社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第4回建築学教育IT活用研究委員会議事概要
T.日時:平成17年3月14日(月)正午より午後2時まで
U.場所:私情協事務局会議室
V.出席者:若井委員長、衣袋副委員長、眞鍋、関口、下川各委員、井端事務局長、木田
W.検討事項
1. 報告書の内容、方針について
事務局より、18年度に発刊を予定している報告書の指針に関して説明がなされた。
単にITを活用した授業モデルを紹介するだけでは、多くの教員の関心を喚起できないことが想定される。そのことに鑑みて、18年度の報告書では、建築教育の分野ごとに、コア・カリキュラムと教育目標を想定し、その達成に向けての効果的なITの活用方法を紹介することにしている。IT活用が効果的でない事例もあれば、それも含めて提示していく。それ故、17年度の委員会活動としては、報告書執筆に向けて、各分野の教育目標の整理や紹介する授業モデルを検討いただきたい。
続いて、衣袋副委員長より、建築学会における昨今の建築教育に対する取り組みについて情報提供がなされた。
日本建築学会では、建築教育動向調査委員会が設置されており、そこでは今後の建築教育の方向性を提案するため、昨今の建築教育の動向を調査した。その結果、教育内容の多様化に関連して、JABEEやUIA等教育の品質保証に関する問題や建築学科という名称が減少していること、実務教育への方向転換として、教員の体制として実務経験者が増加していること、などが判明した。このような傾向に鑑みて、今後の建築教育の方向性として、情報・環境・福祉を一般教養・基本的スキルとして、その上に建築の専門領域を築き上げていくことになるであろう。それに加えて、マネージメント的な能力を滋養することも求める。
また、大学の教育と実務社会の間でもミスマッチが生じている。具体的には、実務界の求める能力と大学の教育内容の連関性が無いこと、大学卒業後に就職した学生がすぐに就職先の企業を辞めてしまうことなど挙げることができる。ミスマッチを解消するためにも、大学と社会との連携がより重要になるのではないか。
以上の事務局の説明及び衣袋副委員長より提供いただいた情報をもとに、コア・カリキュラムや産学連携について自由討議したところ下記の旨の意見があった。
- 従来の建築教育は、設計を軸としてカリキュラム編成がなされてきたが、今後はそのバランスが崩れ、より多様な教育内容、特にマネージメントや経営的な分野を摂取していくことになるであろう。
- 社会と大学のミスマッチに関して言うと、学生のフリーター化や早期退職は、コミュニケーション能力の欠落など、学生自身の問題であることが多いものの、大学全体として就職率が低下すれば、その責任の所在は大学に求められる。それ故、大学も学生のフリーター化を防止するための措置として、産学連携など積極化を図るべきである。
- 確かに一般的なマナーの欠落した学生は多いが、就職に関して言うと、産業界の採用方針が景気に左右されやすいことにも問題があるのではないか。例えば、数年前までは、学部生の採用を抑え、即戦力のある院卒の学生を積極的に受け入れてきたが、院卒者の早期退職が増発すると、今度は院卒の学生の採用を減らし、学部卒の学生の採用を増やすなど、場当たり的な対策が多い。採用者側にも一貫したポリシーがないと、大学側も対応に苦慮しているのが現実である。
- 品質保証に関連して、大学の自己評価の一環として、授業内容に対する学生アンケートが実施されているが、単位を取りやすい授業の評価が高く、必ずしも公正な結果であるとは言えない。例えば学生が卒業してから5年後にアンケートを実施すれば、より真実味を帯びた回答結果を得ることができると思われる。
なお、次回委員会以降、随時報告書の内容について検討していくこととした。
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