社団法人私立大学情報教育協会

平成17年度第5回歯学教育IT活用研究委員会議事概要

Ⅰ.日時:平成18年1月13日(金)午後5時から午後7時まで

Ⅱ.場所:私情協事務局会議室

Ⅲ.出席者:神原委員長、松久保、那須、小菅、岡本、上村各委員、荒谷氏、落合氏、榎田氏(松下電器産業株式会社)、松本氏、高井氏(エデン) 、井端事務局長、木田

Ⅳ.検討事項

1. 遠隔授業実験を振り返って

平成17年12月12日(月)に開催された4大学(大阪歯科大学、東京歯科大学、日本大学松戸歯学部、愛知学院大学)間による遠隔授業実験の結果を振り返るとともに、今後の課題について検討した。

はじめに、神原委員長より、本年1月1日付けの日本医学新聞に本実験に関する記事が掲載された旨の報告がなされた。

次に(有)エデンの松本、高井両氏より、大阪歯科大学の授業風景を撮影したビデオの紹介がなされたとともに、実験授業中に実施した小テストシステムの回答結果の説明がなされた。

回答結果は、各大学の問題別回答率がグラフと数値によって表示されるとともに、ユーザー名の一覧も表示されるものである。

次に、担当委員より、下記の旨の意見・感想を述べていただいた。

≪松久保委員≫

  • 学内で回線が混雑していたためか、携帯電話からWeb接続ができないことがあった。
  • 学生に授業のアンケートを独自に採ったところ、教員の授業に対する熱意を感じたと答えた学生は9割を占めた。しかし、授業の進行や教材の適切さについての評価が芳しくなかった。次回実施するのであれば、授業内容の刷り合わせや進行を綿密に打ち合わせする必要があるだろう。
  • この授業を東京歯科大学の事務局長が見学した結果、歯学部と市川総合病院間でカンファレンスを実施するためにテレビ会議システムを導入することが検討されている。システムが導入されればカンファレンスのみならず、教室と臨床現場を結んだ遠隔授業も実現可能であろう。

≪那須委員≫

  • 日本大学ではキャンパス間で衛星を使った遠隔授業を実施しているが、一方通行型の講義を配信することしかできず、本授業を見学した松戸歯学部の執行部にも双方向性の重要性を理解いただけた。また、学生は、他大学の教員の授業を聞けたこともさることながら、他大学の学生とともに授業を受けることに刺激を受けた感がある。

≪神原委員長≫

  • 今回の実験では、機器の事前準備などに若干時間が掛かったようであるが、普及するためには極力事前準備に手間が掛からないよう、システムを標準化することが必要ではないか。
  • 4大学間でも遠隔授業を実現することは確認できたので、次回以降実施する際には教育効果を高めるための授業運営方法を検討する必要がある。また、今年度内にできれば口腔衛生学以外の分野でも遠隔授業実験を実施したい。

2. 東京医科歯科大学における医歯学シミュレーション教育システムの構築について

松下電器産業株式会社の落合氏より、東京医科歯科大学における医歯学シミュレーション教育システムの開発について報告があった。

はじめに本システムの開発経緯について説明がなされた。この取組みは、東京医科歯科大学の木下淳博教授が主体となって実施されており、平成17年度の現代GPにも採択された。開発に到る背景には、臨床教育の充実化を図るためには、従来の教科書・講義主体による授業形式では不十分であり、多様な症例をベースとしたシミュレーション教材が必要であることが挙げられる。

次に、シミュレーション教材の機能について説明がなされた。


≪概要≫

  • このシステムは、問診・検査により的確な診断を行い、治療計画を立案する過程、あるいは手術、処置、準備、補助、検査の手順等を疑似体験できるマルチメディア教材である。教材作成に際しては、パソコンの操作が不慣れな人でも、ワープロ感覚で容易に教材作成することができ、さらに、動画、静止画、アニメーション等を貼り付けることもできる。なお、スタンドアローンで動作する。

≪教材作成≫

  • 画面構成は、上半分が画像表示領域、下半分が設問編集・表示領域である。画像表示領域では最大3ファイル同時に表示することができる。設問編集・表示領域は、ワープロ同様に問題を編集することができる。問題は、単一選択形式、複数選択形式、位置選択形式(画像の任意の場所を選択させる)の3パターン作成可能であり、加点・減点を加味する方法も自由に設定できる。さらに、学生の解答に対してフィードバックするために、選択肢ごとに解説を付与することもできる。また、作成された問題の一覧は画面左側のメニュー一覧から参照できる。なお、問題はGUIにより見掛け上はプレーンテキストで表示されるが、バックエンドではXMLプログラムが組み込まれている。
  • 教材作成に要する時間は、操作に慣れている人であれば、1症例につき1時間程度掛かる。操作に不慣れな人は、1症例につき3時間程度掛かる。

≪CMSとの連携≫

  • シミュレーション教材に対する学生の進捗や学習履歴、さらにレポートやアンケート回収するために、Panasonic製のCampus Stageを採用する予定である。

≪今後の課題≫

  • シミュレーション教材は現在スタンドアローンに動作しているため、Campus Stageとの統合化を図るためにはSCORMに対応する必要があり、かつWeb上でも動作するよう改良する必要がある。
  • 動画像を学内で共用するために、素材管理データベースが必要である。
  • 各教材の語句の統一を図る。

以上の報告について、下記の旨の意見があった。

  • 臨床教育の充実を目的としており、確かに希少な症例を疑似体験させることは意義深いと思うが、具体的に学生のどのような能力を育成したいのかが判然としない。その点を明確化したほうが良いのではないか。
  • 報告を聞いた限りだと、診断する上での注意点を認識させるためには有効であると思われるが、目的に掲げている治療や処置に関して教育するのは難しいのではないか。
  • 善かれ悪しかれ、CBT・OSCEの影響を受けた教材である印象を受けた。