社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第1回栄養学教育IT活用研究委員会議事概要

Ⅰ.日時:平成17年10月29日(土)午後4時30分から午後6時30分まで

Ⅱ.場所:私情協事務局会議室

Ⅲ.出席者:武藤委員長、中川、酒井、小野坂、石崎、吉村、室伏、井上各委員、井端事務局長、木田

Ⅳ.検討事項

 議事に先立ち、本年度より石崎由美子氏(武庫川女子大学)が委員に就任されたことに伴い、委員各位より自己紹介がなされた。

1. 本年度の活動について
事務局より、18年度11月に発刊を予定している報告書について下記の旨の説明がなされた。

中教審大学分科会の答申「我が国の高等教育の将来像」において、各学問分野別のコア・カリキュラムの作成及びコア・カリキュラムの実施状況と大学評価の有機的連動が謳われている。コア・カリキュラムの趣旨は、学生の質的保証を担保することにある。実際に医学分野では既に文科省により作成されたモデル・コア・カリキュラムに基づき、各大学ともカリキュラムを再編しているが、そこでは科目毎に一般的な教育目標と個別的な到達目標とその達成に向けての教育法略が明確化されている。
  そこで、18年度の報告書では、単にITを活用した授業モデルを紹介するだけでなく、5年後の大学を取り巻く環境や社会的要請を見据えた内容とするために、栄養学分野においてもコア・カリキュラムを意識して、学習項目ごとに教育目標を明示して、その到達に向けた効果的なIT活用モデルを提言いただきたい。
なお、執筆を開始するのは18年4月を予定しており、原稿の締め切りは8月末~9月上旬を予定している。執筆担当者は本年度内に決定する。

以上の事務局を踏まえ、酒井委員より提出された、日本栄養改善学会の「管理栄養士要請課程におけるモデル・コアカリキュラム検討会」に関して意見交換した。

 このモデル・コアカリキュラム案は、医歯薬学のモデル・コアカリキュラムと同様に、学習項目ごとに一般目標と個別目標、さらに教育方略を示すことが提起されている。教育方略にはITの活用が明示されてはいないが、例えばロールプレイ、録音・録画による復習などにはIT活用が期待される。
  内容の構成は、下記の5つの大項目に分かれている。

  Ⅰ.全学年を通して
   Ⅱ.管理栄養士を目指し気持ちを育む導入教育
   Ⅲ.専門科目を学ぶ前に
   Ⅳ.専門基礎科目
   Ⅴ.実践専門科目

 この資料をもとに自由討議したところ、下記の旨の意見があった。

  • Ⅴの「臨床・隣地における栄養管理・指導を理解する」は、現在各大学が頭を悩ましている項目である。現場に携わる人間でない限り、十分な教育を施すことは難しい。
  • 臨床栄養学の場合、現場実習を行わなければならないが、実際の患者に対して栄養指導を行うことは、病院側から断られるケースが多い。それ故、栄養指導の場面の見学や記録に終始してしまう。
  • モデル・コアカリキュラム案の最後の項目として、「関連専門職種間の連携」が示されているが、現在の大学の状況に鑑みると、個々の教員が専門化しているので難しい。それ故、学生が例えば生化学の授業を受けていても、将来自分の仕事とどのような関連があるのか想像することができずに学習意欲が低下してしまうことが多々ある。そこで、教育の効果を向上するためには、やはり学生に各科目間のつながりを提示する必要がある。
  • 昨年度日清医療食品の方よりヒアリングした内容を、授業中に学生に話したところ、学生もインパクトを受けていた。このように臨床現場の関係者から直接お話いただくことは、動機付けを高めるには効果的である。
  • 保健所実習では、最後の実習で保健所の栄養士の代わりに、学生がPowerPointを用いた栄養指導の説明を行っている。勿論それまで学生は保健所の栄養士から指導を受けるのだが、栄養士の指導が熱心であるため学生も真剣に取り組む。そのように学生の実習や栄養士の指導の様子をビデオで撮影し、提供することは可能ではないか。

 以上の意見を踏まえ、次回委員会では、各科目間の連携について議論するとともに、小野坂委員より紹介いただいた、保健所における公衆栄養の指導方法についての見識を深めるため、神戸市の保健所の栄養士の方よりレクチャーいただくよう、小野坂委員に打診いただくことにした。さらに、自由討議中酒井委員より、名古屋女子大学で学生の復習のために、授業を収録した教材を配信している試みについて紹介があったことから、次回報告いただくことにした。