私情協ニュース2

平成15年度 大学情報化全国大会開催される


 通算で17回目を迎えるこの大会は、文部科学省の後援を受け開催している。
 今回の大会は、「e-Learningの実現に向けて」をメインテーマに掲げ、9月9日から11日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で開催された。
 今回の参加者数は、524名(186大学、31短期大学、賛助会員25社)であり、昨年より60名程度多い参加となった。賛助会員41社による展示会では、2日目の午後から教育の情報化関連の多くの展示が行われ、大変好評であった。
 初日は、教育におけるe-Leaningを話題の中心とした。まず、基調講演として、玉木 欽也氏(青山学院大学経営学部教授)による「e-Learningの実現に向けて−大学におけるe-Learningの可能性と限界−」で、これからの大学におけるe-Learningを考えるにあたり、その可能性と限界について実践事例を交えながら示された。続いて、e-Learningの事例紹介として、学習支援のための活用、SCORM型の教材作成と海外の大学との共同実験について3大学から紹介が行われた。また、経済産業省によるe-Learningへの取り組み、デジタルコンテンツ標準化の必要性と動向についての紹介が行われた。最後に、本協会の今年度の取り組み、とりわけ大学等電子著作物権利処理事業について、井端事務局長より報告がなされた。
 2日目は例年通り、A、B、C、Dと並列に四つの会場に分かれて、合計67件の大会発表が行われ、立ち見の会場が出るほどの盛況であった。
 3日目の午前は、昨年に引き続き当協会のネットワーク研究委員会・学内LAN運用管理小委員会より「ネットワークセキュリティポリシーの実現を目指して」と題して、実現に向けて具体的な解説が行われた。また、教育現場における最新の情報技術の紹介として、「デジタルペーパーの新技術動向 −教育現場から見た次世代ディスプレイの可能性−」と題して、総論を横井利彰氏(武蔵工業大学環境情報学部助教授)より、技術動向を3社より紹介された。午後も引き続き技術動向紹介として「携帯端末の技術動向」について2社より紹介された。最後に講演「デジタル教材・教科書の現状と将来」と題して、大学、産業界、出版界における教材・教科書のデジタル化の問題点と今後の留意点について講演が行われた。
 なお、2日目の最後は、例年同様に懇親会が催された。
 次に、各セッションの内容について報告する。


第1日目(9月9日)

基調講演
「e-Learningの実現に向けて−大学におけるe-Learningの可能性と限界−」
青山学院大学経営学部教授 玉木 欽也氏

 大学教育においてe-Learningを実現するためには、e-Learning導入の前提条件を克服することが必要であることを指摘され、学習コースの開発や運営のため、学習管理システムの有効活用、各種の専門スタッフの必要性と役割を示された。さらに、科学的な授業設計法であるインストラクショナルデザイン(ID)の概念、プロセス、学習効果評価方法のポイントについて示され、学習管理システム(学習支援機能、コミュニケーション支援機能、システム管理機能)について事例を紹介され、将来の学習管理システムが具備すべき事項を整理された。


事例紹介
「学習状況の測定と学習支援のためのe-Learningの活用」
文教大学湘南情報センター長 宮川 裕之氏

 教育評価のねらいは、学生の教育目標の達成状況を測定し、たえず反省・改善することで教育内容を充実させ、学生の能力を伸ばすことである。これらを実現するための全学的な取り組みとして、e-Learningによる学習支援システムが導入され、実践されている。e-Learning全般に関する検討並びに支援組織、e-Learning学習をモニターし学習順序を統合して管理する学習進行管理システム、オンデマンド型教材などが紹介された。また、その成果の一端も紹介された。


事例紹介
「MJeN (Malaysia Japan e-Learning Network) プロジェクトにおけるマルチメディア専門教育用SCORM型教材の作成と評価」
京都大学学術情報メディアセンター 教務技官 元木 環氏

 e-Learningの技術標準であるSCORM 型教材について、教材設計、教材作成、登録、プラットフォーム拡張、実験授業(相互共有)まで一連の過程の実証実験事例が紹介された。この中には手書き入力レポートなどの拡張システムも含まれている。京都大学と早稲田大学で相互に教材を交換して運用する実験も行われた。実際の実施には、システムの安定性向上、プラットフォームや開発環境の柔軟性、手書き入力システムなどツールの操作性の向上、一連の過程における情報の共有などが必要とされることが報告された。


事例紹介
「同期型講義を活用したSCORM対応e-Learning教材作成と学習支援−アジア工科大学(タイ)との共同実験−」
東京工業大学教育工学開発センター 助教授 中山  実氏

 はじめに、タイのアジア工科大学との同期型国際遠隔講義の概要が報告された。さらに、その講義内容から効果的なe-Learning教材を作成する手法を検討し、それにより開発されたシステムの事例が紹介された。e-Learning教材作成にあたっては、SCORM 規格に準拠させるための手順を検討し、教材が構成された。その結果、非同期型学習コンテンツ作成における所要時間を従来の45%にまで短縮することが可能であることが紹介された。また、工程数も削減できることが報告された。


