私情協ニュース2
平成11年度の私情協大会は、9月1日から9月3日までの3日間、私学会館で開催された。
今回の参加者数は562名(152大学、29短大、賛助会員22社)と、例年よりも50名ほど少ない結果となった。大学の厳しい経営状況やプログラム内容に技術面など実務的内容が少なく、職員が興味を持ちにくかったことが影響しているようであった。なお、賛助会員による展示会の出展数は昨年と同様に30社であった。
今年度の私情協大会プログラムの概略を紹介すると、まず、初日午前中は、「ネットワーク上における教材の共有化と共同開発」と題して、実践事例の紹介とパネルディスカッションが行われた。また、午後は、「教授法としてのメディアの活用」と題して、日米におけるキャンパスのデジタル化の現状紹介や、教材の電子化の事例紹介、大学規模でのオンメディア教育に関する講演が行われた。またこの他、私情協事務局より国の補助金活用について説明がなされた。
2日目は四つの会場(A:教授法とソフト、B:情報基礎教育、C:情報環境、D:教育支援)に分かれて58件の事例発表が行われた。
3日目の午前中は、実践的な内容や問題点を中心としたテーマとし、「郵政省の次世代超高速ネットワーク」についての郵政省からの説明、3大学からの「補助金活用によるモバイル活用授業の実験報告」がなされた。また、午後は2会場にわかれ、一つの会場では「キャンパスのデジタル化へ向けて」と題したディスカッションとJava活用の説明が行われ、もう一つの会場では「オープンソースの現状と利用」と題した大学の事例紹介と私情協のネットワーク研究委員会委員による「ネットワークの変化への対応」についての説明がなされた。なお、2日目の午後から最終日まで、好評の賛助会員30社によるマルチメディア関連の機器等の展示が併設され、2日目の最後は、例年同様に懇親会が催された。
次に、各セッションの内容について報告をする。
情報環境としてのネットワークは整備されつつある。これを教育に利活用しようとするとき、教材、すなわちコンテンツのないことに気が付く。コンテンツの開発は、人手と金と根気が必須で、一人ではいかんともし難い。さらに、どのような教材を用いて、どのような教育をすればネットワーク等の情報環境下で教育の効果が上がり、これまで不可能だった新しい教育を実施できるのであろうか。情報教育の次の課題は、これまでの情報環境の整備から、教材すなわちコンテンツを開発すること、さらにその先には情報技術を用いた真の教育のあり方を問うことに移りつつあるのではないだろうか。私情協の役割も、このような課題に挑戦する新しい時代に入ったという認識をもち、今回、私情協大会運営委員会は、初日の午前のセッションを従来とは異なった新しい方向の企画としてみた。すなわち、私情協にとっては教材開発元年という意識をもって企画を立てた。まず、重要な問題は、ネットワーク上における教材の共有化・共同開発を促すことであり、次に多くの実績と経験とを通して、お互いにそれらを共有することであろう。これらはどのようにすれば本当に可能であり、問題点はどこにあるのかを明らかにするため、最初に実践事例を紹介していただき、その後いくつかの学問分野の現状をお話しいただいた上で、パネルディスカッションを行うこととした。
1.実践事例
「基礎的教育の教材データベースと共有、JAVAによる教材作成支援 −物理学分野」
物理学の分野では、教材の共通部分を見出だすことが他の学問分野に比べて容易であるという利点を生かして、43大学・機関の64名の参加を得て、NEP(Network for Education of Physics)が1997年に組織された(現在は、59大学・機関、81名)。ここでは、インターネットを用いて主としてJava言語で開発したモジュール(1−3週間で教育し得る特定テーマに関する授業計画)を多くの教員が開発し合い、利用し合うというものである。極めて計画的で意欲的な、かつ大掛かりな試みであり、参加者の関心を強く引いた。興味ある点は、NEPのデータベースにモジュールを掲載するとき、情報の信頼性を確保するために、NEPレフェリーグループなるチェック機構を有していることである。著作権やセキュリティ等の問題点もあることが報告されたが、通常の教育効果がすぐには見えるものではなく、十数年を経てから見えてくるようになるだろうという最後の言葉は印象的であった。
2.パネルディスカッション
「教材の共有化と共同開発の可能性」
中部大学工学部助教授 | 宗像 義教氏 |
私情協薬学情報教育研究委員会委員長 | |
北陸大学学長 | 河島 進氏 |
私情協会計学情報教育研究委員会委員長 | |
関西大学総合情報学部教授 | 黒葛 裕之氏 |
私情協経済学情報教育研究委員会委員 | |
関西学院大学経済学部教授 | 村田 治氏 |
大会運営委員会委員長 | |
明治大学理工学部教授 | 向殿 政男氏 |
