社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第3回経営工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成17年9月1日(火)午後4時から午後6時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:渡辺委員長、越島、玉木、米内山、細野、佐々木、小池各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

本年度より、佐々木桐子新潟国際情報大学講師、中島健一大阪工業大学助教授、小池稔産業技術短期大学助教授が委員に就任された。今回佐々木委員、小池委員が出席されたことに伴い、議事に先立ちそれぞれ自己紹介がなされた。
1. 経営工学出身者の人材像に関するアンケートについて
前回の委員会では、9 月17日に開催される日本経営工学会において、企業人に対して経営工学出身者の人材像、学習内容等について調査を行うこととなり、今回はその質問項目を検討することとなった。
  前回では、委員各位より、自身の考える経営工学出身者の人材像やスキルについて報告いただいた。細野委員からは、製造業のみならずあらゆる業種において通用する人材、より具体的に言えば業務の効率化を図るためのワークシステムを設計できる人材を育成することが提案された。越島委員からは、プロジェクトマネジメントの観点から、各部門の有する専門技術を統合化し、経営戦略に活用することのできる人材像が提案された。渡辺委員長からは、経営工学は他の工学分野とは異なり、固有技術ではなく汎用性の高い管理技術を学ぶ学問であることが強調された。それ故、越島委員と同様に各固有技術を統合化し、経営戦略に反映する能力や製品ライフサイクルを管理することのできる能力が、出身者に求められると提起された。冬木委員からは、現状の経営工学のカリキュラムは、各科目の連関性を考慮せずにバラバラに教授されていることを問題点として挙げられ、今後は科目間の連関性及び社会におけるヒトモノカネの流れを俯瞰することのできるような、システム的思考力を育成することが必要であることが発案された。

 以上前回の意見に関して自由討議したところ、下記の旨の意見があった。

  • 確かにこれまで経営工学は製造業を対象として学生に教えれば良かったが、昨今はシステム設計が主体となり、企業サイドも学生も学ぶ内容が判然としていない。しかし、想定する業種を広げすぎると、却って経営工学の特色を生かすことができなくなることから、対象を広げすぎない方が良いのではないか。
  • 社会のニーズや企業の業種も多様化している。例えば生産に関して言えば、従来であれば生産管理だけ考えれば良かったかもしれないが、現在は環境にも配慮して、材料や設計などこれまで触れなかった内容を学生に教えなければならない。それ故、ここでも次世代の経営工学として新しい体系を検討する必要がある。
  • 前回の各委員の提案にもある通り、学生は科目間の連関性を理解することや知識を統合化することができない。以前であれば就職後に社内の研修によって、補足することが可能であったが、不況の折企業も即戦力を備えた人材を欲しており、大学もそれを看過する訳にはいかない。
  • 日本の大学の現状を考えると、学生確保のために経営工学科も名称変更されるとともに、教える内容も多様化している。それ故に、従来の経営工学のコア・カリキュラムに則っている大学も減少傾向にある。一方で、JABEの認定を受ける場合には、経営工学の伝統的なコア・カリキュラムを抑えておく必要がある。本委員会でも、本来のあるべき経営工学のコアを再確立するのか、あるいは多様化された現状を踏まえて新しいコアを構築するのか、方向性を明確にした方が良い。

次に玉木委員より、前回の各委員の意見の整理と補足説明がなされ、さらに今後の活動について提案がなされた。

まず、「T.求められる経営工学出身者の人材像」として、各委員の意見を1.育成した人材の就職先、活躍すべき業界、2.育成対象者、3.今後、経営工学が取り上げるべき学問領域、経営工学の役割、4.経営工学出身者の人材像、5.経営工学出身者に求められる素養、職責、役割、スキル要件、6.人材育成のための経営工学の教育プログラムに対する要件(現状の問題点と、対策)として分類された。
特に、4.については、「企業における技術開発や新規事業開発など関わる本社事業部の経営活動」と「本社事業部との連携を保った生産・流通・営業拠点の業務経活動」の二つの側面からの整理がなされた。具体的には、前者においては、「戦略立案と評価、商品企画・製品企画と評価、製品開発マネジメントなどの専門知識や管理技術を有し、事業企画段階から商用化・事業化にいたる事業立案とその運営(マネジメント)に対応できる人材」、後者においては「広義の製品ライフマネジメントのエンジアリングプロセスと、そのエンジアリングプロセスの各段階に対応するマネジメントプロセス(バリューチェインマネジメント)を統合化して、企業間・部門間・拠点間を相互に連携したプロジェクトマネジメントができる人材」として、各意見の意見の集約及び補足がなされた。
「T.求められる経営工学出身者の人材像」について意見を求めたところ、下記の旨の意見があった。

  • 4で想定されている業種が、若干製造業や生産部門に偏っていることから、サービス業における人材像も検討すべきではないか。
  • 本社や事業部という言葉から、大企業が喚起されてしまうので、中小企業を考慮した表現に修正したほうが良いのではないか。

続けて、玉木委員より今後の方針について下記の説明がなされた。

前回の委員会では、企業人にアンケート調査を行うことを前提として委員各位に意見を求めたが、その前に9月17日に開催される日本経営工学会企画行事委員会では、企業人に対してインタビューを行い、そこで一度レビューをしてからより広範に調査を行った方が有意義な結果が得られるのではないか。その際は日本経営工学会やIE協会をチャネルとして、Web上でアンケートを実施することが効率的と思われる。

玉木委員の提案を受けて、本委員会後、委員各位より4.経営工学出身者の人材像、5.経営工学出身者に求められる素養、職責、役割、スキル要件、6.人材育成のための経営工学の教育プログラムに対する要件(現状の問題点と、対策)に対する補足説明や意見をメールにてお送りいただき、再度玉木委員に集約いただいた上で、9月17日の日本経営工学会企画行事委員会においてレビューを行うこととした。

また、今後の委員会では、これまで検討してきたコア・カリキュラム案を踏まえた授業モデルの検討に入ることとした。