紹介
「教育の情報化、e-Learningに関する経済産業省の取り組み」
経済産業省商務情報政策局情報処理振興課 課長補佐 田代 秀一氏

 AEN(アジアE-Learningネットワーク)の各国の活動内容や2003年度の国内での活動内容、今後などの話題を中心に紹介された。


講演
「e-Learningの実現とコンテンツの標準化の意義」
九州国際大学法学部助教授 中村 壽宏氏

 e-Learningにおける教育コンテンツの標準化には、SCORM型の規格など構造の標準化とインストラクショナルデザインなどコンテンツのインターフェイスデザインの標準化があることを示された。また、インストラクショナルデザインについては、コンテンツを実際に作成し利用する教員の立場からその重要性を述べられた。


講演
「デジタルコンテンツ標準化の動向」
東京大学国際・産学共同研究センター長 安田 浩氏

 現在はコンテンツ流通時代への転換期にあり、DRM(デジタル著作物保護の技術)は未熟で、日本の技術によるコンテンツ流通の実現と、コンテンツ立国に貢献することを期待している旨を述べられた。さらに、コンテンツ作成の裾野を広げることの重要性と、そのためには地方自治体を中心とする行政機関によるコンテンツ作成の場作りへの積極的な支援が期待されることも指摘された。


第2日目(9月10日)

大会発表(67件)

A-1   コンピュータによる外国語自習プログラムについて−学生の自律的学習力を養う−
東京女子大学 大塚貞子、中村直子

 東京女子大学で実施している「Freshman CALL Program」と「コンピュータ英語自習プログラム」の二つの外国語向け学習プログラムの紹介と、それらに対する学生からのアンケート結果の報告がされた。そして、今回の調査によりCALLは非常に効果的な手段であるという結果が得られたと結論づけている。


A-2   学習支援Webアプリケーションについて
明星大学 最首和雄、石田賢孝

 インターネット上に学習する場所を構築したいが、コストや管理などと点でなかなか導入できないという教育現場のために、比較的容易に学習用Webサイトを構築できるWebアプリケーションを開発したという報告がされた。解答照合機能もついているが、現在のところ比較的単純な照合しかできないので今後改善していくということであった。


A-3   社会福祉実践教育におけるマルチメディア型教材の開発−児童福祉現場をモチーフにしての開発の試み−
淑徳大学 戸塚法子、松山恵美子

 社会福祉士を目指す学生のために、児童福祉現場を仮想的に体験できることを目的としたマルチメディア型教材の開発についての報告がされた。学習画面はストーリー性をもたせた内容としており、学習者の視野から見た風景が広がるよう工夫してあり、実習中によく出会う場面をアニメーションや写真、音声などで表現している。


A-4   短大におけるカンタン教育支援システム
関西女子短期大学  

水鳥正二郎

関西福祉科学大学   治部哲也、日暮雅夫

 短大における授業支援システムとして、学生に自習をさせることとBBSを用いてコミュニケーションをとることを目的とした教育支援システムについての報告がされた。今後、出題や解答チェックなどの未完成の部分を完成させ、さらに画像等を用いた出題も可能となるよう改善していくということであった。


A-5   「きもの学」における予告映像・ライブ放送・オンデマンド配信の実践報告
京都学園大学 近藤啓介

 大学コンソーシアム京都単位互換授業科目およびシティーカレッジの夏期集中セミナー科目として開講した「きもの学」における予告映像の配信、ライブ放送、そして、オンデマンド配信の実施について報告された。ライブ放送では、きもののデザイン柄など、著作権の問題からネット配信できない資料の扱いに苦心をした。


A-6   Webを利用した学力格差解消システムの開発と試行
麻布大学 荻原利彦

 獣医学部の初年度教育においては理数系科目の学力格差が問題となっている。それを解消するためのひとつの手段として、Webを利用した学習支援システムを開発したことの報告がされた。学生へのアンケート調査により、コンテンツの内容について予想以上の高い評価を受け、学生の授業理解欲も相当高いことがわかったと結論づけている。


A-7   ビデオ会議システムとPCを使ったインターラクティブな遠隔学習指導の試み
産能大学 盛屋邦彦、塩谷 勇、宮内ミナミ

 ゼミ形式や教員と学生の1対1形式の授業形態におけるインターラクティブな遠隔学習指導を実現させることを目的としたシステム構築の試みについて報告された。具体的には、ノートPCを用いたテレビ会議ソフトウェアやPC遠隔操作ソフトウェア、電子黒板システムなどを使用してシステムを構築し実験を行い、実用可能性を検証した。


A-8   インターネットを用いた研究支援システム
会津大学短期大学部  

中澤 真

早稲田大学   野村 亮
大阪電気通信大学   鴻巣敏之

 インターネットを用いた研究システムにおいて、音声の遅延は重大な問題である。それが300msを超えるとゼミが成立しないとの報告もある。本報告では、実際に海外の研究拠点とPC同士を直結させて実験を行い、CPUやOSがどのように遅延に対し影響を与えるのかを数値結果として具体的に提示した。


A-9   「心理学」学習・授業支援e-Learningプロトタイプ構築の試み
東洋大学 杉山憲司、志賀政男、手塚洋一

 心理学を例として、大学における自律・協同学習のための学習・授業支援システムのプロトタイプの構築について報告された。そこでは、開発コンセプトとして、自律学習、協同学習、メディアリテラシを掲げ、さらに、モジュール化、非同期・双方向性、アーカイブ性など七つの開発指針を示している。


