社団法人私立大学情報教育協会
平成18年度第2回被服学教育IT活用研究委員会
T.日時:平成18年6月9日(月)午後4時から午後6時まで
U.場所:私情協事務局会議室
V.出席者:高部、小原、鈴木、小倉各委員、井端事務局長、木田
W.検討事項
1. 報告書について
はじめに鈴木委員より、素材設計演習「衣服解体」の概要について報告がなされた。要旨は以下の通り。
- この演習は3年生の後期に実施される。杉野服飾大学では専ら制作を中心とした授業を展開しているが、学生に身近な衣服がどのような材料から構成されているのか身をもって実感してもらうために、敢えて学生に既製服を解体させる。
- 学生を6つのグループに分け、それぞれパンツ、スカート、ジャケット(Gジャン)、シャツ、ワンピース、ブラウスを題材として衣服を解体する。
- はじめに解体前の衣服をデジカメで撮影し、その後にパーツに分解する。
- 分解したパーツには記しを付けてアイロンがけし、デジカメで撮影する。
- パーツから製図を行うためにCADを用いてトレースする。一方でパーツの物性を解析・測定し、さらに組織から糸、糸から繊維へと分解作業するが、その過程で糸の特性、繊維の特性を把握する。測定したデータはexcelを用いて入力解析を行う。
- 入力したデータを用いて、他者にわかり易く説明するためのプレゼンテーション技法をグループごとに検討させる。
- 解体結果を各グループに0分間ずつプレゼンテーションさせる。プレゼンの時間が16分以下の場合には減点対象となる。
- 最終的な学習成果をレポートにまとめ提出させる。
以上の報告について質疑応答ならびに意見交換した。主な意見は以下の通り。
- 担当教員は鈴木委員1人だけか。
→ 教員は1人だけだが、その他にTAが2名いる。実習中は3つの部屋を行き来して学生の様子を確認する。
- プレゼンテーションの評価基準は。
→ 学習した内容をきちんと表現していること、解体の一つ一つのプロセスを理解しているか、この2点が大きなポイントとなる。この実習では、衣服解体した時に衣服がどのようなパーツにより構成されているかを吟味検討する能力と、衣服設計するために必要な素材の条件をデータから認識すること、つまり感性とデータに基づく分析能力を育成することが目的である。特に杉野の学生はアパレルに就職する者が多いので、プレゼン能力とデータに基づく設計条件の分析は不可欠である。
- スカートとジャケットではパーツ数がかなり違い、グループ間で作業工程数に不公平が生じないか。
→ その点について学生から若干の不満が生じているが、パンツやスカートはなるべく複雑なものを与えることで、作業負担を均等にするよう心がけている。
次に、小原委員より、担当される「被服材料学」の授業モデルの概要について報告いただいた。要旨は以下の通り。
- 衣服材料の特性が衣服の快適性にどのような影響を及ぼすか、身近な題材を例として提示しながら説明するために、ITを活用する。
- 具体的には、硬さと柔らかさ、吸湿性、吸水性、保湿性、剛軟性、帯電性、撥水性、透湿性、通気性などをトピックとして取り上げるが、ここでは吸湿性と吸水性にスポットを当てる。
- 吸湿性では親水性繊維と疎水性繊維の違いや吸水性繊維の構造を、アニメーションを用いてわかり易く説明する工夫をする。
- さらに、実際に市場に流通している製品を用いて説明する。例えば繊維会社のWebサイトに掲載されている説明や、提供されているDVDを用いる。理論的な説明に終始してしまうと学生は付いてこないので、現実での応用方法など理論と実践を結びつけることにより理解を深めるとともに興味関心を惹き起こす。
- ここでの授業モデルは、山口委員の授業モデルと統合することにしているが、今後内容を調整していく必要がある。
この報告について質疑応答・意見交換がなされた。主な意見は以下の通り。
- 小原委員が大学で実際に担当されている授業科目名は。
→ 材料学である。鈴木委員の授業モデルも材料をテーマとしているが、鈴木委員の場合は「衣服における素材」をテーマとしているとともに設計中心の内容であるが、こちらの授業モデルでは材料そのものに焦点を当てている。題材は一緒でもアプローチが異なる。
- この授業科目の対象学年は?
→ 2〜3年生である。2年の後期には造形材料学実験と材料実験があり、理論と実験を併行して学習することになる。
次に、小倉委員より、Webを活用した講評会について説明がなされた。要旨は以下の通り。
- 一年生を対象に前期に開講される「デザイン基礎造形T」において学生の制作した作品を、武庫川女子大学、神戸芸術工科大学の学生に講評いただく。
- この授業ではスカートを制作するが、それと同時にスカートの既成概念を打破することを目的としている。学生はまず作品のコンセプトを考案し、その後紙により立体を作り、最終的に布によるスカートを仕上げる。
- 講評会では、各プロセスを撮影した画像を掲載し、それを閲覧いただき評価してもらうことにする。
次に、高部委員長より、被服構成学の授業におけるIT活用の概要について説明がなされた。要旨は以下の通り。
- 30項目に亘る身体のデータベースを活用して、体型の個人差や寸法間の相関関係を把握させるために、学生にexcelで実習させる。
- さらにシルエッターを活用して体型や姿勢を画像化するとともに、3次元立体モデルを提示し、CADを用いて衣服の着用をシミュレーションさせ、人体とパターンの関わりを理解させる。
最後に、授業モデル以外の「1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標」、「2.教育現場での課題」、「3.教育改善のための授業設計・運営・開発の方向性」、「5.IT活用に伴う課題」については、委員各位意見を寄せ合い取りまとめることにした。
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