平成17年度第2回薬学教育IT活用研究委員会議事概要

社団法人私立大学情報教育協会

Ⅰ．日時：平成17年9月15日（木）午後4時より午後6時まで

Ⅱ．場所：北陸大学太陽が丘キャンパス

Ⅲ．出席者：河島委員長、山岡副委員長、齊藤、山村、梶原、大嶋岩城、鈴木各委員、井端事務局長、木田

Ⅳ．検討事項

１．薬学教育モデル・コア・カリキュラムにおけるIT活用方法について

議事に先立ち、本年度より山村重雄氏（東邦大学薬学部教授）が委員に就任されたことの報告とともに、自己紹介がなされた。

（１） C15-（1) 医薬品情報【EBM】

山岡副委員長より、薬学教育モデル･コア･カリキュラムの項目C15（１）医薬品情報【EBM】に準じた授業モデル案に関して下記の旨の報告をいただいた。

EBMに所要授業時間は、２～３時間程度である。到達目標としては、①用語の理解、②データの検索、③文献評価を挙げることができる。具体的に、①では実際に統計処理を行うことで、各用語の意味を理解させる。②は、学生に課題を与えて必要な情報を入手するための情報検索を行わせるが、臨床上の疑問を解答できるのは、博士課程以上の学生でないと困難である。③は、薬品の成分、効能の科学的根拠を検証するために、文献を批判的に評価する能力を涵養する。

ここでは、科学的根拠に基づく薬物治療の方法論を学習するため、必要なデータの収集や統計処理のためにITを活用することは所与の前提条件であり、特殊的な教育方法ではない。そのため、ITを活用した特色のある教育方法を検討することが難しい。

以上の説明について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

山岡副委員長の指摘通り、EBMではITを活用することが前提であり、敢えて特色のある取り組みを検討するのであれば、ケーススタディ的な教材の作成を考えることができるが、一つ一つストーリーを考案することに労力を要する。
ITを活用した授業モデルに適切であるか検討の余地が、授業時間外での予習復習のためにITを活用することは可能ではないか。
用語の理解を深めるためには、単に理論的な説明だけでなく、具体的な練習問題を解かせることが有効である。そこで、CBTのような自学自習用の練習問題システムの活用は、一つの授業モデルとして特色があるのではないか。

以上の意見を踏まえ、山岡副委員長にはEBMにおけるCBTを活用した授業モデル案を再検討いただくこととした。

（２） C15-（3）テーラーメード薬物治療を目指して【投与計画】

齊藤委員、岩城委員より、「C15‐(3)テーラーメード薬物治療を目指して【投与計画】」の授業モデル案を報告いただいた。今回は、前回齊藤委員、岩城委員個々に提出いただいた授業モデル案を統合化したものを提出いただいた。ここでは、授業及び導入部分におけるIT授業モデルとして、それぞれシミュレーションソフトとデータベース、アニメーションを活用した事例を考案いただいたが、詳細は、配布された資料を参照されたい。

なお、本案について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

視覚的教材は学生に刺激を与えるが、その場限りで教育効果が消失してしまうことも多々ある。シミュレーション教材によって動機付けを行い、問題発見・解決を行うためのケーススタディへと接合する授業が実現できれば教育効果は高いのではないか。
投与量を視覚的に表示することは非常に重要である。ここで紹介されたシミュレーションが将来薬局に設置することができれば、患者に対する服薬指導も徹底することが可能となる。またそのような視点から授業を実施すれば、学生の動機付けを高めることもできる。

以上、本授業モデルについては、齊藤・岩城委員の案に基づき継続して検討いただくことにしたが、山岡副委員長より、excelのマクロを用いたシミュレーション教材を紹介いただいたことから、シミュレーションソフトの選定・使用についても併せて助言・支援いただくことにした。

（３） C18-(3) コミュニティファーマシー

大嶋委員より、「C18-(3) コミュニティファーマシー」の授業モデル案について、下記の旨を報告いただいた。

コア・カリキュラムのGIOには、「コミュニティファーマシーのあり方と業務を理解するために、薬局の役割や業務内容、医薬分業の意義、セルフメディケーションなどに関する基本的知識とそれらを活用するための基本的態度を習得する」と記述されていることに基づき、ここでは態度の習得に照準を合わせ、OSCEの実施に向けたITを活用した教育方法を模索することにした。

OSCEは、①医療面接（患者接遇）、②処方解析（疑義照会）、③調剤（行為、監査）、④無菌製剤、⑤服薬指導の5項目のステーションをコアとして実施する予定であるが、コア・カリキュラムの内容と照合すると、①医療面接、⑤服薬指導が適合することから、この2点におけるITを活用した教育方法を検討することとする。現状では各大学とも模擬患者により教育方法を採用しているが、費用的にも負担が大きいことから、ITを活用した教材を利用することにより、効率的に教育できることが期待される。

なお、想定する講義課目は、PBLやチュートリアル型の教育システムの科目とし、シナリオや具体的な症例を用いた教育を実施する。

具体的な教材としては、医療面接、服薬指導を収録したDVD、CD、ビデオの活用が考えられる。

今後の実施手順としては、１．テーマの決定、２．シナリオ作成、３．模擬患者及び薬剤師あるいは学生による演技のビデオ撮影、４．各大学で2，3種類のシナリオを作成し、ビデオ撮影、５．撮影したビデオを各大学で共有し、PBL形式の講義に活用、を予定している。

なお、本年8月に名城大学のOSCEの試行を視察したところ、コミュニケーション力が欠けていることが見受けられたので、このような教材を活用することによって、コミュニケーション技法の修得が期待できるのではないか。

以上の説明に基づき意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

このような動画教材を題材として、学生同士のグループディスカッションを実施することは有益である。
シナリオを熟考しないと、リアリティが欠如してしまう。患者の背景等の状況設定を綿密に検討した方が良い。

以上、大嶋委員にも本案に基づき、継続して検討いただくこととした。

なお、全体のスケジュールとして、山岡副委員長の授業モデル案については、可能であれば今年度中にモデルに基づく実験を実施いただくこととした。

また、報告書の発刊時期は2006年11月であるが、原稿の締め切りは2006年9月を予定していることを踏まえ、事務局より、他の授業モデルでも2006年7月までに実験いただきたい旨の要望があった。