教材の共有化と共同開発の可能性について、河島氏からは薬学の分野から、黒葛氏からは会計学の分野から、そして村田氏からは経済学の立場からそれぞれ紹介があった。それらを踏まえてフロアも含めてパネルディスカッションが活発に行われた。結論としては、内容が確定している学問分野が適切で、汎用的なモジュール等の部分を選んで開発する、モジュールの選択やアレンジは各教員の自由裁量の余地を十分に残しておく、いくつかの異なった大学にまたがって開発するなどが必要で、これにより、開発費用が分担化され、各人の得意なところを出し合うことができ、シミュレーションやビジュアライゼーションにより形として見せることが可能になり、モチベーションが上がるという利点があるという結論が得られた。ただし、開発には時間と費用が掛かり、かつ継続・運用にも人手と費用が掛かるので、補助金を出して欲しいこと、および、私情協の支援が必要であるという要望が出された。なお、フロアから、AI的手法(エキスパートシステム)は使えないかとの質問があったが、まだ、そこまでは行っていないというパネラからの回答であった。
1.「キャンパスのデジタル化における米国と日本」
日米比較に関する米国側のデータとして、全米科学財団(NSF)の助成金データベースを用いた。この中でアメリカでは教材と実験の改善の段階が1995年をピークに減少に転じているのに対し、’94年頃からコースカリキュラム(科目授業の組立)に主眼が移っていることが示された。これに対する日本側のデータとして科研費をとりあげられた。それによると’98年になって教材、リテラシー、育成方法などに助成金が多く分配されていることが示された。これらのことから、今後は授業研究の主眼をコースカリキュラムに移していかなければならないことが強調された。
次にアメリカのキャンパスディジタル化の具体例として、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校での経験が紹介された。いろいろな学生サービス、キャンパスディジタル化への取り組み、それらを支える大学側の支援態勢が示された。
わが国大学のハードウェア面の設備は米国大学に劣らないものの、教材などのコンテンツの開発の面では立ち遅れている。大学首脳部の使命感、危機感がこれまで以上に必要であり、教員サイドでも授業教材の電子化とそれら知識の共用化が必要であることが強調された。
2.事例紹介
「新しい教材の作成」
「授業教材の電子化と教材作成ツール −帝塚山大学TIESの利用−」
授業教材の電子化の必要性と、それを充実させるためのインターネットを活用した教材などの知識の共用化の必要性が強調された。そして、帝塚山大学で開発された TIES (Tezukayama Internet Educational Service) というシステムが紹介された。教員はそれまでに開発された教材を組み合わせたり、修正したりして自分の授業を組み立てることができる。学生はそれらの教材を利用し、適切な情報を盛り込んで独自のノートを作り上げることができる。また、掲示板などに質問を投げかけて、教員や他の学生から示唆を受けて理解を深め、知識を広げることができる。最後に、こうしたことは一大学にとどまらず、広範囲な教育機関で運営すべきである、と締めくくられた。
「一般科目教育(情報系以外の科目教育)における情報技術活用」
情報系科目以外の科目について電子化が立ち遅れている理由として、設備に関する投入費用に対し充分な効果が得られない点が示された。また、担当教員の授業に対する情報技術利用が研究実績として評価されない点も指摘された。そして、具体例として放送大学の「情報基礎管理学」の講義で使っている情報技術が示された。この中で、情報に関する講義や演習はソフトや機器の解説を主とすべきでなく、意思決定活動に有効であると思われる範囲で話題にする、つまり技術指向でなくニーズ指向的な採り上げ方が必要であることが強調された。また、企業などが配布している体験版を授業に利用することも提案され、反響を呼んだ。
3.「オンメディア教育に向けて」
東京工科大学に4月に新設された「メディア学部」における「オンメディア教育」(教育のあらゆる面でパソコン・インターネット・新しい情報機器等を積極的に活かす教育)について、その構想の紹介と現時点での成果が報告された。情報教育においては、専門領域や問題の発見・解決につながる情報リテラシー教育を行い、情報に関する基本的な技能を養成している。オンメディア教育としては、すべての授業にコンピュータなどのデジタル機器、CAIなどのソフトの積極的な導入が進められており、授業に対する質疑、学生による授業評価等もオンラインで行うことができる。現在は授業開始より1学期しか経過しておらず、限定的な評価しかできないが、授業に対する理解度、双方向度、満足度など概ね好評であることが報告された。一方、授業の進行速度や知的財産権の取り扱いに関する問題点も指摘された。今後とも、オンメディア教育構想をさらに発展させ、実現させていく計画であることが熱く語られた。
(文責:明治大学 向殿政男、専修大学 魚田勝臣
早稲田大学 船木由喜彦)
Aコース:教授法のソフト
A−1 獣医放射線学教育ソフトウェアの開発と運用
北里大学 伊藤伸彦氏、本田 剛氏、夏堀雅宏氏
講義時間の減少に対して学生に与える情報が増加する現状に対処し、効率的な教育を行う目的でX線静止画像、動画など各種教材を収録し、HTMLを用いた実習および自習用の獣医放射線学教育用ソフトウェアの開発・運用経験の事例が紹介された。
A−2 芸術系学科における情報教育ツールに関する考察
文化女子大学 梶谷哲也氏
芸術系学科における情報教育では、教育用ツールとして相異なる特徴を持つ二つの環境(言語)を採用していたが、新たにKidsLOGO言語の採用によって双方の長所を併せ持つ環境が実現でき、その教育効果についての具体的な事例紹介がなされた。
