社団法人私立大学情報教育協会

平成15年度第3回経営工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成15年11月17日(月)午後6時から午後8時まで

U.場所:私情協事務局

V.出席者:渡辺委員長、越島、米内山、細野委員、富澤アドバイザー、井端事務局長、木田

W.検討事項

(1) 越島委員による授業事例紹介

越島委員より、リアルタイム授業評価システムを用いた授業事例について紹介いただいた。はじめに、このシステムを導入するに当たっての経緯について説明いただいた。

日本数学協会が実施したアンケート結果によると、昨今の学生は基本的能力、数学的思考力・知識が低下しており、また受動的態度や忍耐力の欠如が顕著であると報告されたが、千葉工業大学の学生にもこの現象は伺える。特に、越島委員の担当する「プロジェクトマネジメント」の授業では、プロジェクト・エンジニアの育成を教育目標としているが、プロジェクト・エンジニアの具備すべき人格的条件としては、積極性、協調性、迅速性、粘り強さ、社交性が求められるため、受動的態度や忍耐力の欠如を排除する必要がある。

そこで、受動的態度への対応策としては、授業中にチーム制を導入した。チームは学籍番号により5〜6名一組として任意に編成される。レポート作成や中間期末試験はチームとして対応し、結果に対しては連帯責任を負わせている。また、チームに1人リーダーを設け、メンバーに対して採点する権限が与えられる。

忍耐力欠如の対応策としては、集中力維持のため、授業編成を講義45分+演習45分として気分転換をさせている。また、講義時間内にレポートを提出させることにより、意識の集中に努めている。また、チーム制により、メンバーの適正に合わせた役割を意識させるとともに、作業前に計画を立てさせることにより、作業担当者の責任を自覚させている。

チーム制導入の結果、学生同士が顔見知り以上の間柄となり、また気兼ねない議論や意見提示によるチームへの貢献意識により、積極性を身に付けることが可能となり、また学生自身の低パフォーマンスがチームに与える影響への罪悪感や、マイナスポイントに対する自発的代償行為により、協調性や責任感を育成することも可能となった。

一方では、チーム制であるが故に、メンバー各人の理解度の違いがチーム行動の阻害要因になり、また講義内にレポートを提出するため、提出が優先され、内容に取りこぼしがあったり、各メンバーの理解度の糊塗があったりするなどのデメリットも挙げられる。

そこで、学生個々の集中度と理解度をリアルタイムに観察し、その都度授業内容を修正するとともに学生のモチベーションの向上を図ることため、リアルタイム授業評価システムを導入するに至った。

このシステムでは、(1)受講者の理解度リアルタイムで把握、(2)講義シナリオを適宜選択、(3)受講者の理解度履歴をExcelで管理 することが可能である。システム構成は、PDA(学生に理解度を入力させる)、無線LANアクセスポイント、講義用PC、講義管理用サーバーを用いる。PDAは学生3人に対して1台貸与している。

使用方法は、学生が講義内容の理解度を、PDAに表示された「YES」「NO」ボタンによって送信し、集計結果がその都度講師のPowerPointの右上に表示される。また、授業シナリオ別に異なる内容のPowerPointを登録することで、学生の理解度に合わせた授業シナリオに適宜変更することが可能である。理解度の集計方法は3パターンあり、講師の任意のタイミングによる集計、周期的な集計、pptのページ毎の集計が可能である。

このシステムを用いて学生は、教員が学生に対して理解させようと努力している様子が伺える、との反応を示した。また、PowerPointの画面に理解度の集計結果だけではなく、チャット画面も表示させれば、教員−学生間のコラボレーションが促進されるとの意見もあった。

なお、データはまだ集計できていないため、教育効果に関する報告はなされなかったが、次回委員会では、データの集計結果ととも教育効果についても報告いただくこととした。

(2) その他

今後の委員会活動に関して意見交換したところ、学生の教育効果を向上させるためには、理解度や進捗状況を管理することが必要であり、そのプロセスは企業の人的資源管理システムとの共通している部分もあるが、大学では4年間で学生を社会に輩出しなければならず、企業のシステムとはまた異なる管理システムが必要であることが認識された。一方で、良質の管理システムとコンテンツを準備するだけで必ずしも教育向上する訳ではなく、教員の教育に対する姿勢をいかに学生に提示していくのかということも、重要であることが確認された。

次回委員会では、e-Learningと対面授業の融合方法という観点から、今後の委員会活動について自由討議することとした。