A-10   誰でも利用できるe-LearningのためのASPサイトの構築−e-mail,web,携帯電話を利用した教育環境−
活水女子大学 川場 隆

 不特定多数の教員が自由に利用できるサービスサイトを構築し、個人利用から学科、学部、大学全体での利用に至るまでを想定した。教員は非同期に自分のクラスの受講者名簿をWeb上で登録するだけで利用可能となる。学期が終了すると、学生のデータは自動的に抹消されるため、データベースはメインテナンスフリーであり、組織だって行う必要がないことが特徴である。


A-11   学習者の知識体系化のための教育時点管理支援システム
大阪工業大学 能勢 豊一、中島 健一、上崎 智旦、本位田光重、皆川健多郎

 カリキュラムベースで学習する要素知識の獲得と、シラバスあるいは個々の学生を対象とした学習目標レベルで獲得される要素知識とがどの様な関連度をもって教育の現場で知識を体系化させるかについて、モデル化を行なった。生産情報システムや販売情報システムではすでに常識となっているPOP(Point of Production:生産時点管理)あるいはPOS(Point of Sales:販売時点管理)のように、教育・学習における管理システムPOE(Piont of Education:教育時点管理)が提唱された。


A-12   システム制御教育における対話型学習支援ツール
岡山理科大学 クルモフ・バレリー、柴山恵司

 近年技術者の資質の向上にともない、エンジニアには、どの様な問題にも柔軟に対応できる実務的能力が求められている。大学の教育現場においてもOHPやプロジェクターによる視聴覚効果を用いて学習者の理解促進を狙った教育がなされつつあるが、限られた時間内で講義や演習を通して学べる量はほんの少しである。そこで、学習者が自ら基本的な制御系の解析・設計方法を学び、これらの方法を用いて制御システムを設計できるような対話型学習システム環境が開発された。


A-13   京都外国語大学におけるCALLへの取り組みと支援体制の整備
京都外国語大学 村上正行、梶川裕司

 京都外国語大学におけるCALLへの取り組みが報告された。京都外国語大学におけるCALL教育の特徴は、日本人のほとんどが第一外国語として高校までに教育を受けている英語と対比しながらフランス語を習得できるように教材が設計・作成されているところにある。


A-14   出席確認の情報化方法についての検討
日本工業大学 小林 哲二

 出席確認システムとしての必要条件は操作の容易性、入力の迅速性、低コスト、信頼性等が上げられる。ここでは、上記の必要条件を満たした安価で迅速な出席確認システムについて報告された。手で表現した数字をCCDカメラで撮影し、あらかじめ記録しておいた個々のデータと比較することにより個人認識と学籍番号の認識を同時に行える可能性が示された。


A-15   組織学スライド(溝口コレクション)のデータベース化
神戸学院大学  

山岡由美子

神戸学院   溝口 史郎

 学校法人神戸学院理事長溝口史郎氏が、神戸大学医学部教授時代に作成した組織学のスライドは、標本作成技術の高さ、標本・染色法の種類の多さから高く評価されている。また、昨今の医学現場での標本の入手の困難さを考慮すると、非常に貴重である。溝口コレクションをデジタルデータベース化し公表されたことが報告された。


A-16   実験授業における質問検索エントリーシステムの開発
園田学園女子大学 新井加受子、川島 明子、富永 嘉男

 実験授業においては、限られた授業時間内に実験操作をこなすことが優先され、学生は原理や計算方法に対する疑問点を教員にじっくりと理解できるまで質問することが難しい。そこで、学生の質問と担当教員の回答の内容をデータベース化し学生が効率よく学習できるシステムを構築した。このシステムでは、データ入力にイメージスキャナーを使い入力の省力化を図った。


A-17   情報系研究室との共同研究による教育現場にカスタマイズされた漢字学習システムとその教材作成支援システム
早稲田大学 藤田真一、スワン彰子、保坂敏子

 大学における電子教材の開発において、教育効果の向上・教師や学生の負担軽減を図るには、直接授業を行う教員と情報系の研究室との共同作業が不可欠である。ここでは、早稲田大学における教材作成支援システムの開発プロセスと支援システム使用したときの学習効果、また、システムメインテナンスに関わる情報系研究室の負担軽減効果について報告された。


B-1   携帯電話を活用した英語語彙学習
早稲田大学   原田康也、楠元範明、前野譲二
GBWシステムズ社   Gerrit van Wingerden、阪原 淳
KDDI(株)   伊藤 篤、福島秀顕

 英語の語彙学習に携帯電話を利用したシステムの紹介と今後の計画が報告された。各学習者の学習履歴データ管理の他に、学習項目ごとのプロファイリングの重要性が指摘され、それらのデータ分析を含めたシステムが紹介された。このシステムではそれぞれの学習集団の正解率、反応時間などの特徴を抽出することが可能である。


B-2   e-Learningの導入における実践活動−福岡工業大学の全学的取組み−
福岡工業大学 山口芳弘、成久智彦、南里聡子、倪 宝栄

 全学的にe-Learningを導入する際の問題点とその解決の経緯が紹介された。システムの利用推進のため、プロジェクト形式によりいくつかの研究組織を立ち上げ、教育手法の開発および環境形成の研究が行われた。さらに、情報処理センターによるサポート体制を確立しe-Learningの推進を図ったことが紹介された。