A−3 HPを用いたパソコン組み立てによるリテラシー教育
甲南大学 松崎邦彦氏、佐藤 健氏、辻田忠広氏
情報化人材を短期間に効率良く、安価に達成する1手法である「パソコン組み立て実 習」に関して、指導者の負担軽減や多人数実習の一斉教育などに対応するため、HTMLを用いたホームページ形式CAIを導入した効果について報告がなされた。
A−4 マルチメディア中国語音声教育教材の開発 について
成蹊大学 湯山トミ子氏、陳 仲奇氏、土屋肇枝氏、邱 燕凌氏
中国語教育における音声教育の充実と発音教育の負担軽減を図るために授業補助用マルチメディア教材「中国語の発音(基礎編)」を開発し、授業に使用した結果からの開発成果と今後の課題を含めて第二外国語教育における教育充実の可能性についての報告である。
A−5 ネットワークを活用した中国語教授法−動機づけのための一方策−
龍谷大学 金子眞也氏
第二外国語の中国語学習者を対象として、1)中国語圏のWeb購読、2)簡体字による電子メール送信、3)中国語によるBBSへの書き込み、4)台湾のデータベースで資料検索、5)簡体字によるHPの作成など、インターネット活用授業による教育効果について紹介された。
A−6 ワープロソフトのコメント・変更履歴機能を有効に用いた英作文の添削指導とアーカイブ化
東京国際大学 五十嵐義行氏
英作文にワープロの変更履歴機能やコメント機能などの校正支援機能を応用することにより、添削指導がアーカイブ化され提出ファイルの蓄積・管理が効率良く行え、資料的価値も高まり、学習教材としての活用度も増すなどが紹介された。
A−7 動画とテキストによる状況提示型語学教材の開発
大阪国際女子大学 | 福田真規夫氏、多田昌夫氏、山本 博氏 |
大阪国際女子短期大学 | 前川 武氏 |
Role Play手法が持つ様々な困難を解決するために、動画とテキストが同時に提示されたコンピュータ画面と対話を行い、その結果を録音する教材開発を行った事例で、短期間に多数の学習データを収集でき、教材効果の測定が可能となったと報告された。
A−8 WWWとデータベースを利用した統合CAIシステムの構築
福岡工業短期大学 | 史 一華氏 |
福岡工業大学 | 徐 海燕氏 |
情報系以外の先生でも容易に演習問題や補助教材を作成しやすくするために、WWWとデータベースを利用した統合CAIシステム構築事例で、「第2種情報処理技術者資格試験」、「工業英語検定試験」、「情報処理基礎I & II自動演習」などへの応用と評価について報告がなされた。
A−9 上智大学CALLプロジェクト(1)プロジェクト管理、運営、教材開発
上智大学 伊藤 潔氏、田中幸子氏
上智大学では外国語・地域研究関連領域教育のマルチメディア化のためのCALLプロジュクトを推進中である。プロジェクト立上げの経緯、プロジェクト運営や教材開発成果の概要、今後の推進課題についての報告がなされた。
A−10 上智大学CALLプロジェクト(2)フランス語聴解教材の開発
上智大学 原田早苗氏、室井幾世子氏、常盤僚子氏、前田泰成氏
リスニング能力は個人差が大きいため、学生への細やかな指導、丁寧なフィードバックを行えるような対話型マルチメディア聴解教材のCALL版TEMPO(1996年に出版された最新テキスト)の開発状況についての報告がなされた。
A−11 上智大学CALLプロジェクト(3)国際関係論講義のデジタル化実験
上智大学 田村恭久、大久保 成氏、蝋山道雄氏
「大学の知のあり方」の可能性の提起として、外国語学部で行われた専門科目講義をもとに、デジタル教材を開発した実験の成果とそのデジタル化の詳細(動画とMPEG1、板書とテキスト化、WWWとのリンクや、CD-ROMによる教材の配布方式など)についての報告がなされた。
A−12 Pascalプログラミングのためのマルチメディア教材の開発
東海大学 沖 眞氏、大塚志穂氏、田中啓夫氏、山本公一氏
学生がインターネットを通して、いつでもどこでも、WWWを利用してハイパーテキストの形で学習できるPascalプログラミングの自習用教育教材の開発事例と、学生による教材評価、並びに教育効果の発表が行われた。
A−13 外国接近学教材の開発
東京国際大学 桑原政則氏
現代認識の学である「外国接近学」の講義で活用しているインターネット教材の紹介と、教材の事後活用の有用性について、さらにフィールド(海外)での学生からの生の情報発信を取り込みながら、ホームページ(教材)を進化させる工夫についての紹介がなされた。
A−14 電子メール・メーリングリストによるレポート提出
湘南工科大学 長澤可也氏、櫻井勇良氏、水谷 光氏
ネットワークの双方向性を活用して、大人数の講義においても、学生同士が切磋琢磨して勉学できるような教育の実現の可能性(メーリングリストによるレポート提出、ニックネーム利用、自己評価など)と、その事例の紹介がなされた。
(文責:東海大学 高橋隆男、立正大学 山崎和海)
Bコース:情報基礎教育
B−1 社会科学系学部学生を対象とした問題解決型情報教育の実践例
龍谷大学 広岡博之氏
社会科学系学部における情報教育の実践例として、問題解決型情報リテラシー教育を提案され、教育内容の具体例が紹介された。コンピュータを利用した課題解決が学生の自発的意思決定を促す良いトレーニングであることが報告された。
