社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第2回社会福祉学教育IT活用研究委員会議事概要
Ⅰ.日時:平成16年11月1日午後6時から午後8時まで
Ⅱ.場所:私情協事務局会議室
Ⅲ.出席者:安西委員長、安井、武田、錦織各委員、井端事務局長、木田
Ⅳ.検討事項
はじめに、事務局より、7月30日に開催された理事長学長等会議での提案「教育の社会支援についての提案」について下記の旨の説明がなされた。
本提案は、大学教育に対する社会からの評価、とりわけ人材育成面での評価が厳しいことに鑑み、学生の意欲向上、教員の授業支援、及び社会人の授業参画による教育の質的保証に資するために考案されたものである。具体的には、①社会での現場情報・体験情報の紹介・説明、②知的情報の電子化と教育への利用実現、③実務経験者による授業の実現、④学習成果に対する専門家の助言・評価、⑤インターンシップ、ワークショップ、調査実習の受け入れ、⑥e-ラーニング等教育プログラムの共同開発を、主に情報技術を活用して実施・協力いただく。
今後は社会からの支援を得るために、文部科学省に対して政策提言するほか、経済各団体に対しても理解を得るよう努める。合わせて、支援依頼の方法や仲介機関の設置、支援内容・方法を研究する。
機械工学は、特に社会と密接に関係する学問分野であることから、上記提案のなかで、実現可能なものがあれば、是非提案いただきたい。
1. 武田委員による授業事例報告
武田委員より、自身の実践されているITを活用した授業事例(「ソーシャルワーク・リサーチ」)について報告がなされた。
社会福祉学科の学生は調査手法に関する知識が欠落しており、また統計を嫌って入学してきた学生が多い。「ソーシャルワーク・リサーチ」では、そのような学生を対象に、「リサーチとは何か」、「なぜリサーチはソーシャルワーカーにとって必要か」といった基礎的な知識から、ソーシャルワークの効果測定やプログラム評価に必要なリサーチ方法を習得することを習得することを目的としている。実際にデータの収集・分析するには時間が限られているので、最終的にはリサーチの計画書を提出するまでに留まっている。2年前までは「メゾ・マクロメソッドB」という科目名称であり、かつ必修科目であったため履修者は200名以上いたが、現在は60~80人程度である。
授業運営としては、毎回コンピュータルームで授業を行っている。授業内容は、前期にリサーチの基本的知識、後期は統計である。毎回の授業は、45~50分講義を行い、その後は学生に実習を課している。具体的なIT活用方法としては、講義はPowerPointを用いて実施している。PowerPointには、板書時間の節約、見やすい文字表示など利便性がある反面、授業進行が早くなるために学生からノートを取ることができないとの不満もある。そのため、Webページ上に毎回の講義で用いたPowerPointをアップロードし、授業後の閲覧を可能としている。また、教師卓のモニターには、学生のPCログイン状況を把握することが可能であるため、それを用いて出欠管理をしている。後期授業では、SPSSを用いた統計を行うが、統計のためのデータはネットワーク上で共有している。同様にテストにおいても、共通フォルダから学生にデータを取得させているが、カンニング防止のため、10通りの番号を割り振ったデータを用意して、学籍番号の下一桁の番号のデータを使用させている。その他には、Webページ上に質問調査票のフォーマットのアップロードや、学生からの授業評価アンケートの結果を掲載している。
以上の説明に対して下記の旨の意見があった。
Q:単に統計の技術を教えるだけでは学生の身に付かないので、因果関係や相関関係を踏まえた上で教育する必要があるのではないか。
A:前期授業において、相関分析等の基礎的な統計知識は教えている。その上で後期授業では、プログラム間の効果を測定するためにt検定によって学生に分析させている。
Q:統計データは、実在するデータを用いているのか?
A:昨年度までは、実際に学生に対して行ったアンケート調査に基づいたデータを用いていたが、本年度は教科書に合わせた加工データを用いている。
Q:年間授業スケジュールによると、授業中に小テストが課されているが、どの程度の頻度で行っているのか。
A:授業のはじめに10分間程度で行っている。内容は、毎回予習として教科書を読むことを課しているので、その確認程度の内容である。学生からは、授業内容を確認するための小テストも行った方が良いとの意見もある。
Q:学習成果を現場のソーシャルワーカーに評価してもらうことが必要では無いか。そのことによって学生の動機付けとなり、また教員自身も自らの教育内容の通用性を確認することができるのではないか。
A:社会福祉士にとっての調査や統計の必要性は授業でも説明しているが、確かに現場の人からコメントを貰うことが最も効果的であるかもしれない。
2. その他
次回委員会では、平成18年に発刊する報告書の内容・テーマについて検討することとした。大まかな方針としては、社会福祉教育充実に向けてITの活用の可能性と限界を整理し、その授業モデルを提案することとする。
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