B-3   対面授業のための電子教材と教室内情報環境の整備
東海大学 田中啓夫、椎名宮雄、野須 潔、沖 眞、松浦 執

 電子教材の有効利用のために新しい情報環境を備えた講義教室を設計し、そこにおける講義に対する新情報環境の活用事例が紹介された。この教室では教材配信、出席管理、画面の記録などが同時に可能である。機器を完全に使いこなすには教員の習熟が必要であるが、受講学生のアンケートは概ね好評であることが報告された。


B-4   Web型自発学習促進クラス授業支援システムCEASの開発と評価
関西大学 冬木正彦、北村 裕、荒川雅裕、植木泰博、辻 昌之

 対面方の通常授業と学生の自発的学習を統合的に支援する授業情報システムCEASを独自に開発し、その機能と試験的な運用結果が報告された。教材の配信の他に出席の管理、小テストの採点などのデータが即座に蓄積・分析でき、Webベースで入出力が可能であるので利用方法の習得が容易であることが紹介された。


B-5   マルチメディア電子教材「フライングディスク」の製作と運動技能修得支援への適用の試み
東海大学 野須 潔、大塚 隆

 大学体育授業へのマルチメディア教材導入の事例が紹介された。マルチメディア教材は静止画、動画、3D-CGを組み合わせて実現され、中でも、3D-CGはどのアングルからも自由に観察でき、技能修得への有効性が高いことが指摘された。教材利用後の成績の向上データも紹介され、難易度の高いサイドアームスローの教育に、より効果があったことが報告された。


B-6   専修大学におけるオンデマンド教育の取り組み
専修大学 松永賢次、大曽根 匡、藏下勝行

 平成10年度より大学全体で開発・推進に取り組んできたオンデマンド型遠隔教育の内容と成果が報告された。オンデマンド型ガイダンス講義、ネットワークを利用した学習到達度測定システム、携帯電話を用いた教育環境が報告され、学生への動機づけや教育の補助的な機能として大きな効果があることが報告された。


B-7   医療系学部の情報検索実習における各種英文和訳支援システムの利用について
愛知医科大学 安藤裕明

 医学部および看護学部の情報検索教育に関し、いくつかの英文和訳支援システムの比較検討結果が報告された。市販ソフト、Web上のシステム、専門辞書作成型システムなどを学生に提供し、利用頻度と有用性に対するアンケート結果から、Web上のシステムは利便性が高いが有用性では劣り、辞書作成型システムの有用性の高いことが報告された。


B-8   キャンパス間の高速通信回線を活用した教育支援
学習院大学 村上登志男、城所弘泰、磯上貞雄、横山悦郎、入澤寿美

 キャンパスごとに分かれていた情報システムを、超高速専用回線を用いて統合システムとして整備し、すべてのキャンパスでほぼ同一の環境が構築され、リソースの有効活用が可能になったことが報告された。キャンパス間でPC教室を接続し、遠隔授業を行った結果、鮮明な画像の配信が可能であり、事前資料が必要ないことが確認された。


B-9   文系短大における情報システムの導入と運用の現実
千葉経済大学短期大学部 江上邦博、井芹康統、西川篤志

 文系短大にノートPCを中心とする小規模情報システムを一括納入型リースで導入した事例が報告された。運用を開始すると、機器のトラブルや業者との意思疎通の問題、教員やTAへの事前指導の問題、これらを統合してサポートする組織の問題などで多くの苦労や課題があった点が報告された。これらのコストは小規模システムといえどもかなり大きいことが報告された。


B-10   1200台のパソコンを対象にした管理運用システムの開発
武庫川女子大学 濱谷英次

 大規模な実習環境を良好に維持するために、新しい管理運営システムを開発した。この新しいシステムの機能は、1,200台のパソコンを17の実習室とオープンフロアに分散配置され授業や課外に利用されるため、稼働状況の常時管理、授業に応じたソフトウェアの提供等に配慮され効果を上げている。


B-11   One Time Passwordの導入について
南山大学 池内 仁

 教務システムのユーザ認証にOne Time Password を導入し、安全性を保ちつつ学外からのシステムの利用を実現した。システムの導入により、すべて完全な認証システム確立まででないが、情報セキュリティ教育並びに啓蒙活動が効率的かつ確実に行えるようになったと同時に、将来より安全なセキュリティ対策の基盤位置づけられた。


B-12   教材コンテンツ配信に対応したネットワークセキュリティー対策の一事例
関西医科大学 渡辺 淳、夏住茂夫、水口優志、大槻英一、仲野俊成、木原 裕

 電子化された講義フィルをインターネットで配信し、大学間共有教材として活用している。これらネットワーク教材配信の維持のために、ネットセキュリティー対策については、ファイアウォール(FW)やパケットフィルター(PF)を組み合わせ、多段配備によるネットワークの多層化を推進している。


B-13   大学語学教員のIT度識別要因
玉川大学 安間一雄

 私情協が行ったアンケート調査「私立大学教員による情報機器を利用した授業改善に関する調査」(2001)のデータの中から、大学の語学教員の回答のみを抽出し多変量解析を行い、IT認識と言語教育との関係を分析したものである。分析の結果、ITを高い頻度で利用しているグループと低い頻度で利用しているグループでは、教育内容にも差異がある結果が現れた。


