情報教育と環境

大阪経済法科大学における情報教育とその環境



1.はじめに

 大阪経済法科大学は、1971年(昭和46年)4月に大阪府八尾市にある現在のキャンパスに経済学部および法学部の二学部からなる大学として開学された。キャンパスは大阪・奈良の府県境でもある生駒・信貴山系の西麓、すなわち大阪府側に位置し、同地は古い歴史と豊かな自然に恵まれている。本学は、2001年度には開学30周年を迎えることになり、これまで卒業生約3万人を世に送り出している。
 本稿は、本学における「情報教育と環境」を紹介することをテーマとして課せられているが、以下では1997年9月から稼動を開始した「大阪経済法科大学総合情報ネットワークシステム」(Network for Information, Communication and Education、以下「NICE」と略記)を紹介するとともに、それに至るまでの簡単な経緯を紹介する。


2.NICE構築までの過程

 本学の情報化の出発点は、1984年度に受講希望者に対して「コンピュータ」という科目が10クラス開講されたことに遡る。当時の講義内容は、主にBASICの修得に向けられていた。
 その後、現在のNICEの管理運営部署である情報科学センターが1987年に設置され、1993年3月にはインテリジェントビルである6号館が竣工した。この6号館の竣工により、1994年度より入学生全員にコンピュータ教育を実施することが可能になった。また教育内容も多彩となり、ワープロソフト、表計算ソフト、データベースなどの応用分野の講義も行われるようになった。
 しかし、情報分野における技術革新は目覚しく、特に本学の更なる情報化へと突き動かしたのは、ネットワークシステムの発展、とりわけインターネットの世界的規模での拡充であった。1997年4月には、学長に対し、1)全学情報ネットワークの構築、2)教育用コンピュータ機器の更新と情報教育の充実、などが答申され、あわせて、NICE構築のための常設委員会として、情報化委員会が設置された。


3.NICE

(1)NICE概要

 情報化委員会および情報科学センターは、全学の協力を得てNICE完成に向け活動を開始し、1997年9月にはNICE稼動を迎えることができた。
 ネットワーク方式は信頼性および拡張性を視野に入れ、ファーストイーサネット方式を採用し、将来のギガビットイーサネットへの移行に備えた。NICEの最も基本的なコンセプトは、学内全施設を高速光ファイバーケーブル(基幹ケーブルは100Base-FX(100Mbps))で接続し、本学の教職員および学生が必要なときに、コンピュータの設置されているいかなる場所からでも、ネットワークにアクセスできる情報環境を実現することにあった。
 図はNICEの基本システムを示すイメージ図である。NICEは次のシステムからなっている。
 1)教育支援システム、2)図書館情報システム、3)グループウェアシステム(Notes:教員・事務局系)、4)事務業務支援システム(GAKUENシリーズ:事務局各部課)、および5)インターネットシステム(ORIONSおよびWCNを介するマルチプラットホーム方式)。また、NICEには端末機として、学生用約280台(後述)、教員用約60台、事務用約130台および図書検索用約20台が接続されている。また、上記システムに対応して、サーバ15台が設置されている。教育用および業務用端末機のOSは、 WindowsNT Ver.4.0を主力として配置され、マルチメディア対応ソフトに配慮し、教育用として一部Windows98を導入している。





図 大阪経済法科大学NICEシステム全体構成


(2) NICEによる教育環境

 NICEに接続される学生用端末機は、授業用としてIBM IntelliStation MPro等が150台(3教室各50台、うち1教室は後述のマルチメディア教室)、自習用としてIBM PC 300 XLが130台が導入されている。自習用機は授業開始の午前9時から、最大午後7時30分まで、学生に開放されている。
 在校生には全員アカウントが与えられ、学生用機を利用して学内外とのE-mailの送受信を自由に行える(サーバ上のHDDを5MBまで利用可能)。また希望者には、ダイアルアップIP接続サービスにより、自宅にあるコンピュータからNICEへのアクセスも可能となっている。
 また1999年3月には、文部省「平成10年度私立学校施設整備費補助金」の交付を受けて、マルチメディア講義室を整備し、VODサーバを核に動画像の編集・配信および学内における遠隔授業が可能となるNICEマルチメディア講義室システムを導入した。この結果、教育用コンテンツとして、従来のテキストデータや静止画像に加え、動画像も積極的に活用できる環境が実現した。  さらに、今年の11月には、ネットワークシステムの中心的ツールになりつつある、Web環境による教育支援システムを構築し、テスト環境ながら、シラバスのデータベース化をはじめ、学内における学生の分散協調型システム(グループウェア)導入等の試みを推進している。

(3)コンピュータ関連授業

 NICE稼動が1997年の9月と年度途中であったため、情報化委員会のメンバーを中心に、同年後期のコンピュータ関連授業のテキストとして「NICEシステムガイド」を急遽編集して、授業に対応した。その内容は、ネットワークコンピュータの利用方法、WindowsNTおよびアプリケーションソフトOffice97の使用方法など、情報リテラシーの習得に力点がおかれた。
 1998年度には本学で部分的にセメスター制が導入されたのに伴い、従来の「コンピュータ」を「コンピュータの基礎 I」および「コンピュータの基礎 II」へと改編し、そのための統一教科書として大阪経済法科大学「コンピュータの基礎」(康祥隆監修・大阪経済法科大学出版部、現在は<第2版>)を刊行した。さらにこれらの科目を履修し、アプリケーションソフトの習熟をめざす学生には、「コンピュータ応用A(ワープロ)」、「コンピュータ応用B(表計算)」、「コンピュータ応用C(データベース)」、「コンピュータ応用D(プレゼンテーション)」、「コンピュータ応用E(Visual Basic)」および「コンピュータ応用F(マルチメディアの活用)」を新たに開講している。
 また、専門教育(経済学・法学)では、マルチメディア大講義室において、インターネット情報や画像データを利用した授業が一部で進められており、語学教育でもCAI(2201号)教室が外国語教育に利用されている。


4.今後の展望と課題

 今後の情報教育システムおよび環境については、基本的にマルチメディアシステムの充実と、インターネットを活用した双方向・遠隔システムの整備を重点に検討している。
 マルチメディアシステムの充実では、MPEG3方式などの技術動向の推移を念頭に入れながら引き続きシステム環境を整備し、何よりもコンテンツの編集蓄積と授業への活用の推進が重要であると認識している。さらに、そのコンテンツ作成に向けた支援体制においてもアウトソーシングの活用を含め、積極的な整備が急がれている。  また、爆発的なインターネット人口の増加を背景に、インターネットが社会における主要なコミュニケーションツールとなりつつあり、大学におけるインターネットの活用も、教育・研究はもちろん学生サービスに至るあらゆる分野で浸透している。今後の教育システムは、Web環境における教育・研究コンテンツの共有・配信・検索や遠隔授業の取り組みが進展する一方、グル−プウェアを利用した分散協調システムによる教育が一層活発化するものと思われる。
 したがって、インターネット環境の整備充実が今後とも重要な課題であり、全学的な取り組みが必要となっている。


文責:大阪経済法科大学情報科学センター


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