特集

情報化時代の教育



建築設計教育における情報の共有化

眞鍋信太郎(東京工芸大学工学部建築学科教授)




1.経 緯

 平成9年からネットワーク環境で必修の建築CAD教育を開始した。これに併せて、CGIで掲示板を作り、個別対応を減らすことと進捗状況の差異に対応することにした。
 また、設計製図教育においては、学生のエスキス(思考過程の図化)に対して、対面で指導することが求められる。模型をいじったり、トレーシングペーパーを重ねて書きながら行うことが多いが、この応答過程を他の学生とも共有するため、拡大表示する装置(書画カメラ、VTR、無線LAN付きのPCと液晶プロジェクター)を昨年製図室の各ブースに導入した。この装置のPCによってWeb上の記録や各種データを製図室でも共有・参照可能になった。


2.内 容

 担当科目毎に質疑応答や意見交換をBBS上に公開で行い、全員で共有する。提出作品は代表例をホームページに載せ、参考事例とする。また、デジタルと製図室の環境が共存する3年次後期の設計製図科目では、Web上に授業過程そのものの記録を作成しており、説明に用いる参考建築作品の素材データを蓄積しつつある。
  1. 担当科目にBBSの掲示板を設け、質疑応答や意見交換を公開で行い記録する。また、授業過程で気付いたことへの注意や補足説明も加える。これらの応答内容は科目の時系列の記録でもあり、前年度以前のものも参照可能にしてある。また、それらをまとめFAQに追加したり、プリントにして配布する。

  2. 3年次後期の設計製図Vでは、前半を協同作業とワークショップによる設計方針の検討にあてているが、その過程のまとめを毎週行い、提出物を含めて共有・参照ができるようにWebに載せた。
     また、Web上に表現するコースの学生達は設計案を履歴としてホームページに載せている。掲示板の内容も含めて、授業プロセスの記録を作成し教材に加えることにしている。

  3. エスキスチェックの応答時に空間や形態を説明するため、参考事例を表示できるように、建築見学時に撮影する写真や案内図、CAD図面等を研究室のサーバ上に蓄える。

  4. 共有化による利点

    1. 掲示板により学生との応答が時間的空間的に自由になったこと、公開にしたことから個別対応に煩わされることが減り、デジタルツール利用の授業には極めて有効である。ここでできる記録と提出作品のホームページは、そのまま科目の記録となり、次年度への参考資料が得られる。
    2. 設計製図の授業プロセス、エスキス過程のWeb上の記録を現在作成中であるが、設計時の検討事項や検討プロセスを教育する参考資料が得られると期待している。


3.今後の課題と問題点

 使用する掲示板がテキストのみであり、画像データはWebに貼るか、提出用ドライブに入れてftpでやり取りしており、この仕組みの改善が急務である。同時に、HTML作成とリンク作成を容易にすることも,設計時間の確保に必要である。しかし、計画系サーバの管理を研究室で担当しているが、UNIXであるため教員の負担が重荷である。
 一方、掲示板に参加する学生と見もしない学生が分極してきており、共有化できないきらいがある。また、建築作品のデータはむしろ素材でよいが、研究室ですべて作ると時間がかかる。このため、これまで作成したデータベースにも一部建築雑誌の画像データを借用しており、研究室内の利用に留めざるを得ない問題がある。



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