社団法人私立大学情報教育協会
平成１８年度第３回歯学教育IT活用研究委員会議事概要
�機テ�時：平成１８年7月１４日（金）午後４時から午後６時まで
�供ゾ貊蝓Щ箴雍┿�務局会議室
�掘ソ仞兵圈Э生彊儖�長、藤井、小菅、河合、上村各委員、森實アドバイザー、井端事務局長、木田
�検サ鳥�進行
はじめに、小菅委員より「2.教育現場での課題」の草稿について報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、本報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。
「２．教育現場での課題」について
（１）学生に関する問題点
- 教養科目と基礎学力をどのようにリンクさせるのか問題点として挙げられる。本来なら入試でカットすれば事足りていたが、現在は高校教育の多様化により、学力のレベルにばらつきがあるため、大学としても対応せざるを得ない。
- 医の倫理を教える場合、それ以前の一般倫理教育もやるべきという教員もいるが、そこまで大学で教えるべきなのか。これまで一般倫理は、学生が日常生活のなかで自然と身につけてきたものであるが、家族構造の変容に伴い学生が身につけるべき機会を失いつつある。それを大学としてどこまで面倒をみるべきなのか。
- ppt使うと９０分の授業をロスタイムがないように綿密に設計できるが、今度は逆に学生とのコミュニケーションをどうやって取り込むとか、折々に触れて学生の理解度を測る手段を入れていかないと、単にテレビ番組が流れるように学生は受動的に話を聞くだけになってしまう。さらにそれをダウンロードできるようにしたり、ハンドアウトで配布したりすると、学生は後で勉強できるから授業中寝てても構わないと考えてしまう。それは教員のIT活用方法が悪いのか、学生に最初から学習意欲がないのか判然としない。そのような状況かで、学生が自ら進んで勉強したくなるような工夫をどのように考えるべきか。
→ 例えば映画2時間見ると学生は内容もセリフも覚えているが、授業でppt提示してもその内容は覚えていない。昔は黒板で図を手書きしていて、学生もそれをノートに写していたが、それだと時間がかなり掛かる。その後OHP、pptが出てきて時間的に効率化が可能となり、学生にも多くの情報を教えることができるようになった。しかし、却ってそのために学生が付いていけなくなったということも考えられる。なので、板書時代の5割り増し程度の内容でゆっくり教えれば、学生も付いて来るのではないか。
- 高校の時には予習した上で授業に向う習慣を身に付けていた者も多く、その流れを積み重ねて学力を身につけた。それ故次の授業で具体的に何をやるのかあらかじめ分かっていれば学生も付いてくるかもしれない。しかし、カリキュラム上の順序を追って主体的に学習するスタイルに慣れないのか、あるいは基礎知識の欠落しているために、大学に入学した途端に学生は予習をしなくなってしまう。
- シラバスには毎回の授業で学習することが書いてあり、Web上にシラバスと資料をアップロードするなど充実した予習環境を用意しても勉強しない。それはなぜか。
→ いつでも勉強できると言う安心感を与えてしまい、却って勉強しないのではないか。
→ インセンティブをどのように与えるのかと言う点に関わるのではないか（教員・学生双方に）。教育とは学習成果や知識の獲得を的確に評価する方法がないと充実したものとならない。
→ 国家試験合格は確かに最終的な目標かもしれないが、それよりもまずは身近な達成感を与えることが必要なのではないか。
- できる人は、自らの成功体験を積み重ねて目標を高く設定しながら到達するための手段や経路を考えていくが、できない人は失敗経験を積み重ねて途方に暮れてしまう場合が多い。それ故教員もできない学生がどのように考えているのかを理解する必要がある。
→ 私立大学では、できない学生をどのように対処するのかかが大きな問題である。
- 学生のためを思って色々やろうとすると、教員に大きな負担が掛かる。
- 歯学部の学生は実習の方に興味が向いてしまう。技術についてはできてかできないか結果がすぐ目に見えることにも関連する。しかし知識は目に見えず、すぐ何役立つのかもわからないので先送りしてしまう。
- 生物学によると、良く働く働き蜂は3割5分しか働かなくて、他の蜂は遊んでいると言う。さらに良く働く働き蜂を集めてきたところ、やはり３割５分しか働かなくなったと言う。人間社会でも同様なことが言えて、できない学生はどのような環境下でも落ちこぼれてしまうが、それを救済する方法考えないといけない。
- それであれば、学生の能力別にクラス分けする必要がある。学生の能力にバラツキがあると教員もどの水準に合わせて授業すべきか戸惑う。
（２）教員に関する問題
- 教育評価がなされない。
- 教員自身の教育力、教育改善を職務として考えていない。
- 教員と学生の意識にギャップがある。
- 大学の歯科医師よりも開業医の方が腕が良いと昨今言われるが、大学病院は高度医療機関であり開業医にはできない診療をしなくてはならない。ところが今の大学教員は学生に教育することが臨床で、自分のスペシャリティを維持しようとしていない。
- 疾患構造は日々変化しており、例えば今年入学した学生が一人前の歯科医師として活躍できるのに１０年を要し、本来であれば１０年後の社会状況を踏まえた教育を施さなければいけないが、現状では現在の状況に対応する能力を習得するための教育しかしていない。
- 現在の教育は削ることを主眼に置いたものであるが、今後は予防主体の教育にシフトチェンジすべきである。
（３）全体的な書き方について
- 前段なく、最初から学生の問題点、教員の問題点について述べてもらう。
「３．教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性」について
事務局より、「ITにこだわる必要はなく、歯学教育全体を改善するような授業内容を示唆するような、理想論を語っていただきたい」との説明がなされた。
その他意見交換
（１）OSCEの効果について
- 患者さんへの対応方法についてスタンダードな方法を提供するという点では意味がある。しかしシナリオがあらかじめ用意されていて、これとこれを答えれば良い点を得られるというのがわかってしまうと、あまり効果は期待できない。
- OSCEを4年生でやる理由が判然としない。臨床実習が５〜６年生であり、その場で態度を学ぶ機会は沢山あると思うのだが。
→ 共用試験という建前がある。共用試験の目的は、院内実習時に学生が患者さんと接する機会を増やすことにある。患者さんは実習生ではなく医師による診療を期待するのが一般的であるが、実習生が患者さんに接する機会を増やすためにも、患者さんに対して実習生が十分な知識・技能を有しているということを社会的に担保しなければならない。
（２）PBL
- PBLも慣れすぎると、この程度やれば合格できるだろうと学生もタカをくくってしまう。優秀な学生にはPBLは好評だが、モチベーションの低い学生は遊んでしまい、また別の対処する必要がある。
以上を踏まえ、次回委員会までに報告書執筆担当委員は一次原稿を提出いただくことにした。
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