社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第1回機械工学教育IT活用研究委員会議事概要

T. 日時:平成17年5月13日(金)午後4時から午後6時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:曽我部委員長、森沢、田辺、河端各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1. 機械工学教育における産学連携について
田辺委員より、産学連携による遠隔授業案を提出いただいた。授業案は下記の通りである。

1はじめに
有限要素法などのコンピュータを用いた数値計算技術(シミュレーション技術)は、各種の産業分野で、自然や社会に受け入れられる様々な優れた製品を開発するための数値実験の手段として利用されていることから、多くの機械系学科でその主要科目の一つとして教えられている。また、(社)私情協の機械工学教育IT活用研究委員会では、製品開発に関連した数値計算事例の教材データベースの開発を行ってきた。
ここでは、学生が産業界の状況を知り、学ぶ意欲を高めることをねらって、いくつかの大学の教室と企業(または研究所)をネットワークで同時に相互に結び、数値計算技術に関する動機付機械工学の授業実験を行う。
1)教材データベースを用いて、製品開発に関連する数値計算事例の紹介。
2)産業界で、数値計算技術を利用して、製品開発や問題の解決を行っている技術者(研究者)から、
20分程度のミニ講義をしていただく。ネットワークに接続の大学の学生が同時に受講できる。
3)各大学の学生との質疑応答。技術者(研究者)や教員から学生への学習アドバイスや励まし。  

2授業内容
授業科目:有限要素法、シミュレーション、数値解析、計算力学、CAE等(後期、12月末)
数値計算技術の製品開発への応用(60分授業)

1)製品開発とコンピュータの応用                   6分
2)教材データベースを用いた数値計算事例の紹介1         7分
  教材データベースを用いた数値計算事例の紹介2         7分
3)産業界(高速鉄道)での利用の現状(ミニ講義)            30分
(1)(財)鉄道総合技術研究所の第一線研究者によるミニ講義(20分)
新幹線の開発におけるシミュレーション技術の利用 企業技術者
様々な鉄道の問題の解明や対策に利用
(2)各大学の学生からの質疑応答(10分)
4)その他、まとめ                            10分

前回提出いただいた案との変更点は、授業内容を有限要素法に限定せず、@コンピュータを用いた数値計算技術全般を取り扱うこと、A本委員会で構築した教材データベースの利用を強調したことを挙げること、B授業時間を90分から60分に短縮したことを挙げることができる。@については、前回の委員会において、参加校を神奈川工科大学に限定せず他の委員校も含めることが承認されたことを受けての対応であり、対象授業科目にシミュレーション、数値解析、計算力学、 CAE を含めた。Aについては、データベースの広報活動を目的とした措置である。Bについては、前回の委員会において正規カリキュラムの授業として実施することは困難であることから、 夏期、冬期休暇直前の補講授業として実施することを考慮した結果である。さらに、教員による説明時間を短縮し、企業技術者によるミニ講義の時間を延長させた。なお、開催時期は、12月末、参加校数は3〜4校を予定している。

以上の説明に関して意見交換したところ、(1)企業のOBにも参画いただき、過去と現在の数値計算技術を対比することによって、日本における鉄道開発技術の歴史を認識してもらうことが可能ではないか、(2)森沢委員にも、自動車衝突に関する教材をもとに講義をしていただければ、より学生の関心を惹くことが可能ではないか、との意見があった。それを受けて、企業OBによる講義を、3)産業界 ( 高速鉄道 ) での利用の現状(ミニ講義)の直後、森沢委員の講義をその後に組み入れることを、検討することとした。なお、企業OBとしては、元鉄道総研の国枝氏を第一候補者として、田辺委員に打診いただくこととした。

その他変更点として、まず開催時期について、田辺案では12月末を予定していたが、12月後半から各大学とも冬期休暇に入ることに鑑みて、10月〜11月に変更することとした。参加大学は、神奈川工科大学、上智大学、武蔵工業大学、金沢工業大学を候補校とした。次回委員会では、田辺委員より、より詳細な授業シナリオを提出いただくこととした。

 

•  機械工学教育におけるコア・カリキュラムについて

曽我部委員長、角田委員より、自身の考える機械工学のコア・カリキュラム案を提出いただいた。曽我部委員長の案は、自身の担当授業である機械力学、振動工学の学習項目をリスト化したものである。このリストをもとに、各項目に到達目標やITの具体的活用例を付与することが併せて提案された。

角田委員の案は、機械工学の全分野のカリキュラムを委員会として作成することは困難であることに鑑みて、オーソドックスな科目に限定して、専門基礎科学カリキュラム(講義系)、専門基礎技術カリキュラム(実習系)、専門数理基礎カリキュラムの3大項目ごとに、それぞれ該当する科目を振り分けたものである。

以上二つの案をもとに意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいては、良質な医師の育成を目的として、最低限医師として身に付けるべき情操、知識、臨床能力を取りまとめている。機械工学においても、技術者としての理想像を確立し、角田委員の案のように大上段からそれぞれ個別的な科目へと切り込んだ方が良いのではないか。
  • 医学教育と同様に、機械工学においては、社会や自然に受容される製品を開発する技術者、社会の問題を解決する技術者を育成することが教育理念として掲げられよう。そのためには、専門知識のみならず、職業倫理的な教育も必要とされる。それ故、角田委員の案に加えて、職業倫理的なカリキュラムや人間や環境との調和といった側面も考案する必要があるのではないか。
  • 前回の報告書作成時においても、機械工学教育の教育理念について議論した経緯を踏まえ、今回はその実現に向けて具体的なカリキュラムを検討すれば良いのではないか。

以上の結果、次回委員会においては、角田委員の案を参考として、委員各位、各カリキュラム下の授業科目の見直しと、それぞれに対応する効果的なIT活用方法を書き出し、持参いただくこととした。