B-14   インターネット上の英語学習素材に関するメタデータベース構築の研究
流通科学大学 東 淳一、野村和宏

 インターネット上には、多くの英語学習素材が存在する。しかしながら、検索エンジンで、検索され抽出されるのは、キーワードに対する概念すなわち「概念検索」である。英語教育に活用する教材は、概念より英文で書かれているコーパスや実際の発話素材である。そのような要求に応える「事例検索」についての発表である。


B-15   Webデータベースを活用したインターンシップ
産能大学 白川浩美、小柴達美

 インターンシップを実施するには、学生の実習先企業と学生の条件や希望の摺り合わせが重要である。そのためには、実習先の選択に必要な各種データが学生側に適切な形で提供される必要がある。WWWとデータベースを組み合わせたWebデータベースを構築しインターンシップ制度を支援している。


B-16   マルチメディアキャンパスを指向した情報システムの設計と構築
鎌倉女子大学 松下孝太郎、年森敦子、山根一晃、田中康正

 新キャンパスへの移転に伴う情報処理システムの設計と構築について、その設計基本方針としてマルチメディアキャンパスを指向した。同時に、情報関連機器を情報関連科目だけでなく、語学教育、栄養学教育等に視聴覚教材を提供できるシステムにし、ネットワークの利用で連携が可能なものとした。


B-17   クライアントOSに依存しないプリント管理システムの構築
国際基督教大学 小林智子、冨田重成

 学生に開放したコンピュータルーム内で使用されるプリント管理システムの構築についての発表である。学内に構築されたシステムのOSは、WindowsだけでなくLinuxやMacintoshなど複数存在し、市販のプリントの課金管理システムでは、全てを統一的に管理できない問題を解決した。


C-1   学生情報検索・授業評価システムについて
聖霊女子短期大学 石崎利巳

 学生の顔写真付き個人情報、履修状況、進路内定状況等を表示できるシステムをExcelからAccess に移行し、授業評価入力システムも構築した結果、教職員間での活用が広がったが、セキュリティ問題等を組織全体で検討する必要があると報告された。


C-2   コンピュータを利用した体力・体型の客観的判定システム
武蔵野短期大学   伴 好彦、木川 裕
芝浦工業大学   小林 徹
大東文化大学   嶋田義一

 過度な痩身願望を是正し、正しいダイエット方法について理解を深めさせるため、体力テストや体型の判定と共に体脂肪率と身体比(BMI)との関係等によって女子学生の体力と体型の関係を客観的に判定するシステムを開発し、授業で使用し一定の効果が得られた事が報告された。


C-3   英語学習におけるe−Learningの効果的な活用−英語自学習プロジェクト2002の結果より−
筑紫女学園大学 田口 純

 文学部英語学科の2・3年生24名を対象として、CD-ROM英語教材「Listen to Me」利用の英語自学習プロジェクトを毎日30分で4ヶ月間、課外講座として実施し、受講前後のTOEIC IPテスト結果やアンケート調査等からe-Learning 導入の課題等を報告された。


C-4   マルチメディア演習科目における学生・教員による作品評価の導入
北海道工業大学 藤田勝康

 情報ネットワーク工学科の2年次後期に実施している「マルチメディアオーサリング演習」で学生が作成した動きのある Webページ作品を学生と複数教員が評価した結果を集計し分析を行った結果、学生と教員間に評価に順位差が生じていたことが報告された。


C-5   ITインテンシブコースの導入とその教育効果
大阪国際大学 中井哲夫、植松康祐、岡本容典、下條善史

 今年度から経営情報学部に短期間で高度な情報処理能力をもつ人材育成を目指した2年間の特別コース「ITインテンシブコース」を導入し、情報関連の資格取得を重視した少人数制・集中特化型プログラムによる教育効果と今後の課題について報告された。


C-6   授業検討アンケート評価システムの構築とその活用
九州東海大学 高山秀造、山崎松男、岩崎洋一郎、貝田翔二、永沼晴紀、井手口 健

 学生による授業点検アンケートをオンラインで自動集計し、調査結果を各教員が Web画面で閲覧可能にした上、Excel でセメスターや経年変化を特性化してグラフ表示できるステムを構築した。その結果、授業方法の改善が効率よく図られていることが分かるなどの例が報告された。


C-7   情報セキュリティマネジメントシステムの構築(BS7799認証取得)
南山大学 瀬尾好広

 「BS7799」認証取得により国際的な規格に則った情報セキュリティマネージメントシステムを構築・運用し、セキュリティレベルを高めた上で教務サービスの学外利用を開始した事例で、成果や課題と共に継続的な「セキュリティ教育」実施の重要性が報告された。


C-8   ビデオ教材を併用したe-Learningセキュリティ教育の試み
長岡技術科学大学 和田森 直、松田甚一、武藤睦治、加藤和夫、増井由春、吉田昌弘

 学内ネットワークの不正利用やセキュリティ問題に対する教職員・学生の意識向上を速やかに図るため、ネットワークとインターネット、ユーザIDとパスワード、情報の送受信とブラウジング、セキュリティ、個人インターネット利用の5テーマからなるビデオ教材を作成し、教育に利用した例が報告された。


C-9   学生増加に伴う知的財産権教育と倫理意識
武蔵野短期大学 木川 裕

 複数の大学・専門学校で情報関連科目を履修している留学生43名を対象に著作権等に関する10項目の質問によって留学生の知的財産権に対する法知識や倫理意識の違いをアンケート調査し、その成果をもとにどのような教育が必要かを検討した例が報告された。


