社団法人私立大学情報教育協会
平成17年第4回経営学教育IT活用研究委員会議事概要
T.日時:平成18年3月20日(月)午後2時から午後5時まで
U.場所:私情協事務局会議室
V.出席者:松島委員長、岩井副委員長、安田、福原、丹沢、佐藤、竹田各委員、白井宏明教授 、木田
W.検討事項
1.白井宏明教授によるビジネスゲームの紹介
本委員会では、18年度発刊の報告書にて、ビジネスゲームを中心とした経営学教育カリキュラムの再構築を提唱することにしているが、ビジネスゲームに関する知見を深めるため、今回は白井宏明(横浜国立大学経営学部教授)氏をお招きし、実際にビジネスゲームを体験するとともに、授業での活用事例を報告いただいた。
<ビジネスゲームの体験>
今回体験したビジネスゲームは、「ベーカリーゲーム」である。このゲームは、10人程度のプレーヤーがある町のパン屋の売り上げを競うものである。一期目の資本金は50万であるが、パンを焼くためのオーブンの固定資産料として25万円、棚卸資産として初日のために用意したパンが5万円掛かるため、手持ちの現金20万円からスタートする。なお、パン生地は1個400円で購入することができるが、その他に一日につきアルバイトの人件費としてパン1個につき100円、店舗の家賃として2万円支払う必要がある。
なお、この町全体のパンの総需要は初日が1300個程度で徐々に増加していく。さらに、このパンは特別な素材を用いて作られるため、1個当たり700円前後で販売されるが、お客は価格の安い方に魅力を感じるので、価格を下げれば下げるほど売れる傾向にある。
詳細なルールは配布された資料を参照されたい。
<ビジネスゲームの仕組み>
既存のWebベースのビジネスゲームではビジネスモデルが固定されており、カスタマイズするためにはプログラミングの技術が必要であり、経営学を担当する一般の教員にはハードルが高い。それが、Webベースのビジネスゲームが普及しない一因であると思われる。そこで、YBGでは、プログラミング技術がなくても、ビジネスモデルをブラウザ上で容易にカスタマイズできるよう、システムを設計した。具体的には、特定のフォーマットに従い、変数や計算式を入力する。
また、このシステムは従来のBGとは異なり、同じ時間に同じ場所で行う必要はない。つまり、プレーヤーが好きな時間に好きな場所でゲームに参加することが可能である。そのため、学生には自宅でアクセスさせれば、学内のコンピュータ数の制約を受けずに実行できる。
<ビジネスゲームの狙い>
ビジネスゲームを通じて、科目として個々バラバラに教えられている経営の理論や技法を、統合的に体験させることができる。さらに、学生にビジネスモデルを考案させ、その妥当性を検証するためにもビジネスゲームは効果を発揮する。
例えば、学生がある企業を分析する場合、(その企業を)モデル化する必要があるが、モデルを文書化するだけでは検証が難しい。そこで、作り上げたモデルをビジネスゲームで実際に動かせば、ゲームに参加する他のプレーヤーとの議論を通じて、モデルの検証が可能となる。議論が発展することで、モデルに適したオペレーションに関する考察にまで及びことが期待できる。
<今後の展望>
現在、京都大学、京都女子大学、拓殖大学、筑波大学、北海道工業大学などが国公私立問わずモニターとして参画している。もし興味があれば是非委員各位も参画されたい。サーバーは横浜国立大学内にあり、各モニターのデータも一括管理している。当面モニターは無償で利用することが可能であるが、利用者数が大幅に増加した場合には、費用負担いただくことも検討している。
2.18年度発刊予定の報告書について
事務局より、18年度発刊の報告書の執筆方針について説明がなされた。詳細は下記を参照されたい
T.報告書のタイトル
「大学教育への提言 〜ファカルティ・デベロップメントとしてのIT活用」
U.編集方針
ファカルティ・デベロップメントとの視点から教育改善のための課題を整理し、解決に向けた方策を大学のガバナンス、教育政策、教員の意識改革、IT戦略など「総論」として網羅的に報告する。その上で、学系別教育におけるコア・カリキュラムを意識して、教育成果として求める能力を整理し、能力達成に必要な授業設計の在り方を概括する中で、ITを活用した授業の事例を「各論」で紹介する。
V.目次構成
<総論>「人材育成のためのIT活用」(20ページ)・・・事務局担当
1.大学教育における人材育成の課題
2.教育改革のための大学戦略
3.大学教員に求められる教育力(教育の業績評価制度の導入、望まれる教育力)
4.ファカルティ・デベロップメント改善のIT活用(教育での多様なIT活用を紹介)
5.教育の支援体制と今後の課題
※総論は大学の執行部を対象とした内容とする。
<各論>「FDとしてのIT活用授業モデル」・・・委員会担当
W.FDとしてのIT活用授業モデル(1委員会:15ページ)
1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標
(学部教育を中心とするが、必要に応じて大学院教育も対象とする)
2.教育現場での課題
3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性
4.ITを活用した授業モデルの事例紹介(4モデル×3ページ程度)
5.IT活用に伴う課題
X.資料
コア・カリキュラムの他、授業内容、コンテンツの一部をCD−ROMで添付。
Y.原稿締め切り
18年8月末を目途とする。(9月〜10月は編集期間)
Z.出版日程
18年11月臨時総会にて報告。
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そこで、本委員会としては、下記の方針により執筆することにした。なお、各項目に記された執筆分担は暫定である。
1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標
⇒これまでの議論を整理。
2.教育現場での課題(福原委員)
⇒以前実施した企業アンケートや福原委員より報告いただいた大学・学生側の課題を取りまとめる。
3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性(松島委員長、竹田委員)
⇒ビジネスゲームを一つの幹とした経営学のカリキュラムを提案する。さらに、教室規模・学生数ごとの授業運営方法などにも触れる。
⇒ビジネスゲームという名称に嫌悪感を示す教員もいることを考慮して、「疑似体験」や「アクションラーニング」という名称に変更することも検討する。
4.ITを活用した授業モデルの事例紹介(4モデル×3ページ程度)(佐藤委員、岩井委員)
⇒佐藤委員、岩井委員、白井教授のビジネスゲームの事例を候補として確保。ただし授業モデルの内容全てがビジネスゲームになってしまうので、その他の活用方法も検討する。
5.IT活用に伴う課題
⇒授業のIT化を図るために必要な支援体制・組織の問題を提起する。(広報委員会の翻訳なども参照)
次回委員会では、各担当者に草稿または関連資料を提出いただくことにした。
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