私情協ニュース2

第10回短期大学部門検討会議開催される



 第10回短期大学部門検討会議は、平成14年6月22日(土)に関西学院大学において開催された。


1.情報機器活用教育の事例紹介

 5短期大学から「短期大学教育の情報化に関連した情報機器を活用した教育の展開例」について紹介があった。


(1)「コンピュータを利用した英語教育−インターネットと学内LANの活用−」
東海大学短期大学部 岡田 礼子氏

 理数系の学科で英語への関心が少ない学生が多い環境のもとで、楽しんで意欲を持って学習に参加できるように、PCを使って英語でのコミュニケーションを中心とした教育を行っている。PCの基本操作は入学直後に習得させている。LANの利用はメールWebサイト共有フォルダ(先生フォルダ、T:)が中心である。メールは英文で送受信し、励ましと指導を与えている。共有フォルダには担当者フォルダ/科目フォルダがあり、教材提供、毎週の課題、レポート提出に利用している。また、英文の音声ファイルを作成提出させているほか、KEY PALで実際の英語を肌で感じさせている。Webページの利用では易しい英文のサイト、時事関連のサイト、クイズのサイトなどを紹介し利用させているほか、様々な情報の取得にも利用している。これらの結果、自習などが増え、学習に好ましい結果をあげている。


(2)「インターネットで『経済学』関連の講義を補完−Webサイトへの教材提示の効果と今後の課題−」
鈴峯女子短期大学 山中 逸郎氏

 基礎科目の経済学をはじめ教養学科の経済・経営関連の講義を担当している。これらの講義における情報機器などの活用は、平成10年に学生向けWebを連絡用、講義の補足等のために開設し、授業で使ったPowerPointや資料、講義内容に関連したトピックなどを掲示し始めた。10年度より、証券会社が実施しているバーチャル株式投資ゲームを用い、株式取引から経済現象を理解させるようにした。12年度からは、PC画面を投影するようになり、現在はPowerPoint教材や企業サイトなどを授業で提示している。講義では大きな流れはPowerPointで説明し、詳細は黒板を用いている。経済情報や情報機器を複合的に何に使うかというアイディアを学生に知ってほしいという考えで進めている。


(3)Webサイトを利用しての国語学からのアプローチとその実践−大学演習講義における実情報告と今後の取り組み方」
駒澤短期大学 萩原 義雄氏

 「実用表現法」では、教科書にある作品を読んだ結果を自分なりにまとめさせて4分間スピーチを行い、動画として録画しWebに載せている。「国語演習」では、言葉の説明の他に、作品に登場する物の実物や表現された風景などの写真をWeb化し利用している。「文献資料を読む」では作家の肉筆原稿と活字化された本とを比較研究している。「情報言語学」では雑誌「太陽」のデータベースなどを用い、情報検索士または情報検索技能士養成を念頭に進めている。このほかWeb上で公開されている国宝級の書物などを教材として利用している。ネット上の様々な資料を活用し、学会発表に至った卒業生もいる。書物が電子化されると多くの人が内容に興味を持ち、それを実際に「本」(紙)として手にして作品を読みとるようになる。この点で紙の文化は廃れないであろう。


(4)「CADを活用したデザイン実習−ニットCAD演習の現状と課題−」
文化女子大学短期大学部 高橋 良子氏、小出  恵氏

 衣生活でニット製品の割合が高くなり、被服教育でCGやCADが不可欠になったことから、「ニットCAD演習」として独立科目とした。対象者は専攻科と研究生である。当初若手の教員が和歌山のメーカーへ1週間の研修に行った。基本操作の部分は3回程度に集約し、慣れている学生と初めての学生とを組み合わせ相互に教え合えるようにしている。授業は、アパレル業界で実際に使用されている機器を用い、現場に近い実習とするようにしている。また、PCならではの繰り返しの実習やシミュレーション実習を行い、デザイン発想能力や実践能力を養えるようにしている。教育効果は、繰り返し実習、パターンCADの学習、現場的実習、感性教育、学生相互の学習などが可能になったことである。現場に近い機器を使用する場合、教員の絶え間ない研修と産学協同体制が必要である。


(5)「児童教育学科における情報機器の活用事例−音楽絵本の制作−」
大阪成蹊女子短期大学 兼房 律子氏

 「保育内容研究・表現2」(通年)の科目で「創作」を教育している。前期は基本的知識の指導、後期は応用編で様々なアプリケーションやOSを組み合わせて総合的な創作指導を行い、台本・絵本・音楽などをすべて創作させている。制作中の作品はLAN上の共有フォルダに保存し、忘れ物対策、研究室での個別指導などに利用している。
 PCを用いた場合、作品の修正が容易で失敗による意欲喪失がなくなることはなく、むしろ積極的な創造意欲が湧いている。特に記譜と実音との関係の理解に有効であった。学生に提示する参考作品の劣化もなく有効に利用できる。結果として自作品への高い満足度が得られ、また自作品への反省など意欲の高まりが見られた。授業の様子はWebに載せ欠席学生への提供を図り、教材曲なども載せているが、学生の授業時間が詰まっており、利用状況はごく僅かであった。教員のスキルアップには学内での基礎的講習会のほか、さらなる向上のために大学がPC講座のチケットを配布している。



2.全体討議

 事例発表の後、質疑応答の形で以下のような活発な意見交換が行われた。その一部を紹介する。

●毎回の授業でどれぐらいの準備と後始末が発生するのか。教員間の連携や協力、サポートはどうか。
毎日出勤し教材を準備している。学校全体として、情報機器を使用した授業に協力的である。
授業研究以外の時間が多く、課題への返信も遅れがちでインタラクティブにはなっていない。更新への努力は傾けている。科目の共有は難しいが、アイディアやツールについての共有はぜひとも行いたいと考えている。
「遊び心」がないとWebはやっていけない。
平成11年9月に立ち上げ以後1日も休まずページを更新している。
家族が寝静まってからデータ作りをしている。翌日教員間で討議し、授業前には練習会を持っている。CADグループを作り協力しあっている。
個別指導に結構時間がかかる。一方、作品の収集・返却・再収集などはネットを使うことによって楽になった。
教材作成は、個人プレーでやっている。全教員のホームページがあるがほとんどが工事中で、学生の見る意欲を喪失させていると思う。

●情報技術習得のための研修体制について
私情協の講習会に参加したり、技術のある学生に教わったりしている。大学側は講習会参加も積極的に勧めてくれる。
同じフロアで自然発生的なワークショップや相談会、教え合いが行われる。
オープンルームに常駐の教員がおり質問できるほか、勉強会が持たれる。
専用機なので納入メーカーにしばしば通い、研修を受けている。

(文責:短期大学会議運営委員会委員長
 梅花短期大学 福本 紘)


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