C-10   授業に関する選択式・記述式アンケートの分析
早稲田大学   平澤茂一、石田 崇、伊藤 潤
武蔵工業大学   後藤正幸
(株)東芝   酒井哲也

 選択式と記述式の組み合わされたアンケート結果から授業に対する学生の要望を抽出するための手法を開発した。このため、学生の特性・授業の満足度・成績などの関係をモデル化し、次に、この授業モデルの仮説を検証するためのアンケートを設計・実施している。


C-11   コンピュータによる音楽教育プログラムの利用効果
武蔵野短期大学 荻原 尚、木川 祐

 音楽教育のためのプログラムをその学習目的に合わせた開発をしている。この研究は広範囲な音学教育のカリキュラムの中からコンピュータによって代替可能な部分を抽出し、予復習可能なセルフ・トレーニングを中心にしてプログラム化し、教育効果を高めることを目的としている。


C-12   発表中止


C-13   高野山古地図を利用した自己増殖的デジタル画像教材の開発
高野山大学 藤吉圭二

 本研究は、高野山大学の所蔵する高野山古地図「高野惣山之絵図」をデジタルデータ化し、まず、誰でも貴重品である古地図をパソコン上で自由に、かつ、多様な観点からの解説を付きで、閲覧できるような環境を用意し、一般の人々が文化財に接する機会をより広いかたちで提供することを目指したものである。


C-14   ITによる創造能力育成教育の研究・開発と大学によるネットワークコンテンツビジネスモデルの確立にむけて−芸術教育研究機構の取り組みについて−
京都造形芸術大学 矢野一輝、舟木幸士、宇井 修、中西洋一、大西宏志

 情報メディア技術の教育への応用と教育変革に向けて、様々な教育手法(教授技術)の複合体である創造教育を、教育手法ごとに分解・分類し、各教育手法の性質を個別かつ網羅的に分析することにより、教育手法の複合体である講義の構造を解明し、芸術創造教育プログラム(ネットワークコンテンツビジネスモデル)の確立を目指している。


C-15   日本の人口構造の変遷(動く人口ピラミッド)
明星大学 舩津好明

 日本の総人口を、男女、年齢5歳階級(最高階級「85歳以上」)別のピラミッド図で表わし、これをコンピュータの画面上で動かし、日本の人口構造の長期にわたる変遷を視覚的に理解することができるWebソフトウェアを作りあげた。

C-16   ビジネス・ゲームにおける補助教材のWeb化
大阪国際大学 市川直樹、韓 尚秀、岡本容典、田窪美葉

 大阪国際大学経営情報学部における、経営政策論・経営政策論実習科目であるビジネス・ゲームを、演習時間外にまとめさせ、一つのビジネスプランを策定することができるように、業者の助けを得てWeb化することを試みた。


C-17   要件定義技法の開発とその実践的な教育方法に関する研究
北海道浅井学園大学 山本正八

 業務のシステム開発工程において、必要な作業である要件定義では、業務モデルを設定して業務要件を定義した後、それを支援するシステム要件を定義することが必要である。本研究は、システム開発の経験のない大学生でも用意に習得できる要件定義技法を開発し、その実践的な教育方法として、CAIを活用した方法を提示している。


D-1   数学ソフト活用による数学系授業改善の試み −数値解析学および数値シミュレーション授業での活用実験−
中京大学 棚橋純一、秦野

 「数値解析学」および「数値シミュレーション」の授業を対象に、数学ソフトの可視化、特にアニメーション機能を活用した結果、受講者の興味を喚起するとともに、授業内容の理解支援の効果がみられた。講義終了時のアンケートからも、大半の受講生から肯定的な評価を得た。


D-2   ビデオフォーマット互換の統合e-Learningシステムの構築
駒澤女子大学 小林憲夫

 「時間的自由度」(オンデマンド性)だけを犠牲にし、「空間的自由度」と「コミュニケーション自由度」(インタラクティブ性)を与える新しいe-Learningシステムを、講義のビデオ映像とスライドコンテンツを表示させ、そこに自身で情報を上書きできるオーバーレイ構造を導入して開発した。


D-3   公開型双方向授業支援システム
甲南大学   太田雅久、杉村 陽、安藤弘明、和田隆宏
(株)m2m   高柳益芳

 「量子力学T」および「原子物理学」各々150名を対象に、教員から毎週出される課題に対し、学生が電子教材をもとに見解を投稿し、教員はそれにコメントを付け評価する「公開型双方向授業支援システム」を、BBSの枠内で開発した。教員は学生の投稿を効率よく処理でき、また学生の復習量が増加した。


D-4   インターネット利用遠隔授業による7高校との高大連携教育
岡山理科大学 大西荘一、榊原道夫、市田義明、堂田周治郎

 平成15年度に県内7高校と提携し、前期に「インターネット入門」を同期双方向で開講、高校生69名の参加を得た。アンケートでは大学生よりやや難解に感じたようだが、大きな差はなかった。地元のテレビ局で紹介されるなど、大きな反響があった。後期には「アルゴリズム入門」を開講する。


D-5   初級プログラミング教育における授業評価データの活用
大阪国際大学短期大学部 谷口るり子

 短大情報ビジネスコース1年生対象にVisual Basicを用いた「プログラミング演習」において、プログラムを説明・作成する前に「前回のキーポイントを聞く」ことにより理解度を深めるようにしていた。昨年度はそれを「復習プリントを配布し記入させる」方法に改めたところ、大きな効果を得た。


