私情協ニュース
第53回臨時総会は、平成21年11月25日(水)午後1時30分より、東京市ヶ谷の私学会館にて開催。当日は、議事に入るに先立ち、文部科学省専門教育課の小谷課長補佐から挨拶があり、引き続き平成21年度全国大学IT活用教育方法研究発表会の受賞者の表彰が行われた。続いて、新会員代表者紹介の後、報告協議事項に入り、22年度私学助成概算要求および21年度情報関係補助金の執行状況について、文部科学省私学助成課の真野専門官、日本私立学校振興・共済事業団の佐藤特別補助金課長より、次のような説明があった。
1. | 平成22年度私学助成概算要求及び21年度情報関係補助金の執行状 |
【文部科学省私学助成課説明】
1) | 施設・装置、設備関係は、8月に一端提出した概算要求をゼロべースで精査して、改めて10月15日に概算要求した。その結果、ICT活用推進事業は、8億2,300円減の19億6,700万円、教育基盤設備は、4,200万円減の4億2,500万円とした。 |
2) | 21年度の施設・装置の補正予算は、5月に成立していた補正予算が、政権交代で執行の是非を再点検することになった。耐震化とエコ改修、地上デジタル対応で総額123億円の執行停止となった。内示または交付決定したもの、事前に申請し、内定前でも大学等で着手したものは、執行停止の対象から除外した。ICT関係は9月末に向けて追加募集していたが、その締め切り前に執行停止した関係で、若干地上デジタルの応募については、当初予算の振替などで工夫させていただいている。 |
3) | ICT、教育基盤設備の採択状況は、当初予算で公募の分は12月に交付決定の連絡ができると思う。6月からの補正予算で地上デジタル関係は7月22日に交付内定を連絡済み。追加募集は早ければ12月末若しくは年明けの早い段階で採否の連絡を予定している。 |
4) | 来年度の申請上の留意点として、ICT活用事業と情報基盤設備を別々に申請いただいた例もあるが、端末に接続する教育基盤設備がICT活用事業と一体である場合には、ICT活用事業として一体にして応募いただきたい。 |
【日本私立学校振興・共済事業団】
1) | 20年度までは所要経費の2分の1以内の補助であったが、機器のファイナンスリースに関する会計処理の変更により、資産として処理せざるを得なくなったことで、リース、レンタル、購入の契約形態を問わない補助とするため、算定方式が大きく変わった。 |
2) | 算定は、『情報通信設備を活用した教育研究』と『大学独自のデータベース等を活用した教育研究』とした。情報通信設備を活用した教育研究の要件としては、コンピュータ、ネットワークを活用した授業科目の設定、eラーニングを活用した授業の実施等、情報通信設備を活用した教育研究を実施する大学等とした。これを満たせば「情報通信設備の基盤整備及び維持」「教育研究用ソフトウエア」「教育研究情報の電子化」までの申請が可能となる。 |
3) | 「情報通信設備の基盤整備及び維持」は、まず、学生数に単価で20年度借入支援の補助額の半分を逆算する形で求めている。次に、PC台数、サーバー台数に単価(PC20台1組36万円、サーバー5台1組84万円)をかける。単価の設定は5年で1台が購入できる値段の2分の1を根拠とした。大規模校に補助が偏らないよう補助の上限を学生数で4億5,000万円とした。「教育研究用ソフトウエア」も同様の考え方になっている。「教育研究情報の電子化」は、特定の教室等で使用するもの、学内出使用するもの、学外での使用の利用範囲による差を設けることにした。 |
4) | 単価の基本的な考え方は、5年間で一つのものを購入した1年分を基準した。理工系は専門性が高く高額の機器やソフトを導入している場合も考えられるが、どの性能がよいのか、そういったものまで加味できなかったのではないかと思う。基盤的補助金の性格が根底に流れており、若干不似合いな単価が発生している部分もあるかと思う。組数による単価設定は、パソコン20台設置の教室に1台のサーバーがあり、20台の端末1台当たり5本のソフトが入っていることをイメージしている。極端にはPC1台でも、ソフト1本でもそれぞれこの単価を使うことにより、激変緩和を少し加味させていただいた。1台のPCを買った場合、18万円まで買えることになる。 |
5) | 『大学独自のデータベース等を活用した教育研究』の要件としては、大学独自のデータベース、授業用コンテンツを活用した教育を行う大学等を対象とし、データベース等の数に利用範囲に差を設けた単価を設定して算出。1校当たりの上限を5,000万円とした。 |
