社団法人私立大学情報教育協会

平成16年度第2回経済学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成17年2月21日(月)午後2時より午後4時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:山岸委員長、林、渡邉、中嶋各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

(1) GLOBE設立記念シンポジウム・セミナーについて

 中嶋委員より、2月16~17日にメディア教育開発センター主催により開催されたGLOBE設立記念シンポジウム・セミナーに関する報告がなされた。このセミナーは、EU、オーストラリア、カナダ、米国、日本の学習コンテンツ共有再利用コンソーシアムおよび国立中核機関が連携して形成した、学習コンテンツ共有再利用のための国際ネットワーク「GLOBE」設立を記念して開催されたものである。GLOBEでは、主にネット上の教育コンテンツ検索のための、メタデータの標準化(管理貯蔵)を目的としている。

 米国からは、Merlotのエグゼクティヴ・プロデューサーGerald L. Hanley氏の参加があった。Merlotは、教育用のオンラインコンテンツの収集とデータベース化を目的として設立された非営利団体であり、カリフォルニア州の資金協力を得て運営がなされている。また、優れたコンテンツに対する顕彰制度を設けることにより、教員に対してコンテンツ登録のインセンティブを与えている。

次週中嶋委員は渡米し、Gerald氏と会見することにしているが、GLOBE、特にMerlotの目的は、TIESの今後の方向性と類似していることもあり、今後TIES−Merlot間の連携を計画していく。

(2) 経済学教育におけるコア・カリキュラムについて

National Council on Economic EducationのNational Standardを参考に、日本における経済学教育の問題点やカリキュラムについて自由討議した。なお、Natinal Standardは、中学生、高校生を対象とした、最低限身に付けるべき経済学的知識を体系化したガイドラインである。各章には、学生が身に付けるべき知識、能力の基準が学年級ごとに詳細に記載されている。内容的には、マクロ経済学、ミクロ経済学の学習範囲に相当している。

    • 日本の大学生向けに同様のカリキュラム体系、ガイドラインを提示するのであれば、学年級ごとの到達目標でなく、学生が目指す職種別に必要とされる知識や技能を階層化する必要がある。それが動機付けとしても機能するのではないか。
    • 公務員試験に出題される経済学の問題は、マクロ・ミクロ経済学の体系が網羅されているが、必ずしも経済学的素養の修得を目的としたものではなく、あまり参考にはならない。
    • 大学院の入試問題も各大学が個別に作成することは問題である。大学入試センター試験のように、大学間共通の試験問題により入試を実施すべきである。合格ラインは各大学が決定すれば良い。そうしない限り、大学院生の能力の保証ができないのではないか。
    • 大学院では、社会人学生、留学生が大挙に入学してきたことに伴い、教員が学生一人ひとりの面倒を見ることが不可能となり、全体的に質的低下が生じている。
    • 優秀な学生は放置しておいても自ら学習するので、できない学生に対してきめ細かく指導することにより、学力の底上げすることを図ることは可能かもしれない。しかしながら、研究者の育成に鑑みると、やはり優秀な学生を完全に放置するわけにはいかない。そこで、インターネットを活用して複数大学間の教員が共同して優秀な学生達を指導する仕組みが可能では無いか。反面、本来であればできの悪い学生に対してはフェイス・トゥ・フェイスの授業をした方が良いが、マスプロ教育において学生一人一人に対して教員が一人で個別対応することは不可能であることから、いずれにせよITを有効的に活用する手立てを検討する必要がある。
    • 18年度に発刊する報告書では、各学問分野別にコア・カリキュラムを想定し、教育目標到達に向けて、有効な教授法、用意すべき教材を提案することにしている。本委員会でも、コア・カリキュラム全体を構築することは不可能であるものの、科目ごとの教育目標を提示いただきたい。

 以上を踏まえ、次回委員会では、経済学教材データ集構築時に作成した、マクロ経済学、ミクロ経済学の目次に対して、教育目標を付与することとした。