情報教育と環境

広島電機大学における情報教育及び環境



1.はじめに

 1986年頃から、理科系・文科系を問わず、情報処理教育が実際にカリキュラムに組み込まれて実施されてきた。本学においても、情報処理教育が開始されたのは1987年である。当初はコンピュータ室ではなく、視聴覚教室の設備の1部としてコンピュータを導入した。教室の構成は視聴覚機器と16ビットコンピュータを組み合わせ、コンピュータの実習にも利用可能な視聴覚講義室であった。
 当時、RGBやビデオ信号への変換は特注で変換機を作成する必要があった。約10年経過した今日では、Windows環境によるパソコン演習室、ワークステーション室、及び学内LANからインターネットを講義で利用していく時代になった。様々な環境の中で実施される情報教育が必要になってきている。
 本稿では、広島電機大学の情報教育及びコンピュータ環境の現状について報告する。


2.カリキュラム

 1年の講義はコンピュータリテラシーを含んだ情報処理演習基礎1及び2を実施している。この講義は、コンピュータの基本的な使用方法について学ぶ科目である。特に、タイプ練習はタイプクイック(データパシフィック社製)という市販ソフトを個人で購入させ、前期講義期間中にレッスンの半分以上を終了させている。講義内容は、基本的な利用方法を学ぶ科目であるため、主にアプリケーションプログラムの利用についてを学習し、ワープロ、スプレッドシートは基本であるが、加えて、プレゼンテーションソフトを利用して、物理や科学実験のレポート作成及び発表のプレゼンテーションを学習させている。この講義により、1年次から卒研を含めた、レポート作成やプレゼンテーションの方法の大切さを学ぶことが可能である。さらに欠席すると講義についていけなくなるという演習講義の欠点を補うために、教室内のみのネット接続に限ってブラウザを用いて、毎週の講義内容を確認可能にしている。
 2年の講義は、1996年度からインターネットを用いた講義を実施している。この講義は、ワークステーション室で実施し、ワークステーションの基本的な使用方法を学ぶ。インターネット関連の内容は、ブラウザの利用、HTML言語の基本、Webページ作成のためFTP(File Transfer Protocol)利用、及びe-mail(電子メール)の利用などインターネットの基本を学ぶ講義である。現在は、前期にHTML言語を学習させ、グループでテーマを決め調査・研究し、それをWebページにまとめて発表させている。講義内容の提示には、ブラウザを用いている(図1)。学内のネットに講義の内容を記載して、毎時間学生はこのページをアクセスしながら講義を受講している。特にUNIXの操作方法やメール、課題提出方法等については、ブラウザから確認可能にしている。1、2年の講義においては、ブラウザを使用することでプリントの配布を少なくし、演習講義の欠点を補う対応として講義時間外でも復習可能にしている。
 これらの科目と平行して、情報工学科では、専門の科目として、プログラミング言語(C言語、PASCAL、FORTRANなど)の科目がパソコン演習室と、ワークステーション室で開講されている。電気工学科では、FORTRAN言語の講義を行っている。電子工学科では、UNIXの講義及びC言語のプログラミング言語をワークステーション室で開講している。さらに、機械工学科でもプログラミング言語の講義を実施している。しかし、プログラミング言語については、情報工学科で開講されている以外は、1学科1講座開講されている程度で全体として減少の傾向にある。
図1 前期講義Webページの例


3.パソコン環境

 本学におけるパソコン教室の概要及びネットワークの現状についてを図2に示した。
 現在のパソコン環境のOSはWin3.1のままである。研究室単位のOSはWin 95が多く導入されている。大学の設備は必ずしも最新のものが整備されているわけではないが、あまりにも古い機器を利用した情報教育は現実的ではないと思われる。大学はWin3.1で学生の購入した機器がWin 95であることが多い。個人の環境が最新鋭にもかかわらず、大学の設備がそれに追いつかないという環境の問題は、今後特に取り上げられる問題である。教育の内容自体は、環境に左右されることはないが、実際問題利用するアプリケーションのバージョンが異なるためファイルの互換性が問題となってくる。そのため、教育する側は、これらを解決する方法なり、ツールを用意しておく必要が今後増加すると考えられる。
図2 ネットワーク構成


4.インターネット

 1994年12月から試験的にインターネットに接続し、1995年4月より全学でインターネット接続が可能な学内LANの整備を行った。実際には、情報処理センターが推進し、各研究室からの接続もすべて情報処理センターがサポートしている。また、各学科でサーバをたちあげているところもある。インターネットの接続については、当初64kで接続していた。年々利用者が増加していくため、今年度512kに増設した。これによって、多少はアクセスの遅さが緩和された。
 学生のe-mailアドレスについては、UNIXの講義を受講する学生にのみワークステーション室のe-mailアドレスを発行している。卒業研究のゼミ生及び大学院生については、担当教員の責任で登録申請制によりe-mailアドレスを発行している。来年度、インターネット用に教室をリプレースする予定であるため講習会を実施し、受講した学生にはe-mailアドレスを発行していくことを検討している。しかし、今後はインターネットを含めたネットワークが講義に利用される可能性があるため、さらに設備等の整備が必要になると思われる。


5.おわりに

 本学における情報教育環境はいまだ整備途中であるといえる。さらに情報関連機器の技術進歩が著しく、そのため、技術進歩を考慮した情報教育環境を構築していくことが今後の課題である。



文責: 広島電機大学 共通基礎講座
  情報処理教室講師 中田 美喜子

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