巻頭言
吉久 光一(名城大学学長)
名城大学は、8学部11研究科、在学生15,000人を擁する文理融合型の総合大学で、18万人を超える卒業生はグローバル企業が集中する中部圏を中心に、国内外で活躍しています。開学90周年を迎える来年の2016年には、ナゴヤドーム前キャンパスを開設し、同年4月に本学の9番目の学部となる外国語学部を設置します。この新キャンパスには、1年後の2017年に既設のキャンパスから都市情報学部・研究科、人間学部・研究科を移転します。また、開学100周年を迎える2026年を目標年とした中長期計画として「学校法人名城大学の基本戦略(MS-26=Meijo-Strategy 2016)」を本年、スタートさせました。このMS-26では、大学のステークホルダー全員が共有する価値観として「生涯学びを楽しむ」を掲げています。この言葉には、本学で学ぶ学生諸君が在学中に「学ぶ楽しさ」に気づき、卒業・修了後も、それぞれの多様なコミュニティの中で、さまざまな人や文化と出会い、人生を楽しみながら生涯学び続けてほしいという願いが込められています。
以上のような、キャンパスの新設やMS-26の策定を機に、大学全体のICT環境を見直す動きが出てきました。
第2期の教育振興基本計画(平成25年度から29年度)や本年1月に策定された高大接続改革実行プランでも、双方向の授業や主体的な学修など、大学教育の質的転換の重要性が述べられており、アクティブ・ラーニングなどの教育に不可欠なICTを活用した教育環境がより一層強く求められています。言うまでもなく、大学を取り巻く諸環境(少子化、グローバル化、多様化、セキュリティなど)への対応としてのICTの利活用も不可欠であり、現在、大学としてのICT戦略の確立を目指し、「ICT戦略検討部会」の下でICTを効果的に活用した教育支援とともに、学生支援、研究支援、業務支援、大学運営支援などの大学全体の基本計画を策定中です。
スマートシティという言葉を聞くようになりました。これは「ICTを活用して基礎・生活インフラを効率的に運営(=スマート)することによって、人々がより快適に暮らすことが可能になる都市」のことであり、スマート化の対象はエネルギー、交通システム、上下水道などのハードインフラに加えて、医療・介護サービス、教育、防災などのソフトインフラも本来的には含まれます※。スマートシティやスマートタウンという言葉は、主にエネルギーをICTにより効率的に活用する町を指すことが多いようですが、このようにエネルギーだけでなく様々なソフトインフラも含まれます。この視点から本学では、「ICTスマート大学」と称して「ICTを活用して、教育資源・研究資源を効率的に運用することによって、学生、教職員が快適に勉学・研究することが可能になる大学」を、目指したいと考えています。
新キャンパスの開設により、学生の学修環境、教職員の業務環境、学部運営に関するマネジメント支援環境などの取り組みが急務であり、図書館の電子化(書籍用ICタグによる蔵書管理、利用歴の管理、タブレット等端末による電子書籍閲覧など)や入学前から在学中、卒業までのデータを活用した “エンロールメントマネジメント”を実施する計画です。
現在、「ICTスマート大学」の構築に着手したところですが、本学のビジョンである「生涯学びを楽しむ」という価値観を持った人材育成に向けて、ICTを大学全体で効率的、効果的に活用していきたいと願っています。
※佐藤浩介: Research Focus, No.2013-02,日本総研, 2013.