6) | 4月、7月の2回の調査票をもとにシミュレーションした。申請校768校で、20年度の補助額より増額する大学等は678校、88%、ただし、12%が減額となる。21年度の学生数の使用ができなかったので20年度を基礎としてシミュレーションしたので、21年度の一般補助の対象数との関連から今の段階でははっきりしていない。全体の情報関係の補助額は、20年度は250億円であったが、これが400億円弱になるのではないか。まだ、他の特別補助の申請項目等との関係で圧縮がかかって少なくなる可能性があるが、昨年度より全体像としては大きくなっていると思われる。 |
【質疑応答】
(質問) |
理工系の大学だが試算すると約30%程度の減となる。調べてみると各研究所のPC、サーバーの台数の把握ができなかったことが影響している。今後も調査しないということになると、今の数字が今後ベースになるのかどうか。 | |
(答) | 非常に苦慮した部分で、特に理工系単科、医師系単科の学部のあるところは若干減額に近いところに推移している。何か理工系、医師系の単価が考えられないか検討したが、ソフトの内容、PCの性能を特定することが難しい。今年度については、8月の申請書類の数字は変えないで行っていく。後は実際に計算してみないとわからない。特別補助は全体で8メニューあり、1,000億の中でICTだけが400億というのは、かなり大きな比重を占めていると思っている。 |
次いで、向殿会長より以下の通り要望された。本協会でシミュレーションしたところ、20年度補助金の数十パーセントから2倍以上になるようなことが伺える。ある大学にとっては非常に負担になることを考え、激減緩和の措置をしていただきたい。また、8月に提出の申請書類に大学が記入ミスしたところがありそうなので、修正の要望があれば応じていただけるよう何らかの配慮を私情協としてお願いしたい。22年度については、本協会として検討し、時期が来たら相談させていただきたい。
引き続き、事務局から次の通り報告された。政権交代直前に文部科学省へ要望の22年度の調査結果に基づく要望の内容について、「教育基盤設備」は3.4倍の16億円以上の要求実現を行うとともに、「ICT活用事業」は21年度より8億円程度申請減となっており、前年同額を要求した。「ICT活用教育研究支援」は、補助が大学等の経費実態にできるだけ即した支援規模となるよう252億円の実績を限りなく尊重し、少なくとも220億円以上の支援を要望した。
分野別FD/IT活用研究委員会、分野別CCC運営委員会にて、分野別の教育目標を明確にする中で情報通信技術の可能性と限界を明確にし、教育モデルを紹介することにしており、医学、歯学、薬学を除く27の委員会で20年度より「学士力」の考察に着手した。委員会の開催回数は20年度103回、21年度117回の220回となり、一つの委員会で8回以上、そして、インターネットによるパブリックコメントを2回行い、見直しの結果、27分野の学士力を整理した。なお、「学士力の考察」は、本誌の特集として21年度12月号(Vol.18
No3)に掲載したので参照されたい(http://www.juce.jp/gakushiryoku/2009/index.html)。
教員の教育力向上の一環として、分野別教育の教育改善に情報技術を活用することの意義や有用性について、私立の大学、短期大学の教員に広く理解を呼びかけているが、情報通信技術の活用は全教員の3割程度に留っており、普及が期待通りに進んでいないことから、活用していない教員の方々に理解を呼びかけるため、第一段階として分野別教育の「教育目標」を整理し、その上で「教育目標のどの部分を実現するために情報通信技術の活用が効果的であるか」を明らかにすることにしている。教育目標の研究は以前から進めていたが、本格的な研究は20年度から始め、昨年11月には中間報告を発表した。その後、21年度においてさらに詳細かつ多面的な検討を行い、「学士力の考察」として整理することにした。
他方、文部科学省では、各大学に分野別教育の学習成果、到達目標の設定などの取り組みを促すとともに、日本学術会議に対して分野別教育の質保証に向けた枠組み作り等を審議依頼し、現在検討が進められており、すべての学生が身につけるべき基本的な素養として、「世界を認識する力」、「世界に関与する力」を掲げるなど、高い基準を目指している。このような中で、教育現場を担当する教員の方々の見解を「最低限身に付けるべき固有の学習成果」として整理した。学士力の検討は、大学としての喫緊の課題ともなっていることから、いささかなりとも参考に供し得ると判断し、私立大学・短期大学をはじめ文部科学省、日本学術会議に報告・提言することにした。
