私情協ニュース3
今年度の事務システム研修会は、会場の都合によりA日程(平成11年9月16日−18日)とB日程(9月27日−29日)の2回に分けて、静岡県浜松のグランドホテル浜松にて開催された。
参加者数は129大学・6短大・賛助会員10社から360名(A日程151名、B日程209名)であった。
研修では、業務を横断して共通するテーマあるいは時代の要請に沿ったテーマをA日程に、また、学内の基幹業務システムについてのテーマをB日程に設定し、それぞれのテーマ別グループに分かれて事例発表やグループ討議が行われた。また、A、B日程それぞれの初日に「大学再生と業務改革」と題したパネルディスカッションを行った他、B日程では、青山学院大学による自動証明書発行システムの実機展示とデモンストレーション、企業によるシラバスデータベースシステムのプレゼンテーションが行われた。
(11大学・賛助会員3社 15名)
これまで大学の戦略的情報化計画は、主に学内の合理化や省力化といった改革のために情報化を行ってきたが、これからは他大学との競争に勝ち、大学冬の時代といわれる現代を生き抜くための情報化が戦略となる。単に事務システムの問題ではなく、教育・研究環境も含めた戦略的情報化計画を推進していく必要がある。
本コースでは、大学が抱える問題は多く解決も困難であるが、現状のままでは情報化計画を進めることはできないという認識に立ち、各大学の問題点を参加者全員で討論し、戦略的情報化計画がなぜ進まないのかについて問題意識を持ち、戦略的情報化計画の必要性を理論的に説明できることを目指した。
参加者は所属大学の規模や立地条件(都市、地方)など、さまざまな環境から集まり、充実した討議を行った。
(15大学・賛助会員5社 22名)
事務システムの再構築、あるいは業務改革に取り組むにあたり、なぜ統合化が必要なのかという観点から議論した。第14回センタ部門研修会における事務支援コースの報告資料、およびオブジェクト指向の一方法であるデータ中心型アプローチ(DOA: Data Oriented Approach )の考え方について紹介があり、セキュリティ、情報の公開、データウェアハウス、EUC、研修といったそれぞれのサブテーマについて討議を行った。正規化されたデータベースを構築し、EUC推進のための職員研修のあり方等について、共通の認識として確認された。また、今後、メーリングリスト等を活用して、情報の共有、分散化・統合化などの分野について情報交換を行うことを確認した。
(12大学・賛助会員2社 16名)
早稲田大学、阪南大学、関西大学の3大学と(株)日立製作所、コンパック(株)の賛助会員2社の事例発表を参考にして、組織革命としてのグループウェアの役割や、導入・普及・推進への課題、システム運用管理上の課題について意見交換を行い、今後の大学における情報共有とコラボレーションのあり方を考えた。グループウェアをまだ導入していない大学や導入後間もない大学、また、廃止した大学など情報事情も多岐にわたっていたが、事例発表をもとに積極的な意見交換が行われた。
(16大学・賛助会員2社 19名)
大学における学内LANを活用した新たな事務情報化の取り組みについて、4大学の事例発表を問題提起として、大学改革(業務改革)を進める上でのC/S化の位置づけや方向性を中心に討議し、さらに、事務システム部門の今後のあり方にまで話題が及んだ。また、C/S化によって発生するユーザーサポート、要員育成、アウトソーシング、処理上の課題など、運用上の諸問題とその解決策についても、意見交換や情報交換を行った。いずれにしても、C/S化は目的ではなく方法論に過ぎないことから、業務改革に対して明確なポリシーと戦略を持ちつつ進めることが重要であることを確認した。
(33大学・2短大・賛助会員1社 38名)
ほとんどの大学において、学園の正式な広報の位置づけとなったホームページについて、今年度は特に「インタラクティブなWeb広報」をメインテーマにあげ、情報を発信するだけでなく、双方向性を持ったホームページづくりの可能性や課題、フィードバックされた情報の活用などについて討議を行った。ホームページ公開とは、大学の理念に基づいた意思を表明するものであるが、記事の作成や全体の運用についてはまだまだ課題が多く、ゴールのないシステムであるといえる。すぐに成果の表れないものであるが、ホームページ運用に携わる一人一人の熱意が「開かれた大学づくり」を進めていくということを確認した。
(35大学・2短大・賛助会員1社 41名)
「少子化の影響と経理・財務システムの戦略的利用を目指して」をメインテーマとし、日本の大学がこれから取り組もうとしている全学統一システムの事例発表を中心に討議を深めた。
多くの大学がC/S方式で運用している中、データの活用と情報共有・情報開示等について情報交換を行ったが、特に電子伝票・電子帳簿など情報の電子化に対する今後の取り組み方と問題点については、各大学とも関心の高さが伺われた。
しかし、システムの戦略的利用については、各大学とも関心が薄く、今後の課題として再度議論していく必要があることを認識した。
(13大学・賛助会員3社 18名)
