私情協ニュース1

平成9年度情報教育問題フォーラム開催される



 平成9年度情報教育問題フォーラムは7月1日(火)、2日(水)の2日間、東京のアルカディア市ヶ谷において開催された。今回は会場を東京に移し、平日2日間でのフォーラムではあったが、参加者数は約240名余り(103大学、17短期大学、賛助会員7社)にのぼった。
 第1日目に開催された全体会は、フォーラム運営委員長山崎和海氏(立正大学)の司会のもと、戸高敏之会長(同志社大学)の開会の挨拶、フォーラム運営委員の紹介が行われた。引き続き情報教育問題フォーラム資料に基づき、私情協活動の報告と平成9年度の事業計画、振興財団補助金申請についての補足説明等の報告が、井端事務局長より行われた。
 本年度はフォーラムとしては初めての試みである、「教育におけるバーチャル性とリアル性を考える」と題した、全体会の会場での全体討議が行われた。まず、課題提起者のお一人である石島正之氏(東京女子医科大学医用工学研究施設助教授)から「医科単科大学における現状」の紹介を通して、バーチャル環境教育環境の有用性が語られた。そしてもうお一方の課題提起者である中川秀恭氏(大妻女子大学理事長・学長)からは、マルチメディアが教育現場に導入された場合の限界やマイナス面を中心とした問題の提示がなされた。引き続いて、山崎委員長の司会の下で、全体討議が進められた。
 「教育現場での仮想空間の問題、障害」、「大学での情報倫理教育」について、また「社会生活における人間的バランスある生活」、「社会とアイデンティティ」、さらに「仮想現実感(VR:virtual reality)で使われているvirtualという用語の意味合い」など、多面的な種々の議論が積極的に取り交わされた。「技術進歩や新たな展開に水を差さずに、どのように仮想空間の影を乗り越えていけるか」、また「大学の活性化、人間形成/人間的成長の場としてキャンパス・ライフの充実化にどのように努めていくべきか」など、今後とも私情協としても、種々の経験を積み重ねながら、今回の問題提起を踏まえた、新たな議論の場を持つようにしたいとの声で議論がまとめられた。
 また、2日目の午前中も全体会の会場を利用した、パネル討議「ホームページ作りにおける諸問題」が行われた。ここでは、教員や学生がホームページを作成・活用する場合の表現手段、リンク、技術問題を中心に、フォーラム運営委員会担当理事である加賀美鐵雄氏(中央大学)の司会のもと、討議を行った。
 まず、パネラである尾関修治氏(中部大学国際関係学部助教授)から、中部大学の語学教育におけるWWWの活用について、また後藤邦夫氏(南山大学経営学部情報管理学科助教授)から経営学部情報管理学科の授業におけるWWWの活用についてそれぞれ紹介いただいた後、討議に入った。
 討議では、教員が教材としてホームページを活用する場合の対面授業との相互関係や、学生がホームページを作成・利用する場合の情報倫理教育、規定・ガイドラインの作成などが主な話題となった。そして、ホームページの作成・利用は学部(学科)間や大学間の連携を見据えながら、あくまで教育の補完的役割に位置づけられるものであり、むしろ教育内容のレベルを高めていくことが重要であることを最後に確認した。
 テーマ別自由討議は、フォーラム運営委員各位による司会のもと、第1日目4テーマ、第2日目の午後4テーマの分科会を設定して進められた。運営委員の司会の下で、各分科会約20名程から、多いところで70名程の参加者のもと、熱意のある、時間を有効に使った活発な自由討議が行われた。
 情報教育問題フォーラムの趣旨である「情報教育の現場で、またそれぞれの情報環境で実際に直面している問題/課題についての意見交換と情報の共有、会員同士の理解と協力を必要とする問題及び関連情報等について協議する」ことが全体的に活かされた大会であったといえよう。
 なお、第1日目の分科会終了後は、加賀美担当理事の挨拶の後、懇親会が開催され参加者相互の親睦を深めた。



文責: 立正大学 山崎 和海



テーマ別自由討議(7月1日)