D-6   Web pageにおける文字テキストとアノテーション「伝言ゲーム」と「ホームページ委託作成」実習の試み
早稲田大学 片岡朋子、原田康也

 片岡氏は明治大学における「文字情報論」で、各履修者のWebページを別の学部の学生に委託するという演習を通じて、「情報伝達能力」と「指示しフィードバックさせる能力」の向上を図った。原田氏は早稲田大学の「統語論」の2回の授業を通じ、テキストとアノテーションの分離を実践した。


D-7   情報基礎教育カリキュラム強化
安田女子大学 千葉保男

 教養科目の再編・強化に合わせ、情報処理科目も「情報処理基礎I〜IV」の積み上げ型四科目と「情報処理演習A〜D」のアラカルト型四科目の構成と2倍増の強化を図った。初習クラスでは履修者の習熟度を自己申告させ、それぞれのレベルに合ったクラスを編成するなど、工夫した授業を行っている。


D-8   LAN環境の構築と管理に関する演習授業とその効果
武蔵工業大学 後藤正幸、家本俊温、萩原拓郎

 新たに「LAN環境演習」というこれまでに例をみない演習科目を2年生を対象に開講し、サーバ、ルータ、HUB等の機材一式を与え、実際に環境を構築し管理・保守を実体験するとともに、「LAN構築のためのマニュアル」を作成させた。課題はあるものの、学生から一定の評価を得ることができた。


D-9   地域と大学の連携による児童に対する情報リテラシー教育実践法
東北工業大学   小島正美、千田美紀、千葉陽子
地域・大学連携機構   池田正子
東北工業大学高等学校   水戸良広
東北大学   馬場伊美子
(有)情報教育研究所   橘川 孚

 5月に児童低学年と保護者計17名を、6月に児童高学年および保護者計16名をそれぞれ対象とし、NPO法人の協力の下にユニークなパソコン講習会を開催した。実践風景は地域の新聞に掲載され、児童に対する情報モラルの育成が必要であることが取り上げられた。


D-10   大学講義のPlan-Do-Check-Action
明治大学 川島高峰

 人文社会系の学習で重要な、「プロセス」「対話性」「フィードバック」を有効に行うために、Webページ上でのレポート提出、個人特定情報を削除した全員の内容の印刷配布(課題集成)、授業時間中での通読と講評、を行うことで大教室講義においても対話性を実現させている。


D-11   導入教育における外国判例データベースの利用について
大阪経済法科大学   田 潔、井出 明
Lexis Nexis Japan   神山智子

 法学部の導入教育において、外国判例データベース利用法を取り入れた実例について紹介したもので、法科大学院進学へ向けての実力育成、多面的見方の育成、データベース検索技術の習熟、などの意義とともに、これらを支える図書館の役割や業者連携の重要性について言及している。


D-12   プレゼンテーション課題における遂行およびその自己評価と動機づけの関連
帝塚山大学   田中あゆみ
北星学園大学   竹原貞真
帝塚山大学    落合史生
大阪信愛女学院短期大学   上田博之

 情報処理教育における課題や講義のあり方を探るために、プレゼンテーション課題の遂行過程について教育心理学的側面から考察したものである。その中で、課題の結果に対する学生の原因帰属と達成目標の二つの動機付け要因と課題成績との密接な関係を明らかにしている。


D-13   上智大学市ヶ谷キャンパスにおけるキャンパスポータル構築の実践
上智大学 高橋由利子、アントニー・ウスレル

 キャンパス内外における授業ならびに各種コミュニティの活動を支援するために、教育管理ソフトウェアを導入し教員のIT活用を促した成果について紹介している。その中で、授業時間外も含めた学生の協調学習機会提供や、教員のIT活用の意欲向上について状況を述べている。


D-14   PC・ネットワーク利用ガイドにおけるユーザビリティの向上について
早稲田大学 佐々木康成、川嶋健太郎、小野寺涼子

 学内のパーソナルコンピュータとネットワークの利用ガイドについて、ユーザビリティを向上するという視点から、内容の取捨選択・表現の簡潔化を行った例について紹介している。キャンパス独自の情報を詳細に説明し高度な内容はWebPageで紹介するなど工夫した結果の評価を示している。


D-15   「映像メディア制作実習」デザイン−2003年度前期−
甲南女子大学 吉田昌生、レイハン・パタール、野呂 薫

 映像メディア制作実習を通じ、自己表現能力を高めることを目的とした試みについて成果をまとめたものである。企画制作に関しては個別指導に徹し、学生は短時間作品を複数制作する中で作品のメッセージについて深く考え構成に工夫を凝らしプレゼンテーション能力が向上した。


D-16   自作パソコン教育
山口短期大学 三谷芳弘、林 孝哉

 入学直後にパーソナルコンピュータの自作を行い、続く関連授業や卒業研究での実践的な活用、という流れを通じて、学生の達成感と満足感を持たせる試みを紹介している。その中で「自作パソコン教育マニュアル」の作成や、自作時のサポート教職員の勉強会などの重要性を述べている。