報告・提言のとりまとめは、検討内容をインターネット上の約9,000名による教員の「サイバーFD研究員」から意見を公募し、800名以上の意見を参考に見直しを行った。分野固有の学習成果を「到達目標」として設定し、その上で「コア・カリキュラムのイメージ」、学びの深さとしての「到達度」、到達度を確認する手段としての「測定方法」の面から体系化した。「到達目標」は、分野別教育の学習成果が「学部卒業時点で身に付いていること」を想定し、4年間のカリキュラムを通じて「社会人として身に付けるべき力」を「知識・理解」、「技能」、「倫理・態度」、「活用・提案」に配慮しつつ、ミニマム・リクワイメントとして設定した。分野によっては、基礎学力の低下という現状に到達目標が沿っていないとの意見もあったが、大学教育に対する社会の信頼・期待に応え得ることを敢えて優先した。また、工学系の検討には、JABEEとの関わりについても取りあげ、反映するよう心掛けた。また、資格教育を基準とする意見もあったが、資格教育に限定せずに、社会で活用できる「力」を発揮できるようにした。「到達度」は、到達目標を実現するための「学びの量と質」の水準で、専門教養としての到達度を設定するようにしたが、分野によっては教養として必要な能力水準を「一般レベル」、専門として求められる能力水準を「専門レベル」に区分して到達度を設定したところもある。その上で、到達度を確認する手段を「測定方法」として、「学びの持続可能化」、「学びの体験化」、「学びの活用・実践化」の観点から検討を行い、暗記型学習を誘発する従来型試験による測定を減らすよう配慮した。
この学士力の考察は、「教育改善のための情報通信技術の活用研究」と「分野別学士力を実現するための情報教育の改善研究」を体系的・総合的に展開するための事業プロセスの成果である。社会で力が発揮できることを目指して、多くの大学関係者による考えをできるだけ反映したもので、学士力検討の際に参考意見として供し得ると判断した。本報告・提言は、参考資料の提供に留まるものであり、教育の画一化・標準化を意図するものではないことを強調した。
私立の大学・短期大学の情報環境の整備を適正化するため、現状の取り組みと3年後の取り組みを自己点検・評価することで、今後の課題を整理することを目的としたもので、本年3月の総会で中間報告した後、未回答校の回収を5月まで続け、その上で最終的に数値データの分析、追跡調査、教育の情報化ランキングも含めてとりまとめた。なお、21年3月総会の中間報告は、機関誌(Vol.18 No.1)に掲載したので(http://www.juce.jp/LINK/journal/0903/05_01.html)、ここでは未掲載の内容を報告することにした。
【量的・質的整備の点検】
(1)コンピュータの整備状況
学生4人で1台の使用となっており、3年前に比べ2割程度が改善。大規模大学のように3割も悪くなっているところあるが、中小規模大学をはじめ5グループで改善されている。短期大学では3.5人と3年前と同じ。パソコンの使用が加速度的に増加していることを考えると、一層の整備が必要となる。他方、エコ対策による電力量の節減、大学間連携による設備等の共同利用による負担軽減を考慮し、外部データセンタ等の導入についても検討する必要が出てきた。補助金での活用は、大学で6割に改善された。短期大学でも併設短期大が3割程度改善された。大規模大学では4割程度、その他系では3倍も改善された。理系単科は、5割から3割へと活用が低くなっているところもある。補助金の活用が進まない理由としては、情報センタ部門での一元管理ができず、学部、大学院などで分散して整備されているものと推察される。早急に統合的な整備が実施できるよう改善が望まれる。研究専用については、補助金の活用が極めて少なく、外部資金や自己資金などにより整備されており、教育研究用の補助金活用を積極化する必要がある。
(2)学生に対するパソコン購入の義務づけ
大学平均で2割、短期大学で6%となっている。理系単科大学で45%、医歯系と中小規模で33%が導入。学生総数に対する購入台数の規模は1割台から7割台。特に中小規模は3年前より2割増の51%となっている。「義務づけていない大学」と「義務づけている大学」とで比較すると、義務づけている大学の方が平均1台当たり2.3人と義務づけていない大学の3.4人よりもかなり良い条件で整備しており、大学の負担軽減による導入でないことが伺える。
(3)情報通信ネットワークの外部委託
駐在業務は1人が週に5日でもう1人が週3日が多く、1カ月当たりの契約は3年前に比べ3割増の135万円となっている。大規模、中規模では4人体制で552万円、372万円となっているが、一人当たりでは平均より低くなっている。短期大学では週1人で3年前の51万円に比べ1割増となっている。
(4)外部データセンターの経費