A:センターの教育研究支援機能

 約40名の参加者の中で、はじめに、星野 洋氏(東京電機大学理工学部教授)による課題提起があった。「教育研究支援でセンターはどこまでサービスするか」を目標に東京電機大学の現状と抱えている問題点を語っていただいた。
 まず、リテラシー教育と言語教育をセンターのパソコンで行っているが、リテラシー教育向けのWindows95にすれば、ネットワーク、ワープロそのほかの統合ソフトの利用には好適である。しかし、言語教育でC++やPascalの日本語版を導入しようとするとDOSが必要となる。両方のシステムを立ち上げるか言語教育を見直すかを苦慮している。
 ネットワーク利用者の激増で、アドレス管理、ホームページ品質管理、ネットワークセキュリティなどの仕事が大幅に増加した。さらに、ネットワークまわりの仕事では、教育、研究、事務、法人関係すべてにセンターの指導と管理が要求されるようになった。また、マルチメディアを通信回線により利用するため、画像の質と回線費用の問題にセンターが直面している。
 結局、ハード、ソフトの多様化と利用者の増加がセンターサービスへの過大な要求となってきている。さらに、サービスはどこまで可能かを具体的に説明され、センター同士でこの問題を解決したいと提起された。
 直ちに、質疑応答に入り、まず、湘南工科大学の鈴木氏から「センターにはやはり教員を加えて運営すべきであるかどうか?」というセンターの人員構成への質問があった。これに対し、発足時には教員がいたが、10年以上まえに教員配属をやめた。教員は教育上必要であるが、運営上は職員のみがよいとの回答があった。さらに、詳しい質問が創価大学の宗氏、大同工業大学の西村氏ほかからなされ、センター運営の詳細な説明があった。
 ネットワークの管理についての質問も多く、聖徳大学の富永氏、青山学院大学の有坂氏、近畿大学の辻合氏、甲南大学の鳩貝氏などから、「IPアドレスやメールアドレスの与え方、ユーザIDの発行方法、回線速度とその改善策」について問われた。回答として、アドレスは教職員学生全員が持っていること、メールは4年生以上が使っていること、また、ユーザIDの配布の方法、回線利用状況などの説明があった。
 休憩後は自由討議に入り、ノートパソコンとネットワーク、PPP接続、ノートパソコン利用の指導方法、ホームページのモラル問題など、10大学を超えるところから互いに質問や提案があった。今回の新しい話題として、PHS利用のネットワーク接続が問題となった。センターの役割は複雑になる一方という感触を得た。



