巻頭言

情報教育を進めるにあたって

大谷 哲夫(駒澤大学学長)


 駒澤大学は、今から410年さかのぼる文禄元年(1592)、江戸駿河台の吉祥寺に曹洞禅と漢学参究を目的に開かれた学林を前身としております。その後、明治15年曹洞宗大学専門本校と改称し、これを創立年として今年10月には、創立120周年を迎えます。そこで本学では開校120周年にあたり校舎等の建設事業、さらに記念式典・国際フォーラム・学生シンポジウム・国際シンポジウムを計画し準備を進めております。
 この中の国際シンポジウムでは、駒沢会場・津会場・神戸会場・アメリカシアトル会場とを結んだ、多地点接続テレビ会議を開催し、遠隔授業の実験の一つとして実施したいと思い準備を進めております。
 21世紀の大学には、教育活動のグローバル化と社会への知的貢献が求められています。本学では、教育研究活動における情報化推進の一環として、e-Learningの導入を支援し、教育の現場の実情に即したシステムの導入とサポートを実現できるよう「総合情報センター」でプロジェクトを展開しております。これは教員が教材や授業の記録をサーバ上に置き、ネットワークを利用して、学生に提供するものが一般的ですが、その他にもテレビ会議システムの双方向性を利用した遠隔授業や、教室や自宅で受けられるオンラインテスト等を指しています。
 このe-Learningを実施するにあたり、次のような様々な問題が起きています。

1) 対面式授業との融合をいかに実現するか。
2) オンラインで自習用テスト教材をいかに学生に提供するか。
3) 複数システムの競合をいかになくすか。
4) 学生の出欠管理の煩雑さをいかになくすか。
5) 学生がインターネット上の情報を利用したレポートを作成した場合の指導をどうするか。
6) 本学にない授業をいかに取り入れるか。
7) 遠隔授業の実施に伴う、時間調整の問題。
8) 授業教材の著作権の問題。
9) 教員の教材作成のための時間・設備・技術サポートの問題。
 以上のような解決すべきことが多々ありますが、2003年からは高校の普通課程で「情報基礎」の教育が始まり、2006年には情報リテラシー教育を受けた学生が大学に入学し、学生の技術的なばらつきが徐々に解消されるとは思いますが、本学の「総合情報センター」においてこれらの問題について真剣に取り組み解決していかなければならないと思います。
 本学の図書館には、400年間にわたる学生たちが残した教科書、参考書、ノートの類等が数多く残されています。それらの本版(本)や書写された教科書類には何人もの書入れがあり、またノートは黒・赤の筆で隙間なく書き込まれています。それらを見ますと、現在の学生の勉強法とは、隔世の感があります。
 本学の情報設備や支援体制にはまだ不十分な点がありますが、今後の情報教育設備として一層の力を入れていきたいと思います。


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