B−2 岩手医科大学における情報リテラシー教育の導入と展開
岩手医科大学 高橋 敬氏
医学部・歯学部における情報リテラシー教育(情報科学・医用統計学)における教育方法および、教育開始前・開始後のアンケートによる調査結果が報告された。コンピュータ技術の単なる習得よりも、それを用いた思考力の養成に重点をおくべきとの主張がなされた。
B−3 仏教学教育におけるパソコン活用の現状と展望
身延山大学 関戸尭海氏
仏教系学部学生がパソコン技術を習得するメリットは、檀家管理や仏教文献のデータベースの利用などが挙げられるが、パソコンに関して知識のある学生と、まったくない学生との間のギャップが大きく、この分野に関連する適正なテキストや課題の必要性が主張された。
B−4 卒業生(武蔵野女子大学)が女子大(文学部一般教育)に求める情報教育
武蔵野女子大学 味村一樹氏、柘植健司氏、筧 陽氏、白澤秀剛氏
卒業生に対しアンケートを2年間実施し、学生時代に行われた情報教育の有効性と就職した職種の関連性を調査した。文学部卒業生であっても情報関連企業に就職するものが少なからずおり、情報処理全般や言語に関する基礎教育の要望があったことが強調された。
B−5 文学部におけるマルチメディア教育の現状と課題
龍谷大学 杉山善明氏、土井順一氏
従来のリテラシー教育の枠組みを越え、マルチメディア作品を学生がwebページに公開することを目的とする演習形式の講義について、その現状と課題が報告された。製作作品の完成度は高いが、指導の難しさ、高い学習意欲の必要性、著作権の問題などが指摘された。
B−6 マルチメディアを用いる教育と学習に対する大学生の意識に関する研究
甲南大学 岳 五一氏、王 暁明氏、浦木隆徳氏
マルチメディア教育と遠隔レポート提出システムの運用実験を行い、学生のマルチメディア学習に関する意識と利用現状の関係を主成分分析により分析した。カリキュラムや教育方法の改善により、マルチメディアに対する認知と関心の喚起が必要であると述べられた。
B−7 学生のメディア嗜好とコンピュータ・セキュリティ意識構造
大東文化大学 | 永田 清氏 |
東北文化学園大学 | 青木智子氏 |
立正大学 | 宮崎智絵氏、山下倫範氏、友永昌治氏 |
文科系学生のコンピュータセキュリティに関する意識調査をもとに、実生活におけるメディア嗜好とセキュリティに関する意識構造との関連について主成分分析を行った。インターネットへの参加嗜好が強いグループは、セキュリティに関して高い意識をもつことが報告された。
B−8 情報教育における学生の対ネットワーク不安意識について
立正大学 | 山下倫範氏、友永昌治氏、宮崎智絵氏、細谷順二氏 |
大東文化大学 | 永田 清氏 |
東北文化学園大学 | 河本 進氏、青木智子氏 |
武蔵野短期大学 | 角田 牧氏、木川 裕氏 |
城西大学 | 渡邉 透氏 |
東海大学 | 狩野正信氏 |
理科系・文科系学生のコンピュータネットワークに対する不安意識の調査を行い、電子メール利用経験年数、および理科系・文科系との関連性を因子分析により分析した。文科系学生は利用経験が長くても、理科系の1年未満利用の学生に似た因子構造が表れることが報告された。
B−9 Webコンテンツ作成を通じたプレゼンテーション重視の教育について
道都大学短期大学部 野口光孝氏、由水 伸氏
情報の活用能力と提示能力を育成するために、2年次「情報応用演習」でWebコンテンツの作成や操作方法の教育を実施し、企画書ができた段階で個別の面談指導を行うことで、表現方法の改善に効果をあげていることが報告された。
B−10 HTMLオンライン演習マニュアル利用の試み
市邨学園短期大学 武田康雄氏
英語教育の中で、コンピュータグラフィックスに英語俳句を加えさせて自己表現の演習を行っている。演習マニュアルは、HTML化して担当者負担を軽減したが、効果を上げるためにアニメーション等が必要としていると紹介がなされた。
B−11 求められているPCスキル
姫路日ノ本短期大学 杉田乾伍氏
英米文化学科と幼児教育科の学生の情報教育に際し、四つのリテラシー修得目標(ビジネス、コミュニケーション、コンピュータ、試行)を設定し、インターネット情報調査や幼稚園便りの作成で学習意欲を促していることが紹介がされた。
B−12 アプリケーションソフトを用いたデータベース基礎教育
大阪国際女子短期大学 小田野郁子氏、谷口るり子氏
情報ビジネスコースのデータベース教育(MS-Access使用)において、操作と設計を分けた学習への改善や、ステップごとに詳細な説明を付加したテキスト開発により、進度に応じた個別指導へ対応が可能となっていることが報告された。
B−13 学生の情報教育ニーズへの対処方法に関する一考察
東洋大学 内木哲也氏、児玉俊介氏
コンピュータリテラシーの履修希望者急増に対処して講習会(入門、アプリケーション)を開いたが、学生の関心は単位取得と就職活動でのWeb利用にあるため、今後他の正規科目でも情報環境活用の動機付けが必要と認識されたことが報告された。
B−14 情報処理教育の評価と課題‐2年間の追跡調査を踏まえて
武蔵工業大学 中村雅子氏、武山政直氏、山田豊通氏、厳 網林氏、横井利彰氏