大学平均で344万円、短期大学で275万円となっており、76万円から4,957万円まで多様化している。今後、教育の質保証、研究の高度化への対応を考えると、学外との連携がますます進み、データセンターの利用も増加すると思われるが、導入した大学での体験、関係企業での対応を十分整理した上で、慎重に検討する必要がある。
【教育・学習支援の点検】
(1)支援に伴う経費
大学平均で1,200万円、短期大学で600万円と3年前より低くなっており、大学の姿勢に積極性が伺えないことが懸念される。
(2)大学間連携
大学の6割、短期大学の2割が実施している。地域コンソーシアムによる教育プログラムの連携が増加してきている。
(3)産学連携
大学の6割、短期大学の3割が実施しており、外部人材の参画による教育支援、企業・地域社会の場をかりた実践型教育の支援が増加してきている。
【情報化投資額の点検】
(1)情報投資額全体に対する補助金活用の割合
大学平均で23%、短期大学で20%と低い。学生一人当たり大学で6万円、短期大学で4.6万円となっており、最も低いところは7,000円から最高49万円とグループにより異なる。これを授業料でみると平均大学で6%、短期大学で5%となっており、補助金による回収が十分でないことが伺えます。
(2)情報通信技術を活用している状況
平均で大学3割前後、短期大学で2割前後となっている。とりわけ、理系単科では5割に近い活用となっており、10割の大学もある。大学、短期大学の担当部門で活用状況の把握が的確にできないところもあることから、学内での調査による情報の一元化が急がれる。
人材教育について大学の教育現場と産業界との意見交流の場が少なく、ミスマッチが生じていることから、交流の場を設け、大学教育および産業界におけるそれぞれの役割と目標を確認する中で、課題・問題点を共有し、相互に必要な支援・協力を協議し、実現する仕組みを目指すことにしている。そのイメージは、「学外FD活動の支援」と「教育環境整備の支援」が考えられる。
学外FD活動の支援とは、いわゆる教員のインターンシップで、一つは、授業での学びの活用をフィールドワークできるようにする。学びが企業現場でどのように活用されているのか、フィールドワークすることで授業の重要性を体感し、動機づけをマネージメントすることが可能となる。二つは、キャリア形成支援の体験。中央教育審議会の答申で指摘の通り、生涯を通じた持続的な就業力の育成を大学教育で目指すには、実務経験のない教員には極めて困難なことから、実務の一部を短期間体験することで、キャリア形成支援の教育力を体得することが可能となる。三つは、最新の現場情報・技能等の学び直し。特に、情報系分野では教育内容の高度化・最新化を図るため、最新の専門知識や技術の更新が欠かせないことから、学び直しができるような場が必要となる。
教育の環境整備に対する支援は、現場情報・体験情報の紹介から実践教育、人間力を高めるキャリア形成教育、専門家による学習成果の評価・助言などの支援を予定している。
教員関係者のアンケートの結果では、情報系分野1,218名の内、99名から回答があり、9割がニーズ交流会の取り組みに賛成、その内、7割が参加を希望するとのこと。その中で「大学の情報教育が現代の基幹システムや経営支援システムから離れているところが多分に見受けられる。教員のキャリアによる部分もあるが、大学教育のねらいにも大いに問題があり、交流会で少しでも進展することを望む」、「企業負担から参加は地元数社で実施しており、広く実施するまでに至っていない。本事業を通じて広く企業及び大学に認知され、この取り組みが普及できれば人材育成に大きな効果が得られると信じる」など本事業への取り組みに大きな期待が寄せられている。
このような関係教員の意見を踏まえて、本協会の賛助会員に対して実験の計画を呼びかけ、できれば22年3月までに1回目を開催したい。
10月中旬と下旬、11月の上旬に3地域で開催した。49校156名の参加となり、8割から好評を得た。特に、興味を持たれたのは学士力の考察とミニ講演の教育戦略の整理、補助金問題。
事業への要望は、外部データセンタの導入事例をはじめ教育改革に向けた活動、学会との連携による教育力の育成、認証評価機構との連携などがあり、協会の事業紹介は極めて有益であった。
工夫すべき点としては、日常からWebサイトに情報を提供する徹底が必要であること、教員の参加を増やすために、関心のあるテーマを事前に広報するなどの工夫が必要であること、著作権代行事業についての広報不足を解消するため個別大学への理解の普及を徹底すること、研修事業の成果を追跡調査できるよう、研修後の活用状況をWeb上で参加者相互に情報共有できるようなネットワーク作りが必要であることなどを確認した。