社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第1回英語教育IT活用研究委員会

T.日時:平成16年5月15日(土)午前10時30分から午後12時30分まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:北出委員長、安間副委員長、鈴木、小林、ルースベン=ピーター、山本、淡路、田中、田口各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

 議事に先立ち、事務局より本年度事業概要が下記の旨の説明がなされた。

 前年度より引き続き、情報技術の活用による教育内容の豊富化・高度化のモデルを研究するとともに、本年度からは教育の質保証についても可能性を模索していくこととする。また、これまで他の委員会では、委員会活動に対する意見を広く収集することを目的とした、対面による研究集会を開催してきたことから、本委員会も必要に応じて開催を検討されたい。

1. Learning Management Systemを活用した授業事例の報告

ルースベン=スチュワート委員より、オープンソースのLearning Management System「Moodle」を活用した授業事例を報告いただいた。

(1)Moodleの概要

 Moodleはオープンソースであることから、無償でダウンロードすることが可能であり、ソースコードの改変も可能であり、PHP、MySQLあるいはPostgreSQLがインストールされたWebサーバーにインストール可能である。クライアントは、Webブラウザがインストールされていれば、Windows、Mac、Linux等OSに依存せずに使用することができる。

 公式ホームページ(http://moodle.org)からダウンロード可能であり、上記要件を満たしたサーバーであればインストール可能であるが、有償によるホスティングサービス(http://moodle.com)も運営されており、ルースベン=スチュワート委員はホスティングサービスを利用している。

(2)Moodleを活用している授業

 委員は、一年生を対象とした専門教育科目「英語リスニングI&スピーキングI」、「英語リーディングI」、外国語科目「総合英語1(リスニングとスピーキング)」でMoodleを利用しているが、今回は「英語リスニングI&スピーキングI」を例として紹介いただいた。なお、本授業の学生数は73名であり、5名の教員が受け持っている。

(3)学生へのパソコンに関するアンケート

 学生に対してパソコンに所有率や習熟度、Moodleの評価を確認するためのアンケートを実施したところ、65%の学生はPCを所有しているが、リテラシーは十分であるとは言えない結果であった。また、Moodleについては、本年の4月から使用し始めたばかりであるため、4割近くの学生は「まだわからない」と回答した。

(4)Moodleの特徴

 はじめに、インターフェースに関する説明がなされた。委員が使用している設定では、画面が3列のコラムに分割されているが、管理権限を有しているユーザーであれば、列数を設定することも可能であり、また各コラム内のメニューやブロックも位置、数も編集することができる。今回は、中央のコラムに週ごとのブロックが掲載されており、ブロック内に小テストや課題が掲載されている。

 次に、オンライン小テスト(リスニング)を例とした、演習システムについて説明がなされた。この小テストは、ブラウザから答えを入力して、送信することが可能であり、即時に答案が返される。回答が間違えている場合には、フィードバックを表示することも可能である。また、テストの履歴は、学生、教員ともに把握することができる。学生が一つのテストを何回でも受けられるよう設定することも可能であり、その都度の成績を教員が把握することもできる。その他には、択一式問題、論述式問題を出題することも可能である。なお、学生の学習履歴は一斉、個別表示することが可能であり、Excelファイルでダウンロードできる。学生の滞在時間は計っていないが、それはログインしたまま何もせずに時間を稼ぐことを防止するためである。

 次に、コース作成、クイズ作成について説明がなされた。新しいコースの作成は管理権限を持つユーザーのみが作成可能であるが、管理権限とは別に、作成されたコースの編集ができる権限を持つユーザーを登録することもできる。しかし、登録は手入力で行わなければならない。学生の登録は、Excelファイルからインポートすることも可能である。なお、学生のデータ管理は、データベース(MySQLあるいはPostgreSQL)が一括して管理しているため、登録さえすれば容易に履歴や進捗を管理することが出来る。また、課題やテストの期間限定公開も可能であるが、自動設定は不可能であるため、手入力で期間を設定しなければならない。

 クイズの作成は、問題文をプレーンテキストによる編集が可能であるため、htmlの知識がなくても作成可能である。問題形式は、択一式、記述式、論述式から選択すれば良い。また、音声・動画ファイルも、特定のディレクトリにアップロードすることが可能である。さらに、テキスト問題であれば、外部ファイルからインポートすることも可能だが、特定のフォーマットに従って予め編集しなければならない。

(5)Moodleを活用するにあたって

 Moodleを使用するためには、自らサーバーにインストールする方法とホスティングサービスを用いる方法がある。サーバーにインストールすることは無償であるが、サポートを受けることができない。ホスティングサービスを利用するには年額2000$必要となるが、ホストによるサポートを受けることができる。自サーバーを用いる場合には、システム管理者も必要となるが、いずれにしてもコース管理者、教員をサポートする人員は必要となる。その問題がクリアできれば、英語教員のLMS活用も普及していくのではないか。

 以上の報告に対して、下記の旨の質疑応答や意見があった。

質疑応答

Q1:一年生の授業でLMSを用いることに対して、学生から拒否反応は無いか?

A1:自分のペースで学習できるという意見が多いが、レベルの高い学生にはコンテンツに対する不満はある。後は、PCを持っていない学生から不便であるとの意見もあるので、何らかの対応策を講じなければならない。

Q2:XoopsのようなCMSは、ユーザー自身がユーザーIDとパスワードを登録できるが、Moodleではそのような設定は可能か?

A2:ユーザー自身がID登録できる設定は可能であるが、メールアドレスがなければならない。

意見

  • LMSやCMSは、慣れている人にとっては非常にわかりやすいインターフェースであると言えるが、逆に慣れていない人にとっては非常にわかりづらいと言える。また、高機能であるものの、教員の側のオプションが多すぎるので、初心者用と上級者用のインターフェースや不要なオプションを削除できる設定が求められる。
  • 教員−学生間のコミュニケーションや、学生が主体的に学習できるような仕組みが必要である。
  • 市販のLMSだと、カスタマイズが困難であり、また他大学との連携ができない可能性が高い。そこで、例えば委員会としてサーバーを設置して、教員間で活用できるようなプラットフォームを提供することは可能ではないか。また、シンポジウムを開催して利用者間の交流を促進するということも考えられる。

2.その他

  次回委員会では、小林委員、淡路委員より、授業事例を報告いただくこととした。