学生の情報教育観等をパネル調査で時系列に追跡調査した結果、1年次必修の情報教育科目での高い満足感が2年次以降科目で減少したが、これは専門科目との連携状況に関連し、社会科学系学部等での継続的課題と考えられると報告された。
(文責:早稲田大学 船木由喜彦、武蔵工業大学 横井利彰)
Cコース:情報環境
C−1 ギガスイッチによる学内LANの構築
大阪国際大学 太田忠一氏、平野和義氏、西川明彦氏
10Mbpsの学内LANを活用しているが、今後の教材のマルチメディア化に備えてギガビットイーサネットを導入した。2Gbps、全二重構成のギガスイッチを幹線に用い、従来ネットワークとの整合性を考慮したことが紹介された。
C−2 Linux環境本格導入への挑戦
京都産業大学 大本英徹氏
社会科学系向けにWindowsNT、自然科学系にUnixが利用できるデュアルシステムを構築した。UNIXとしてはLinuxを用い、数式処理、統合化ソフトなどを導入している。Linux系はクラスタ型の並列計算機としても稼働することが紹介された。
C−3 Webコンピューティングによる創造的学習環境の開発
−自然言語処理を利用した記述問題評価へのアプローチ−
大阪産業大学 長坂悦敬氏
Webを利用した教材について記述問題の扱いを検討し、評価システムを構築した。概念情報のマイニング技術を応用し、文章の主旨に添った検索・分類を行い、模範解答との関連度を定量的に表すことで、記述問題の解答を評価するとの事例が紹介された。
C−4 用途別WWWサーバーの構築と運用
早稲田大学 安藤弘隆氏
当初センターで管理・運用していたWWWサーバを、教員用、ゼミ用、事務用など、目的別のサーバに分け、それぞれ別の部門で運用するようにした。利用形態に従って、それぞれ必要なセキュリティ対策をとっていることが紹介された。
C−5 学生自身によるWEBを利用した履修登録
園田学園女子大学 谷口一男氏、吉末和也氏、宇治典貞氏
事務システム合理化の一環としてWebサーバを利用し、履修登録を学生に行わせるシステムを構築した。新入生を対象に、基礎ゼミの時間でPC使用法の授業とあわせて登録させる。以前のOCR方式に比べ、登録・確認が短縮されたことが報告された。
C−6 衛星通信遠隔授業実験報告−医学・栄養学分野における応用−
女子栄養大学 | 小川禮子氏、五明紀春氏 |
愛知医科大学 | 安藤裕明氏、宮田伸樹氏 |
生活習慣病をテーマに、栄養学と医学の立場からシンポジウム形式で遠隔講義を行い、事前調整やシナリオ作成は最小限とし、双方で通常のスライド・ビデオを用いた講義を行った。異なる学部の授業という内容面で高い評価を得たことが報告された。
C−7 バーチャル指向の遠隔授業
同志社大学 宮崎 耕氏
大人数講義の問題を解決するため、受講生を複数の教室に分け、それぞれにテレビ放送を行う形の遠隔授業を提案している。教員から学生へは高品質のメディア、逆方向は簡易型のテレビ会議システムを使うことで双方向性を確保している。
C−8 遠隔授業による大学間の国際コラボレーションの試み
文教大学 真鍋龍太郎氏
タイとフィリピンとを結び、3大学共同の衛星講義を98年度後期に12回行った。日本からテレビ形式で送信し、受信校からの質問等は電話によらざるを得なかったが、国際交流の点では評価され、双方向化などについては今後改善したい旨、報告がなされた。
C−9 教育用システムにおける標準電子メーラーの導入事例とその課題
−「ポケットメーラー」の導入をめぐって−
日本大学 毒島雄二氏、小林貴之氏、谷口郁生氏
インターネットの普及により、学内において受信メール等を個人的に独立した電子メールシステムとして、自由に利用できる環境を学生が要求してくるが、この要求を満足するのは難しい。このため、POPへの対応、操作の容易性、既存システムの有効利用等いくつかの条件を満足することを考慮して、フロッピーディスク1枚で活用できる電子メーラー「ポケットメーラー」の導入について検討し、その成果、問題点、今後の課題等について報告された。
C−10 エクストラネット利用による情報活用能力育成の環境整備
−ネットワークセキュリティとコンピュータ環境−
高千穂商科大学 中山良一氏
大学内のネットワークを学生宅の個々のPCから利用できるネットワーククライアント形式のVPNを導入するための事例が紹介された。学内から学外への接続性を確保するには、ルータにより動的にアドレス変換を行って接続するが、その逆はセキュリティを考慮すると困難な問題が多い。VPNで使われる通信技術として、SSL、PPTP(Point to Point Tunneling Protocol)を採用することで実現したことが報告された。
C−11 キャンパスネットワークにおける各種電子メールシステムの比較検討
愛知医科大学 安藤裕明氏、宮田伸樹氏
キャンパス内で活用される各種の電子メールシステムについて、比較検討し教育環境に適したシステムを選択する事例が紹介された。比較検討した電子メールシステムは5種類で、1)UNIX環境でのE-mail、2)POP3クライアント+フロッピーのE-mail、3)IMAP4クライアントによるE-mail、4)POP3クライアント+ネットワークドライブでのE-mail、5)WebベースのE-mailである。最終的にはWebをベースとして電子メール環境を採用したと報告された。