D-17   ポータルシステムを活用した教育支援
四国大学 山本耕司、辻岡 卓、池本有里、中原由加里、細川康輝

 学生への連絡を一本化したポータルシステムの取り組みと成果を紹介している。このシステムは、自作の履修登録システムや各種教務情報、授業評価、学生投票システム、ストリーミング配信と連携し、的確な連絡、プレゼンテーション実習映像の閲覧など、多面的活用が行われている。


第3日目(9月11日)

「ネットワークセキュリティーポリシーの実現を目指して」

私立大学情報教育協会・ネットワーク研究委員会
学内LAN運用管理小委員会
同委員会委員長   後藤 邦夫氏(南山大学数理情報学部教授)
同委員会委員   奥山  徹氏(朝日大学経営学部教授)

 まず、広範なセキュリティマニュアル(セキュリティポリシー)の必要性とマニュアルを守らせる教育・啓蒙の工夫やインシデントを受けた際の対処マニャルの必要性等が説明され、セキュリティポリシーの策定方法について、各種パターンの利点と欠点、並びに策定パターンの手順関係や策定上・運用上の失敗を具体的に解説された。また、学内LAN運用管理者講習会のチェックシートによる現状分析結果が詳細に報告された。
 次に、情報セキュリティマネージメントシステム(ISMS)に関して、その定義、「BS7799」や「ISO17799」の適合性評価や認証制度、認証実績、マニュアル作成法、その他関連書類作成の必要性等について具体的に解説され、ISMSの構築事例として、南山大学での教務関連業務について国際規格「BS7799」と国内規格「ISMS適合性評価制度」の認証取得に関し、その目的・意義、構築スケジュールと体制、文書体系、リスクアセスメント例、ISMS構築の効果についての評価等を具体的に報告された。

技術動向1
「デジタルペーパーの新技術動向 〜教育現場から見た次世代ディスプレイの可能性〜」

●総論
武蔵工業大学環境情報学部助教授(大会運営委員)横井 利彰氏

 本セッションをオーガナイズいただいた横井氏に、デジタルペーパーの全体像をお話しいただいた。デジタルペーパーは、紙そのものを出発点とした「リライタブル・ペーパー」と、ディスプレイ技術からのアプローチである「ペーパーライク・ディスプレイ」の、二つのアプローチにまとめられる。「リライタブル・ペーパー」は、発色機構を可逆的にできるロイコ系染料を熱の制御によって発色させる。「ペーパーライク・ディスプレイ」は「ツイスティング・ボール式」、「電気泳動方法」、「光書き込み方」、「有機EL、有機発光デバイス」の四つの技術があり、それぞれの仕組みを3Dでのデモンストレーションを含め、分かりやすく紹介いただいた。続いて教育現場での活用可能性に言及され、そのためにデジタルペーパーに求められる期待(要求)を示された。


●技術動向

株式会社リコーからは ReWritable Paper System 、凸版印刷株式会社からはE Ink 電子ペーパー、大日本印刷株式会社からはフレキシブル有機ELについて、各社のデジタルペーパーの最新技術と今後の展開についてご発表いただいた。

株式会社リコー 研究開発本部
オフィスシステム研究所
システム研究センター 服部 仁氏

 服部氏はまず、ハードコピーの実に65%が一日以内に不要となる事実から、環境面からもデジタルペーパーが有効であることを再確認された。さらにReWritable Paperの発色・消色技術を平易に解説され、試作段階のプリンタを紹介された。

凸版印刷株式会社
電子ペーパー事業推進部 新井 善浩氏

 新井氏は、凸版印刷と提携しているアメリカのE Ink社が開発した電子ペーパーの技術を分かりやすく解説され、この技術を応用した電子出版の市場ニーズに触れられ、実際に書籍を電子出版化した試作機を紹介いただいた。

大日本印刷株式会社 研究開発センター
FDプロジェクトリーダー 三宅 徹氏

 三宅氏は自社開発したフレキシブル有機ELの技術と構造を解説され、テレビで取り上げられた「光るポスター」や「光る本の帯」をビデオを交え紹介された。さらに電子ノートによる同時添削や電子新聞などの可能性に触れられた。


技術動向2
「携帯端末の技術動向」

松下電器産業株式会社
シャープシステムプロダクト株式会社
(シャープ株式会社)

 松下電器産業株式会社からは読書用端末としてブックの機能紹介と教育現場での活用の提案がなされ、シャープシステムプロダクト株式会社(シャープ株式会社)からはPDAとしてザウルスについて紹介された。


講 演
「デジタル教材・教科書の現状と将来」

東京電機大学出版局編集課長 植村 八潮氏

 e-Learningが教育界、産業界、出版界などあらゆる分野でブームとなっている一方、デジタル化に適してないコンテンツなども多く見られることを指摘された。さらに、教育現場に携わる大学関係者は、コンテンツをデジタル化とするか従来の紙媒体のままにするかについては、コンテンツの特徴に配慮すべきであること、デジタル化にあたっては教育のカリキュラムの中でどこをデジタル化すれば効果的であるのかに配慮すべきであることを示された。




文責: 情報化全国大会運営委員会
委員長 明治大学 向殿 政男
委 員 上智大学 田宮  徹
専修大学 大曽根 匡
拓殖大学 高橋 敏夫
東海大学 高橋 隆男
東京理科大学 大矢 雅則
法政大学 宮脇 典彦
武蔵工業大学 横井 利彰
立教大学 坂田 周一
早稲田大学 船木由喜彦


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