社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第1回化学教育IT活用研究委員会議事概要
T.日時:平成17年8月22日(月)午後3時から午後5時まで
U.場所:私情協事務局会議室
V.出席者:小中原委員長、高野、及川副委員長、庄野、幅田、武岡、木村各委員、
鈴木氏(ITフロンティア)井端事務局長、木田
W.検討事項
1. 有機化学演習問題データベース、実験動画データベースについて
議事に先立ち、本年度より幅田 揚一 東邦大学理学部教授が委員に就任されたことに伴い、紹介がなされた。
(1)有機化学演習問題データベース
事務局及びITフロンティア鈴木氏より、データベースフォーマットに関する説明がなされた。前回事務局より、オープンソースXOOPSを活用したデータベースフォーマットの紹介がなされたが、@デザイン・機能的なカスタマイズの自由度に制限があること、Aアップロード可能なファイル形式に制限があること、Bファイルのアップロード等の作業を行うために管理者を置く必要があり、その作業負担が大きいこと等の問題点が挙げられ、実質的に運用が困難であることが確認された。そこで、本協会賛助会員であるITフロンティア社にデータベース構築への協力を求め、今回試験的に構築されたデータベース案を紹介いただいた。
@ 問題の登録方法
問題の登録方法は、以下の3種類である。
1)「WordまたはPDFファイルのアップロード」
2)「csvファイルのアップロードによる問題DBへの追加」
3)「フォーム直接入力による問題DBへの追加」
1) については、教員が所有するWordまたはPDFフォーマットの試験問題をそのままアップロードすることが可能となり、ファイル形式の変換など煩雑な作業を回避することができる。しかし、問題を再利用する場合、演習問題全文を目に通すなど煩雑な作業を要することとなる。
2) については、csv上に一定のフォーマット(1行ずつ)に乗っ取り問題を入力することにより、複数問題の一括登録が可能となり、さらにDB側では一問単位で登録されることから簡便に問題の再利用することができる。しかし、問題の登録作業が面倒である。
3) 問題を一問ずつフォームで入力する。HTMLのタグ入力が可能なので、上付き文字、下付き文字、アンダーライン、打ち消し線程度ぐらいまでの表現は可能である。さらに、画像のアップロードや問題形式として、選択問題(ラジオボタン形式、チェックボタン形式)、入力問題、記述問題を選択すること可能が可能である。その他に、下記の機能を有する旨の説明がなされた。
すべての問題をテキスト検索することができる(検索用キーワード含む)
- 問題一つ一つに対してカテゴリー別の分類、キーワードの付与が可能である。
- 頻出のキーワードはあらかじめ画面に表示されていて、選択しやすくする。また、カテゴリーごとにも閲覧することができる
- 改変可の問題は複製/編集できる
- DBに登録された問題を組みあわせて、一つのテストとしてPDFを作成することが可能。(テキストで出力も可能。テストはサーバ側に保存されるのであとでダウンロードもできる)
- 以上の説明について、下記の旨の意見があった。
- 有機化学では、化学構造を多用するため、化学構造の検索機能が不可欠である。例えばCASの検索機能をデータベース内部にインストールすることはできないか。
- CASの検索システムは、ストラクチャー構造をデータベース上に定義しているために検索することが可能である。ここでも化学構造を検索するためには、同様のプログラムを施す必要があるが、莫大な費用を要するのではないか。
- 本データベースのコンセプトは、演習問題をWeb上で閲覧・共有することであり、CAS等の検索システムの移植については、当初の目的と方向性が異なるのではないか。
- 画像化された構造に対してキーワードを付与することは、技術的に困難でもなく、またある程度深く検索することも可能となるのではないか。
- 問題の解答、解説はどのように回収すべきか。また、各問題作成者に対する質問やフィードバックを受け付ける方法も検討した方が良いのではないか。
- カテゴリーについては、以前伊藤委員に作成いただいた有機化学の学習項目一覧を転用すれば良い。
(2)基礎化学実験動画データベース
高野副委員長より、前回の議論を踏まえた今後の方針について説明がなされた。
前回の委員会では、動画ファイルは容量が大きく大学のネットワーク環境によっては閲覧が困難になることに鑑みて、excelベースのデータベースと動画ファイルを収録したDVDにより配布することが確認された。動画ファイルについては、1ファイル2?3分程度とし、PowerPointなどに自由に張り付けることが可能とする。また、BGMや解説のナレーションは、後から利用者が自由に付加できることを考慮して、加えないこととした。動画のファイル形式やオーサリングツールの統一化については、継続して検討することとしたが、及川副委員長より東海大学の事例として、Flash Videoによりファイルサイズの軽量化を図っていることが紹介された。
また、前回本データベースを有料化する旨の意見があったが、事務局より、製作に掛かる経費については私情協で負担するが、事務局だけでは資金を回収することは不可能であることから、極力無料で頒布することを検討されたいとの説明がなされた。
2. 報告書について
事務局より、18年度11月に発刊を予定している学系別教育IT活用研究委員会の報告書について下記の旨の説明がなされた。
学系別教育IT活用研究委員会では、5年に一度研究成果を集約した報告書を上梓しており、次回は18年度11月の発刊を予定している。よって、本年度の委員会活動は、報告書の作成に向けて、内容の検討や題材の収集を行うことにしている。なお、1委員会20?25ページ程度で3?4の授業事例を紹介することにしている。
今回の報告書では、単にITを活用した授業事例の紹介に留まらず、5年先を見据えた内容としたい。具体的には、中教審大学分科会の答申「我が国の高等教育の将来像」において、今後10年?20年のうちに各学問分野別のコア・カリキュラムを作成することが提言されたことを踏まえて、コア・カリキュラムを想定し、具体的な教育目標の達成に向けて有効な教育方法を紹介することにしている。そこで、本委員会でも、化学分野におけるコア・カリキュラムの枠組みを検討いただきたい。
なお、授業モデルについては、極力委員が実践されている事例を紹介する方針だが、場合によっては「私立大学教員による授業改善に関する調査」回答結果より、興味深い授業を実施されている教員からヒアリングを行うことで、情報を収集されたい。
以上の説明に対して、意見交換したところ、
- コア・カリキュラムについて検討するよりも、むしろ社会連携に向けた授業事例を紹介した方が前向きではないか。例えば実験の安全管理に関する授業事例等は実践的である。
- 有機化学演習問題データベース、化学実験動画データベースの事例を紹介して委員会活動を広報することにも意義があるのではないか。
以上、次回委員会では、報告書における授業モデルを検討することとし、委員各位今回配布された調査結果より興味深い授業事例があった場合には、抽出いただくこととした。
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