C−12 ユーザーインターフェイスを重視したマルチメディア教室の整備
武庫川女子大学 濱谷英次氏
マルチメディア教室の環境を整備拡張は、多くの大学で経験するところである。ここでは、徹底的に学内の使用状況を踏まえて整備拡張を実施され、特に、次のようなマルチメディア操作卓の設計仕様コンセプトを作成したことが紹介された。1)汎用性と高度利用の兼ね合い、2)将来の発展性の確保、3)保有資料を考慮した機器の選択、4)機器の誤操作の防止、5)提示の補助機能の強化、6)ネットワーク機能の組み込み、7)沿革授業への対応、8)サポート機能。
C−13 マルチメディア教育環境の構築
大阪電気通信大学 早野秀樹氏、伏木和人氏、今井久雄氏、西木 毅氏、対馬勝英氏
情報教育・情報処理教育設備の整備の一環として、マルチメディア教育環境を認知科学に基づいて構築された事例を紹介された。教師の提示力をサポートするために、既存のハードウェアの組み合わせだけでなく、情報教育、コンピュータリテラシー、メディアリテラシー等の多義にわたる要求に答えるためのツールを開発したことに特徴がある。代表的なツールとして「送出画面保存システム」があり、種々の教授戦略に活用されているとのことであった。
C−14 PC Unixを利用した小規模教育用サーバの構築
千葉経済大学短期大学部 江上邦博氏
情報教育環境の整備拡張のための情報投資は、大学の全予算に占める割合を年々高めていることを考慮して、安価に小規模教育用サーバを構築するための方策について発表がなされた。具体的には、Linuxを導入し、余ったハードウェアで組み上げたPC上にサーバ環境を構築したものである。問題点としては、構築した教員への負担がまだ大きいことや、サポート技術を持つエンドユーザの増加の必要性等、Linuxの普及に時間を要していることが報告された。
C−15 広島工大の新PC教室システムについて
広島工業大学 小関祐二氏、加藤伸吾氏、松永七三男氏、殿塚 勲氏
情報処理機器の進歩は著しく、管理者はその管理・運営とリプレースに悩まされる。本事例ではPC 240台を同時にリプレースするにあたり、運用管理する立場からのPC教室システムについて紹介がなされた。特に次のコンセプトに基づいていることが報告された。
1)情報処理技術の進歩を最大限に取り込み、システム性能の強化図る。2)自動環境復旧機能を導入して円滑な授業運営を行う。3)UNIXをファイルサーバとしてユーザ認証の一元管理、対障害機能の向上、資源の共有化を図る。
C−16 学科専用コンピュータの運用とその効用
九州産業大学 藤田 毅氏、牧元美和子氏、本木 実氏
情報教育の設備環境を管理運営する組織として、一般的には全学共同利用施設として情報処理センター等の設置が一般的である。しかし、センターの組織の拡大や利用者の増大等により、そのサービスの限界が生じてきている。本事例では、このような状況の解決策として、学科内だけで独自に運用する100台近い教育用コンピュータを導入し、学科内運用での人材不足等を考慮し、その管理運営には単純化、自動化をするよう工夫されたことが紹介された。
(湘南工科大学 後藤宣之、拓殖大学 高橋敏之)
Dコース:教育支援
D−1 PLDを使用したディジタル回路実験
湘北短期大学 小田井圭氏、小松恵一氏
これまでICなどの論理回路部品を用いて行っていたディジタル回路実験を、プログラムが書き込めるデバイスを用いて、ここの素子をいじらずに行う実験にした。これでプログラムとハードの関係も理解させることができるとの報告であった。
D−2 生命科学分野におけるMathemtica利用例
埼玉医科大学 | 勝浦一雄氏 |
東京薬科大学 | 鷲田正和氏、大坪憲司氏、伊藤孝男氏、林 昌樹氏 |
Mathematicaを数学と物理の例題で使わせて理解させた上で、神経伝導のモデルの方程式や、セルオートマトンを使用した生態系のシミュレーションを用いた森林火災のシミュレーションの計算を行わせた事例を紹介された。
D−3 FA実験工場システムの操作性を向上するためのフロアモニターの構築
中央大学 諸 潔氏、辻田勇二氏、宇佐美博氏、井原 透氏
工作機械の自動化された実習工場のシステムの中で、工場のフロアの情報が把握し難いという難点を、機械の加工作業の情報を取り出してフロアの情報を実時間で把握し表示する監視モニターで解決した事例が紹介された。
D−4 物理実験としてのコンピュータ教材作成実習
東海大学 佐藤 実氏
教職課程科目の物理実験で、学生に中学の理科の教科書を見せてテーマを選ばせ、それを教えるための教材をHypercardあるいはPowerPointなどで提示するよう作成させる授業の報告がなされた。学生が自主的に実験方法や道具を作り出す効果が示された。
D−5 オンラインビジネスゲームによる経営基礎教育の試み
多摩大学 斎藤裕美氏
経営情報学科の1年生に経営の疑似体験をさせるために作ったビジネスゲームについて紹介された。学生はグループで会社を経営すると同時に、個人としては消費者になり、会社が提供する商品を買って会社を評価したり、会社が業種の転換をできるなど、従来のゲームにない工夫をしていることが報告された。
D−6 ネットワークを利用した実験・演習講義支援システム利用の効果
日本工業大学 青木 収氏
