社団法人私立大学情報教育協会
平成18年度第1回会計学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成18年6月24日(土)午後2時〜4時

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:岸田委員長、椎名副委員長、高松、河崎、黒葛、金川、阿部委員
       井端事務局長、木田

W.議事進行

1.ITを活用した授業モデル
(1)会計学入門

阿部委員より資料説明がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。

【実際の授業運営】
現在「会計学原理」という授業で、これに基づいて授業を実施しているが、90分だと内容が話しきれない。原価計算も計算プロセスを話してしまうと、時間が足りない。管理会計でもCPD分析を話してしまうとそれだけで終わってしまう。また、講義で一方的に話すところは時間通りで終わるが、演習やらせるようなところだと極端に時間が掛かってしまう。なお、毎回宿題を出して、ネットワーク上で回収している。

 阿部委員の報告について意見交換したところ、下記のような意見があった。

  • 財務会計はこの会計学入門のカリキュラムをベースとして考えるのか、あるいは全く別の独立したカリキュラムとして考えるのか。ここでキャッシュフローや連結やるとすると、財務会計でやるキャッシュフローと連結では何をやればよいのか、調整したほうが良い。
    → 会計学入門は、場合によってはこの授業だけで将来会計学を学ばなくなるという学生を想定して作ったカリキュラムである。専門科目入っていった段階と同じものはやらないという認識である。
  • 財務会計ターゲットするときは、一般学生にターゲット置くのか、会計専門職にターゲット置くのか、いま一度整理したほうが良いのではないか。
  • 会計の素人に会計マインド、会計とは何かを知らしめるときに、ここのカリキュラムで欠落しているのは、会計情報利用のところ。素人にとってはむしろ貸借対照表や財務諸表の分析よりも、会計情報をいかに利用するかという点に興味がある。
  • 貸借対照表と損益計算書のところでは、実際の計算書を見るような内容を入れている。前回の案では財務諸表分析という項目もいれていたが、、、項目として1つ独立させずに演習として入れることになった。それ故、演習の書き方をもう少し工夫したほうが良い。
    → 演習の内容についても、コアカリキュラムに項目として加えたほうが良いのではないか。
  • 会計学入門で狙う包括的な教育目標を冒頭に明示したほうが良い(会計マインド育成のためのモデルであることを)。
  • 【1】(2)の会計倫理が他の様々な項目とリンクする必要がある。
  • 会計大学院では、職業倫理が必須となっている。職業倫理とは、公認会計士の職業規範や意識に関するものである。会計倫理やアカウンティング・マインドであると、若干内容が漠然としているのではないか。
  • 特徴出すためには、一般用語を入れた方が良いのかもしれない。
  • 【1会計の意義】に重点を置いて、他の項目はもう少し簡易な表現にした方が良いのではないか。
  • 会計情報のインプット部分でアカウンティング・マインドを育成するという伝統的な教育方法と、会計情報の分析からアカウンティング・マインドを育成するという二つの考え方があるが、ここではインプット部分のところの項目が少ないものの、両方の内容を含めている。そのため欠点として特徴がなくなってしったことは否めない。

 以上の意見を踏まえ、下記のように修正いただくことにした。

  • 演習の内容もコアカリの項目に入れる。→【7】と【8】の間に財務諸表の見方や分析に関する項目、【9】と【10】の間に計算の仕方に関する項目を入れる。
  • 冒頭に包括的な教育目標を明記する。→会計マインド育成のためのカリキュラムであることを強調する。
  • これから大幅に変更を加えることは難しいので、表現上のメリハリをつけるよう調整する。(一般用語を使う?)

(2)会計情報システム

金川委員により、会計情報システムの授業モデル案を報告いただいた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、本報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 授業のねらいは3〜4行でまとめていただきたい。具体的には会計情報システムを自分で構築できる、会計資源として必要なものを取捨選択し、アウトプットすることができるなど、実践的な目標を提示いただきたい。
    → 会計情報システムのねらいは、システムの設計、データ収集、データ検索にある。システムを理解していれば、必要はデータを必要な時に入手することができる。このような視点を中心に取りまとめたい。

2.その他の報告書の内容について

(1)コアカリキュラムを意識した教育の到達目標、(2)教育現場での課題、(3)教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性、(5)IT活用に伴う課題について、岸田委員長、河崎委員、阿部委員よりメモを提出いただき、意見交換した。主な意見は下記の通り。

(1)コアカリキュラムを意識した教育の到達目標

  • 会計学を学ぶ目的は二つある。一つは会計専門職に従事するために必要な能力の習得、もう一つは会計マインド育成である。特に後者においても従来は会計技術的な教育が主体であったが、今後は会計情報の読み方、活用の仕方を導入教育として取り入れる必要がある。
  • 確かに現在は会計技術論に追いまくられている。我々が学生の頃には会計事実の真実性というのを冒頭に習っていた。真実とは経営者の高度な倫理観に拠るものである。欧米ではプロテスタンティズムが資本主義社会における倫理観の醸成に寄与している面もある。FDという側面を考えると、会計倫理についても触れた方が良いかもしれない。
    → 教育の質保証という面では、工学分野ではJABEEが行っている。JABEEではカリキュラムの立て方とか内容に関する水準が規定されているが、そこではどの分野でも職業倫理が含まれている。
  • 会計大学院では、法科大学院のような制度設計にはなっていない。しかし、経営学部の学部教育は、専門職業人育成の大学院の教育内容と異なる必要があるし、なぜ専門職業人を大学院で育成するのかも明確化する必要がある。
  • 会計マインドとは、会計の情報をうまく利用するための能力であるが、会社法はまさにその方向にシフトした。時代の趨勢に鑑みても、会計情報を利用した意思決定を教育しなければならない。会計マインドは不正をやらなければいいというわけではない。
  • 会計大学院では、まさに会計マインドの滋養を目的としているが、学生は資格取得を目的として入ってくるケースが多く、そのギャップに苛まれる。仮に会計倫理を科目として設置しても、資格試験に必要のない科目であるため殆どの学生は履修しないことが予想される。さらに、学生のレベルにもバラツキがあり、どの学生のレベルに照準を当てた授業内容とするのか難儀する。

(2)教育現場での課題

  • 阿部委員の指摘「講義内容については教員の裁量に大きくゆだねられているため、その内容に干渉することは現実的には難しい」は非常にインパクトがある。これを受けた改善方略を3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性で繋げていただきたい。
  • 同様に阿部委員の指摘「会計学に関しては、学生にとって企業取引など現実的なイメージが湧きにくい項目、難解な専門用語がでてきるため、どうしても理解よりも暗記中心になることが多い」についても、3において企業活動を理解するためにインターンシップの導入や(黒葛委員が実践しているような)現場情報の映像化などを提起いただきたい。

(3)教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性

  • 佐賀大学では、会計学の授業をビデオオンデマンドで配信し、学生に事前に視聴することを義務付けて、対面授業では質疑応答のみ受け付ける試みを行っている。出欠はオンデマンドコンテンツのアクセス履歴により判断し、質問が無い場合には学生は対面授業に出席する必要はない。このような授業形態がまさに理想の教育ではないか。(参考URL:http://net.pd.saga-u.ac.jp/gp/houkoku_16.html