社団法人私立大学情報教育協会 第2回物理学教育IT活用研究委員会議事概要 T.日時:平成15年8月22日(金)午後2時から4時まで U.場所:私情協事務局会議室 V.出席者:鈴木委員長、川畑副委員長、志田、松浦、満田、徐委員、田實 田實 佳郎 氏、高和 宏行 氏、井端事務局長、木田 W.検討事項 山形大学工学部助教授田實佳郎氏、(有)ユニオプト高和 宏行氏より、「小学生に興味を抱かせる教育支援システムの構築を目指して」と題して、バーチャルラボ、物づくりを体験するロールプレイング型理数科教育支援システムについて事例紹介いただいた。 まず、システム概要について説明があった。上記システムを構築するに至った経緯としては、初等中等教育における理数系科目の学力低下であったこと、また、理工系の学部に進学してくる大学生には、ものづくりの経験がなかったり、理工系の科目そのものに興味がなかったりする者が多くなってきていることが挙げられる。そのことから、本システムは、演習者の年齢や基礎知識に依存せずに、バーチャルでものづくりを経験させ、学生のモチベーションを向上させるために作成された。このシステムの主な特徴として、学習者に勉強しているという意識をなるべく与えないために、RPG的な物語の要素を導入し、また学習者の興味に合わせて違う題材を提供し、飽きさせないような仕組みを取り入れたことにある。 次に、各コンテンツについて説明があった。バーチャルラボは、html上で携帯電話の分解を疑似体験させるものである。ドライバーや虫眼鏡などのアイコンで携帯電話のイラストを分解するが、誤った操作をすると、先に進めない。正しい操作を、@液晶画面に何故絵が出るのか,A液晶画面に何故色がつくのか,B液晶画面につながっている電線は何かという疑問が生じると、最終的には物づくりラボに辿り着くことができる。 次に、物づくりラボについて説明があった。物づくりラボは、上記3点の疑問に対応したhtmlによる教材(@偏光・複屈折教材、A三原色カラー教材、B光ファイバ通信教材)が用意されている。各実験とも、大掛かりな装置を使わず、題材「液晶ディスプレイ」に含まれている部品を実験教材にし、先端製品とのつながりを大切にしている。なお、物づくりラボでは、実際の実験教材(ここでは携帯電話)に触れさせながら、講義を進めて行く。今回は、偏光フィルムを用いた事例を紹介いただいた。 以上、このシステムは基本的には小中学校生向けのコンテンツで構成されているが、ゲーム的要素を除けば詳しい理論的説明がなされているため、大学生が使用することも可能である。また、現在は、田實氏の専門分野である光学分野の教材しか用意されていないため、他の分野の教材を共同で作成してくれる先生を募集している。 以上の報告を踏まえて下記のような質疑応答があった。 Q1. このシステムに対する小学生の反応はどのようなものか。また、小学校では通常授業の枠内でこのシステムを使用しているのか。 A1. 携帯電話という身近な機器と偏光フィルムによる偏光の様子を実演するだけで食い付きは良い。また、通常授業ではなく特別授業という形で行っている。 Q2. 液晶興味を持たない学習者へのフォローアップは考えているのか。 A2.幸いこのシステムを活用した聖徳学園の生徒は、比較的優秀なので興味を持たない学生が少ない。取り敢えずは題材云々よりも、如何にしてRPG的物語の中に生徒を取り込んでいくのかが重要であると考えている。 Q3. RPG的要素を取り入れたのであれば、ゲームオーバー(到達点)がないと、生徒たちは飽きてしまうのではないか。 A3. 実際のRPGでも達成するにつれて新しいアイテムが提供されていくので、今後はこのようなご褒美的なものを提供していくことを検討したい。 Q4. 小学生を対象とするのであれば、偏光よりももっと基本的なことの方がふさわしいのではないか。 A4. モチベーションの向上を第一の目的としているので、子供たちが一番身近で興味を持っているものを科学現象につなげたかった。どちらかといえば課外授業や小学校で教えないことの方が子供たちの興味関心を促すので、ここでは偏光を取り上げた。 Q5.小学校の教育は先生のパーソナリティに拠ってしまうので、先生が面白く説明するための教え方など工夫する必要があるのではないか。 A5. 小学校の教員は一人で全科目を受け持っているので、中には理科に関心を持たない教員もいる。まずは、そのような先生に教材への興味を持ってもらえないと使い物にならない場合が多々あるので、その点について注意を払う必要がある。 事務局より、インターネット物理学のリンク集の追加リンク候補として、6件のURLが報告されたが、本件については、委員会終了後委員各位が実際のページを見た上で、登録の可否について検討することとした。 続けて事務局長より、来年度補助金に関する下記の旨の説明があった。 文部科学省は、来年度、優れた教育改革に取り組む大学を支援する補助金を創設する方針である。今年度から特色ある大学プログラムを設け、国公私立大学の従来の予算や補助金の枠内で資金を傾斜配分したが、来年度からは、国公私立の枠を超え、包括した補助金制度を設ける予定である。総額は200億円規模となる見込みで、大学間の競争意識を高め教育の資質向上につなげることを目的としている。募集テーマは大きく三つとなり、その中の一つに「ITを活用した教育研究支援事業」が設けられる。 以上の説明を踏まえ、次回委員会では、上記補助金への申請可能性も考慮に入れ、委員会活動の今後の方針や内容について自由討議することとした。 |