現させたい。しかし、本年度は教室自体の手直しが必要であるため、改めて来年度以降に検討したい。

次に、竹本委員長より下記の旨の提案があった。

国内外の大学では、既に遠隔授業を実施しているため、本委員会として計画実施するには後追いになってしまう感がある。例えば早稲田大学でも、現在時差のあまり無い外国の大学したり、オンデマンド方式による自学自習用コンテンツをインターネット上で配信し たりしている。しかし、これらの授業形式を追求していくと、将来的には人文・社会・自然系統の学部があり、資金的に余裕のある大規模大学しか生き残れない恐れがある。そこで、総合大学の規模を持たない大学が、協定などを結びより魅力のある授業内容を追求できる基盤作りや方法論を提供していくべきではないか。具体的には、大規模大学の持っている技術的ノウハウを提供し、大学問相互で授業を交換していくことが可能ではないか。例えば、文学史や作文指導などは、単年で講義内容が変わることはなく、また、教員一人では全てを網羅することは難しいので、大学間が共同してe一ラーニング教材を作成・活用することは非常に効果的と考えられる。

以上の提案に対して、下記のような意見があった。

  • 本委員会の活動内容は、ITを活用した教育方法の研究だけでなく、ITを活用して如句に教育内容を多彩なものにしていくのかということを目的としている。例えば、学生個々の能力に合った教材や、学生の学習意欲を向上させるための教材の在り方などの観点も盛り込んで検討していくべきである。
  • 作文指導は教員にとっては負担となる科目だが、指導の過程を電子化することは不可能であり、また、対面による個人指導が最も効果的ではないか。
  • 文学史の教材をピデオオンデマンド形式で作成する場合には、著作権上利用することのできない素材が多く、使用する場合にも一つ一つ許諾を得なけれぱならないため、その作業労力を如何に軽減していくか検討する余地がある。
  • CCC日本文学グループのミーティングが未だ開催できていない状態である。活動を開始させるためにも、まずは委員会として、日本文学活性化のためのITの活用方法や、大学間連携方法などを提案していくべきではないか。

以上の意見を踏まえ、次回委員会では、CCC日本文学グループの活動を開始させるために、活動指針や今後日本文学で望まれるIT活用方法などの提案事項を検討することとした。なお、竹本委員長には、提案事項を起草いただき、それをもとに意見交換することとした。

その他に、宇都宮委員より、聴覚障害者のためのノートテーカーシステムを用いた授業に関して報告いただいた。大谷女子大学では、民間財団の補助を得て、聴覚障害を持つ学生や海外留学生のために、PowerPointに、教員の発言や授業のポイントをテキスト化して即時に入力できるシステムを開発した。入力作業は、授業内容を十分に把握している大学院生の協力を仰ぎ実施している。

2.日本文学原本画像データベースについて

事務局より、私情協のサーバー内に仮構築したデータベースについて説明があった。このデータベースは、フリーのCgiスクリプトを用いて構築されたものであり、検索機能やブラウザ上での情報登録など・最低限必要とされる機熊は有してい乱しかし・データの一括登録が不可能であり、また細かい機能的なカスタマイズもできないため、今後は賛助会員の協力を得て、新しいプログラムにより、再構築することが承認された。なお、旧字体でデータを登録すると、サーバーに支障を来す可能性があるため、旧字体は新字体に変換し、データを登録することとした。

次に佐伯委員より、データ収集について報告があった。現時点では九百七十数点のデータを収集しており、前回と比較すると三百点以上データ数が増加したが、京都大学の所蔵画像数が作業中に大幅に増加したため、その分のデータを反映させたためである。なお、東京大学電子図書館にも大量の画像データが所蔵されており、それらはまだ収集していないが、これ以上手作業でデータを入力するには、時間と労力が掛かりすぎることが予想されるとのことである。

そこで、まずは現時点で収集された九百七十数点のデータのみを登録対象として、データベースを構築していくことが確認された。東京大学等その他の画像データについては、データベース構築以後、改めてデータの収集方法について検討することとした。また、デ一タベースの名称について、これまで「日本文学原本画像データベース」としていたが、私情協が画像を所蔵していると誤解される恐れがあるため、「日本文学原本画像情報データベース」に変更することとした。

3.その他

事務局より、特色ある大学教育支援プログラム採択結果について説明があった。申請数は国公私立大学含めて628件うち、237件が採択された。私立大学は474件中56件が採択された。本プログラムは複数大学共同による申請も可能であり、今回は、3件の共同申請が採択された、なお、本プログラムの採択結果は、医学系や理工系のような、到達目標の明確な学部の採択率が高く、実施委員会からも、理工医学系、人文社会学系、芸術学系を同一の土俵で評価することの難しさを改良すべきであるとの提言があった。その他に、板坂委員より、専修大学一檀国大学間のコラボレーション実験授業について報告があった。授業形式としては、テレビ会議システムを用いて、相互の教室に発表者や教室の映像を配信するとともに、PCのモニター画面も配信する。なお、専修大学では、本年度サイバー・キャンパス整備事業費が採択されたため、本実験授業においても補助金を活用することにしている。