実験・演習講義支援システム(WELSS)を、CADを使用してCPU設計を行う「論理設計実習」に3年間適用した事例を紹介された。運営面での教員の負担軽減の成果に加え、学生へのアンケート調査を通じて、学生の学習意欲を喚起できる効果があったことを確認した旨、報告がなされた。
D−7 講義系科目に対する自主学習支援システムの開発とその効果
大谷女子短期大学 近藤篤俊氏
「情報科学」という講義科目を支援する目的で、学内LANに接続されるPCと研究室サーバを利用した自主学習支援システムを開発し、半年間試験運用した事例が紹介され、一人あたりのアクセス数が多く、メールでの質問を講義で展開するなどの成果を得たことが報告された。
D−8 学生主体のゼミ改革への体系的アプローチ
−情報技術の創造的活用を中心として−
京都産業大学 山本憲司氏
ゼミ教育を学生が主体者であるという「学習学」の観点から、学生が自主的に運営することを通じて、論理的思考力の育成を図っている。学生自身の手で、電子掲示板や電子メール、HPなどを活用し、ゼミを運営するためのシステムを構築したことが報告された。
D−9 電子会議室を利用したインターネット利用の問題についての議論の実践
龍谷大学 寺尾洋子氏
1年生100名を対象に、電子掲示板利用の課題の一つとして、「サイバーストーカー」について意見を発表し、さらにそれらに対するコメントを書き込ませるという事例を紹介された。インターネットでも、現実社会と同じ問題点があることを認識させることができたとの報告がなされた。
D−10 全学生開放実習室における問題点とツールプログラムの事例
尚絅女学院短期大学 木村 清氏
コンピュータ実習室を全学生に開放するにあたり、トラブルに対処するため、メール起動プログラムやアラームプログラムを開発し、ログを解析した。また縮小印刷システムを導入することによって、約30%の効果がみられた。
D−11 試験問題作成、採点、自己学習システム
東京女子医大学 田村光司氏
医師国家試験約7,000問をデータベース化し、その中から580問を出題、詳細な自己評価書を作成し、自己学習を支援するシステムを開発、運用している事例が紹介された。日々革新の行われている医療教育に対応するためには、今後もシステムを自主開発していく必要があることが認識された。
D−12 実践形情報処理教育の場としての地域情報化活動
−大学との連携と地域イントラネットの活用
武蔵工業大学 山田豊通氏
キャンパスに近隣する綱島モール商店街から、Webサイトの立ち上げに協力する要請があり、情報リテラシー学習アシスタント6名を含む8名のチームで設立方針を立案、各店舗への取材を経て、2か月でホームページを作成、現在運用している事例が紹介された。
D−13 中高年向けインターネット講習会を利用したリテラシー教育(続)
東京家政学院短期大学 | 土屋富雄氏 |
東京家政学筑波女子大学 | 平木茂子氏 |
大学祭や公開講座、あるいはボランティアで開催している中高年向けインターネット講習会で、受講者1名ごとに学生アシスタントを1名配置して、学生のリテラシー教育を行った事例を紹介された。受講者のみならず、学生にとっても高齢者とのふれあいを通じて、高い学習効果がみられたとの報告がなされた。
D−14 玉川学園・玉川大学総合ホームページの運営と推進
玉川大学 荻野千冬氏
96年4月に開設した大学のHPについて、2001年3月までの5年間を四つのステップに分け、推進を図っており、現在は、内容の充実と学外への広報活動の充実(Step3)と、教育実践準備(Step4)に積極的に取り組んでいることが報告された。
(文責: | 文教大学 | 真鍋龍太郎 |
法政大学 | 宮脇典彦) |
郵政省通信政策局技術政策課課長補佐
荻原 直彦氏
情報通信分野での日本の技術力強化を推進する施策の一つとして、通信・放送機構が整備した同ネットワークの概要と研究利用について紹介していただいた。これは全国45か所を結ぶ超高速光通信網と共同利用型研究開発施設およびリサーチセンターから成り、「次世代ネットワーク推進会議」による地域との連携、および利活用研究開発制度(公募研究)により、大学、研究機関、企業等の研究を振興しており、9月初頭で40件以上の応募があることが紹介された。
「慶應義塾大学でのモバイル活用実験」
慶應義塾大学ITC本部助手 崔 梗ろく 氏
無線LAN(WaveLAN)カードを持ち、NTにオフィスソフト、メーラ、ブラウザなどをインストールした30台のノートPC貸出の実験を行った。図書館窓口で貸し出し、館内4か所の無線LANアクセスポイントを利用し、DHCPによる動的構成をとった。主な対象は1−2年生で、利用状況についてのアンケートをまとめた。月ごとの利用回数、利用時間とも学期末に集中する傾向がみられた。PCリソース不足という面での肯定的意見とともに、PCの能力と利用の困難さからの否定的意見があった。セキュリティの確保、無線と情報コンセントの使い分けなどの問題がある。
「モバイルキャンパスの実現を目指して」
早稲田大学メディアネットワークセンター副所長
筧 捷彦氏
