社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第1回文学教育IT活用研究委員会議事概要
Ⅰ.日時:平成16年6月18日(金)午後5時より7時まで
Ⅱ.場所:私情協事務局会議室
Ⅲ.出席者:竹本委員長、佐伯、横井、浜口、原、宇都宮委員、井端事務局長、木田
Ⅳ.検討事項
1.
今後の活動について
議事に先立ち、事務局より本年度私情協の事業概要について説明があった。本委員会に関連した内容は下記の通りである。
学系別教育IT活用研究委員会では、平成18年度に報告書の刊行を予定している。具体的な日程としては、平成18年11月の総会での上梓を予定しており、そのために17年度の夏以降執筆活動を行う。報告書では、単に授業でのIT活用モデルを報告するに留まらず、具体的な教育効果を交えながら、授業内容の質を向上させるためのIT活用事例を紹介いただくことにしている。
一方で教育の質保証が大学に対して求められており、大学では第三者機関による評価を受けることが義務付けられている。しかしながら、第三者機関による評価を受ける以前に、学内での自己点検自己評価を徹底しなければならず、そのためには教員自身が率先して自己の授業内容に対する点検評価を実施する必要がある。
教員自身が自らの授業内容を客観的に評価することは難しいので、例えば教員間で有志を募り、授業改善のプロジェクトを発足させ相互に授業内容の点検したり、外部機関や外部の専門家にも授業へ参画いただいたり、授業内容の一部をWebで公開して社会から広く意見を求めたりするなどの、社会的通用性を高める工夫が求められる。
以上のようなことを踏まえ、本年度は報告書の執筆活動に備え、授業実験や調査活動、授業内容の基盤情報整備等を実施いただきたい。
以上の説明を踏まえ、今後の活動内容について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。
- 教育内容をweb上で保証する場合には、そのコンテンツに対して不特定多数がアクセス可能である必要があるが、実際には学内限定で閲覧可能なものが多い。そのような現状に鑑みると、即時的に質保証を実施することは難しいのではないか。
- 教育内容全般の質保証よりも、まずはインターネットを活用した授業が効果的であることを保証することが必要である。そのためには、実現のためのノウハウを検討しなければならない。
- 大学によっては、e-Learningシステムを導入し画期的な取組を実施しているという話も耳に挟むが、成果は全てペーパーで報告されるだけであり、実際に使用して評価を行うことができない。自大学でそのようなシステムを導入しようとすると膨大な費用が掛かり、教員個人レベルでは不可能である。例えば大学教員が共通で使用することの可能な安価あるいは無料なシステムが流通しない限り、外部評価や質保証は実現されないのではないか。
- 例えばオンデマンド授業で必要なものとしは、コンテンツにアクセスするためのID・パスワードシステム、出席管理システム、成績評価システム、レポート提出システムなどがあり、各大学がそれらを導入するよりも、パッケージ化した共通システムをWeb上で使用可能であれば効率的であるし、また授業内容の質の保証に繋がる可能性もある。勿論コンテンツそのものを製作するためにも費用は掛かるから、費用負担の必要な部分と共通化可能な部分があると思われる。一大学で全てを費用負担することは困難であり、全ての私大が補助金申請しても必ず受託される訳ではないから、何らかの形で公的扶助の下に授業改善が行えるよう提案した方がいいのではないか。
- コンテンツ系の補助金は余っているのが現状である。学内において、事務方が補助金関連の情報の周知徹底と教員の要望を調査し、学内で補助金申請の戦略会議を実施すべきである。私情協の職員研修会も、教育支援をメインテーマに実施しており、またWebサイトに補助金関連情報(http://www.juce.jp/hojokin/)を公開して、啓発に努めている。
- デジタルコンテンツの質の保証を考えると、例えば学生の提出レポートの典拠を見るとWebサイトから引用したものが多い。このことに鑑みると、例えばどのWebサイトの文献が信用できるかという指標を示すことが求められる。授業そのものの品質を評価することは難しいが、授業で使用する基礎資料に対する評価や質保証は可能である。
- 外部機関との連携ということでは、外部機関の所有するビデオやデータを授業中に自由に使用できれば有効的と思われるが、このような要望は補助金申請とは結び難い。
- 国文学研究資料館は独立行政法人化したことに伴い、5年以内に成果を報告しなければならないので、大学教育の支援ということであれば協力を求められるのではないか。
- これまでの議論を踏まえると、一つは授業スキルの問題としていかに授業を良くして行くかという方向性と、もう一つは我々が授業を進めていく際の基礎資料を充実するという方向性がある。その両面を踏まえない限り、授業内容の向上は望めないというが、授業スキルそのものを上げるためには非常に問題があり、検討を重ねる余地がある。一方で、基礎資料データの充実ということについては、外部機関に対して、データの充実や整備を提言することは可能である。あるいは、教員個人で解決できない問題、例えば著作権処理の問題を解決するために本委員会で検討するということも考えられるが、この問題についても早晩に解決できる性質のものではない。
以上を踏まえ、今後の委員会活動としては、授業で用いる基礎資料充実を図るために外部機関との連携を強化することを目的とすることした。当面は、外部機関との連携を促進するために、本年度中に日本文学関係機関より関係者を招聘し、委員会として連携可能性についてヒアリングを実施することとした。次回委員会では、関係機関に対する要望を取りまとめることとし、事前に委員各位より要望事項を提出いただくこととした。 |