18歳人口の減少に加え長引く不況により、広報活動をはじめとした入試制度の見直しを促し、複雑な入学業務システムを構築することを余儀なくされている。他方、大学経営上は入学業務の低コスト化を要求され、入試業務の合理化や合理的入学業務システムの構築と円滑な運用が求められている。
本グループでは、このように複雑化した入学業務システムの現状と問題点について、3大学の事例発表と事前レポートにより討議検討し、多様化するニーズにも柔軟に対応できる合理的な入学業務システムのあり方について模索検討した。また、今年度入試においては、処理ミスなどさまざまな報道がなされたため、システムのバグおよびセキュリティ対策についても活発に討議を行った。
(37大学1短大・賛助会員3社 47名)
本グループは、シラバスデータベースの形態や、構築・開示システムの理想形と現状を抱える時間割作成等に関する教学事務の関わりを討議の中心に置いた。参加者からの事例発表と質疑応答の後、いくつかのサブテーマを話し合う形で進められ、討議は、シラバスデータベースの情報開示から発展して、情報のあり方や伝達の方法など、教務事務の情報化の目標や職員として学生とどのように関わるのかについても触れる内容となった。
3日間の討議を終え、これまでのシラバスに新たに教育支援のツールという視点が加わったとともに、シラバスデータベースを通じて、教員・職員が一体となって学生に支援していくという明確な回答をそれぞれ持ち帰ることができた。
(35大学・賛助会員2社 43名)
昨年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策」を踏まえて、今後の履修登録システムおよび成績管理システムにどのように対応するべきかを中心に、1)カリキュラム多様化への対応、2)学生の立場からの分かり易さ、3)短期間での履修科目確定、4)最少コストでの運用、5)業務ノウハウの容易な継承、などを切り口として討議を行った。参加者には事前に所属大学システムの説明資料の準備を依頼していたため、各自が自大学の状況を把握した上での活発な討議が行えた。サブテーマとして用意した1)履修登録システムの現状と問題点、2)成績管理システムの現状と問題点、3)教務システムにおけるネットワーク利用などについても、問題点の抽出と対応策を検討した。
(11大学・1短大 14名)
本テーマは今年度初めて設定された。事前に参加者全員から集めた各大学の資格取得関連システムの内容を参考にしながら、4大学による事例紹介を行った。討議は、日常の業務内容から日本の資格・免許状のあり方にまでわたり、広範囲な意見交換が行われた。教職免許状についても、介護体験や実習先との対応、申請方法をはじめ、各大学の地域差によりさまざまな業務手法がとられていることが浮き彫りとなった。
今後はメーリングリスト等を活用して情報交換を進めていくことを確認した。
(38大学・1短大・賛助会員2社 44名)
就職協定の廃止、経済の停滞という社会的情勢に加え、インターネットによるリクルート情報の交換が拡大する環境の中で、各大学の就職支援はどのように情報環境を整え、業務を展開すべきかをねらいとして討議を進めた。
情報処理部門からの参加者は少なく、ほとんどが就職業務担当者となっていたが、インターネットや情報環境に関する経験が多く、活発な事例紹介や課題提起が行われた。
就職担当部門の職員は、卒業生を社会に送り出す立場から、大学の顔としての職務意識が高く、インターネットで流通するマスメディア的な情報の把握は当然として、むしろ、各大学独自の情報収集や学生への提供ができるよう情報環境を工夫することこそ、本来の目標であるという方向に議論が収束した。
(27大学・賛助会員1社 32名)
大学図書館は、激動する学術情報サービス技術に対応することが求められている。今回は、海外の図書館システムの導入を行った早稲田大学から事例紹介いただきながら、これからの図書館システムのあり方を討議した。多様化する学術情報の提供にあたり、CD-ROM、電子ジャーナルの提供について意見交換をし、洋雑誌の価格高騰問題に伴う雑誌の削減問題や、電子ジャーナルの導入問題について討議した。また、ネットワーク情報の網羅的な活用については、実践女子大学から報告をいただいた。
大学図書館は、図書、雑誌の利用以外に、急速に電子情報の提供を行うことを求められており、新しい情報資源の確保や環境の整備など、長期的なビジョンや継続的な計画をもって学術情報サービスシステムに対応していくことの重要性を確認した。
( 8大学・賛助会員1社 10名)
学生の保健管理業務は、ややもすると教育の付随的業務ととられがちである。しかし、現在、学生の健康を損なう要因が増大し、心身への支援が重要な問題となってきている。このことから、「保健情報の合理的な管理と個々人への効果的な生活支援を目指して」をメインテーマとし、参加大学の事例紹介を中心に討議が行われた。特に、健康診断証明書の自動発行や情報の共有、システム開発への取り組み方といったことに関心が集まった。また、参加者は保健管理業務の実務者が多く、日頃感じているシステム上の問題点等について、率直な意見が出された。
討議内容をふまえて、自学に適した独自システムの開発を行うことの必要性が確認された。
(文責:研修運営委員会)