学内基幹ネットワークや自宅からのダイヤルアップ接続に加え、さらなるネットワークサービスの拡大のため、モバイル環境の整備を行った。内容はキャンパス内フリーアクセスを考慮した、61台の基地局を持つPHS自営網の構築と、掲示や通知などの周知情報をWebで流すためのコンテンツ提供システムの構築・運用である。375名の学生にモニタを依頼して、後期約4か月間のうち4日についてアクセス分布、アクセス経路、利用サービス内容などのデータを取った。PHSアクセスは休日等学内施設が利用できない場合に多く、講義期間中と試験期間中の差も見られるなど、今後のモバイル環境整備に有用なデータが得られた。
「甲南大学におけるモバイル環境」
甲南大学情報教育研究センター助教授
鳩貝 耕一氏
4年計画で基幹LANに無線LANを加えたハイブリッドシステムを構築している。3年目でアクセスポイント140か所、ノートPCの端末400台の規模になり、ネットワークのスピードも2Mbpsから8Mbpsに向上した。モバイル環境に即したアプリケーションやコンテンツの整備も進めており、遠隔レポートシステム、遠隔データベース検索システム、遠隔コミュニケーション支援システム、マルチメディア遠隔利用・編集システムなどの授業支援システム、マルチメディア教育支援制度、マルチメディア教育コンテンツ作成プロジェクト、キャンパスライフ支援システムなどの取り組みを進めている。
1.「教育環境の現状を考える」
東京経済大学経営学部教授 | 佐藤 修氏 |
慶應義塾大学総合政策学部長 | 鵜野 公郎氏 |
立正大学経営学部教授 | 山崎 和海氏 |
技術性を超えた学習者主体の学習空間作りの課題と、今後の大学教育への取り組み方についてパネルディスカッションを行った。ネットワーク化の進展によるグローバル化・ボーダレス化の進展と、知的資産のWWW化や授業改革について、会場からの積極的な参加を得た討論会となった。
セッションを始めるに際して、まず佐藤氏より、学生に魅力ある授業を実現するための授業改革の一環としての「教材デジタル化の現状と問題点」について、教材開発側面、並びに教材利用側面からの課題提起がなされた。
続いて、鵜野氏より慶應義塾大学総合政策学部の数々の実例を踏まえながら、「デジタル・キャンパスと人文社会科学系カリキュラム」の現状と近未来についての課題提起がなされた。
その後、山崎氏の司会のもと会場との熱気に包まれたパネル討議がなされた。討議を通して、学習者である学生や教育者間との「双方向コミュニケーション」の重要性とともに、教員の新たな資質として、教育の場での「プロデュース能力」や「オルガナイズ能力」が求められてきている現状などが討議された。
なお、会場で進められた議論を箇条書きに示すと、以下のような項目に整理することができよう。
2.「教育分野におけるJava Computing」
サン・マイクロシステムズ株式会社
製品事業統括本部ワークグループサーバー事業部プロダクトスペシャリスト
岩野 秀仁氏
情報環境がネットワーク上での情報サービス重視へと向かう中で、今後重要な役割を担うJava技術の教育現場での活用について紹介していただいた。学内情報環境では、情報教育と情報サービスのコスト(ハード・ソフト、管理等)を削減しつつ、利用者の要望に合った環境の提供に有効であり、すでにIstanbul Technical Universityや東京大学情報基盤センターで活用されている。また、非商用目的でのSolaris OSライセンスや基本情報ツールStar Officeの無償提供等の支援環境や、新情報基盤の一つであるJini(TM)により「誰でも、どこでも、いつでも、どれででも」利用できる情報サービス環境が紹介された。
「キャンパスへのWindows NT、Linux、FreeBSDの活用」
京都産業大学計算機センター教育研究システム課長
坪内 伸夫氏
京都産業大学では1999年3月に新校舎の情報処理教室に約600台のパソコンを導入した。
その際、全コンピュータのOSとしてWindowsNTとLinuxをデュアルブートできるようにするとともに、サーバのOSにFreeBSDを活用するなどして、オープンソースを積極的に利用したシステムを構築している。全コンピュータはPC AT互換機で、Linux/NTのデュアルブート、高性能ネットワーク装置導入による600台の仮想並列コンピュータの実現、さらに1名による運用・管理の実現などで、導入コストやメンテナンスコストの削減も実現できるなど、情報処理教育現場でのオープンソースを利用したシステムの現状と、その有効性などについて具体的な紹介が行われた。
私情協・ネットワーク研究委員会委員
流通経済大学流通情報学部教授 林 英輔氏
インターネット環境の急速な変化と普及は、トラフィックの増大を促している。その解決策として、ネットワーク環境を取り巻く強化する必要性があり、そのポイントとして、1)LAN、2)アクセス網、3)バックボーン、4)回線利用コストの負担、5)トラフィックの監視と増大への対応等があげられる。その対応の基本的な考え方としては、規制緩和と技術革新の相乗効果により、新しいサービス並びに技術傾向を正確に読みとる必要がある。混沌としていたこれらの傾向は、今年になってIPv6への対応が始まり、その傾向が読み取れるようになった。今後は、技術革新の著しい高速ルータや高速スイッチ等を考慮して、大学ネットワークのあり方の再検討の時期であると述べられた。
(文責: | 武蔵工業大学 | 横井利彰 |
湘南工科大学 | 後藤宣之、立正大学 山崎和海 | |
東海大学 | 高橋隆男、拓殖大学 高橋敏之) |