文責: 京都産業大学 黒住 祥祐


B:学内LANの構築・運用管理とセキュリティ

 約40名の参加者があり、最初に司会よりテーマの趣旨説明があった。学内LANの活用が進む多くの大学でセキュリティ問題への関心が高まっており、昨年に引き続き討議することとなった。今回の課題提起は、ネットワークセキュリティ問題に意欲的に取り組んでおられる会員大学の中から、東京理科大学の東田幸樹氏(東京理科大学理学部助教授)との武田俊之氏(関西学院大学情報処理研究センター助手)にお願いした。
 東田氏の「学内LANの運用管理とセキュリティ」と題した発表の主要点は次のようであった。
  1. 東京理科大学は4キャンパスからなり、神楽坂キャンパス中心のスター型で接続されている。また神楽坂より100MbpsでJOINに接続している。各キャンパスLANは基幹部分が100Mbps FDDI、部局内が10Mbps、Ethernetをルータ(61台)で接続している。全学で約5,000台のホスト(WS,PC)が接続されており、ユーザ数は約2万人である。他に、ダイアルアップIP接続(PPP)が106回線、キャンパス内の情報コンセント(DHCP)が668箇所ある。
  2. ネットワークが大規模のため複数の組織や責任者が分担して運用管理している。情報企画サービスセンター(6名)がJOINや対外接続に係わることを担当し、情報科学研究・教育機構事務技術部(24名、各キャンパスに配置)がキャンパス間、基幹LAN、ルータ、教室および事務室のLAN/ホスト、PPP接続、情報コンセント等を運用管理している。さらに部局ネットワーク管理責任者(約50名)が学科LANのIPアドレス管理やホスト把握を担当し、研究室内にホスト管理責任者を置いている。
  3. 1993年に海外から不正に侵入される事件が起こった。大学での実害はなかったがこの事件をきっかけに学内のセキュリティに対する意識が高まった。しかし多くのユーザはネットワークの使い勝手を損なわない方向を望んでおり、できる限り緩やかに様々のセキュリティ対策を施している。不正侵入の監視は、ログをチェックするシステムを開発し、1,000台以上のホストに対して常時行っている。セキュリティホールの保守は、米国CERTからの報告等により管理ホストに適用し、部局ネットワーク管理責任者には対策を促すメールを出す。他に、パスワード管理の徹底指導、電源やケーブルの異常検出等がある。ファイアウォールを導入しない形態をとっており、各ホストでのセキュリティ管理が重要となるが、以前に比べ各研究室のホストまで対策が及ぶようになってきている。
  4. 情報コンセントからの利用ではログ等からユーザの特定が困難である。外部組織への侵入アタック等を防止するため、情報コンセントから学外へ直接出られないようルータでフィルタリングしている。また、メール送信時にアドレスを改竄できないようメールサーバでチェックしている。
  5. 最近の傾向として、学外組織へのアタックが増加しており学生への倫理教育が重要となる。
 次に、武田氏の「ネットワーク運用におけるリスク管理について」と題した発表の主要点は次のようであった。
  1. 関西学院大学は2キャンパスからなり、学生約15,000人の内約5,000人が電子メールのユーザである。また、約800台のパソコンが接続されている。
  2. セキュリティの問題は、安全性を脅かすリスクの存在を評価し、利便性とのトレードオフでサイトのセキュリティポリシーを策定して実際のシステムに実現していく。この分析的なリスク管理の手法が情報システムの設計や運用で重要である。
  3. 策定されたサイトのポリシーは公表しセキュリティ教育では徹底すべきである。また、情報倫理教育では「リスク管理」が重要となる。
  4. 不正アクセス等のセキュリティ問題が発生したときの対処を決めておく必要がある。関西学院大学では、ネットワーク倫理規定を設けてネットワーク倫理委員会が処置を決定する。組織が問題を自覚し責任を持つという考え方に基づいている。
  5. ユーザ教育を徹底しても種々の人間的要因からパスワードを盗まれる可能性がある。また、ネットワーク上で匿名による個人情報の暴露や本人かのように見せかけた情報発信等が問題となっている。これらの防止は、技術的にも法律的にも不可能であり、ネットワークコミュニティの参加者が連携して対策を考えねばならない。
 続いて討議に移り、7大学(北星学園大学、国士舘大学、帝京大学、文化女子大学、愛知医科大学、関西学院大学、沖縄キリスト教短期大学)から発言があり、課題提起者への質問の他に問題提起や各大学での状況等に関する意見交換が活発に行われた。主な討議事項は、1)学内LANの管理要員の人数と育成、2)学生や教職員のネットワーク倫理やセキュリティに関する意識の向上、3)管理者の責任や権限の明確化、4)パスワード管理、5)PPP接続や情報コンセントのセキュリティ管理等であった。



文責: 豊田工業大学 北川 一


C:情報基礎教育

 このテーマについては、1996年度に継続して議論が行われた。また、1996年度以前についても「文系学科における情報教育教授法」というテーマで同じような内容が議論されいる。
 1995年度の課題提起者は、定道 宏氏(京都大学)であり、中学・高校での情報教育に関するカリキュラムの内容と、大学で行われるべき情報教育の内容について報告され、中学・高校の情報教育をふまえた上で、大学としての情報処理教育を再検討するべきであるとされた。
 1996年度の課題提起者は、濱谷英次氏(武庫川女子大学)であり、中学・高校での情報基礎教育の実施状況を踏まえて、大学の情報基礎教育の在り方についてという趣旨で、主として武庫川女子大学での取り組みについて報告された。議論としては、テクニカルな内容でなく、大学教育としての内容を考える必要があり、情報倫理、情報活用能力の育成などを目標とすること、ネットワークリテラシー教育の必要性などが議論された。
 今年度は、課題提起者として家本 修氏(大阪経済大学経営学部教授)により、「情報基礎教育の理念とカリキュラムの問題点」というサブテーマで報告が行われた。情報教育の内容としては、情報科学的なものからアプリケーション操作教育まで幅広く行われているが、情報社会に適合して、主体的にものごとを推し進めることができるような人材の教育とするためには、情報教育を大学教育の中により統合的に含めて考える必要がある。単なるリテラシーのスキル教育に終わるのでなく、学習者への動機付けや、個別化教育などの試みが必要であるとの報告が行われた。また、具体的なカリキュラムの例を示して説明が行われた。
 後半の議論においては、まず、各大学の現状として、九州国際大学での情報環境の問題、立正大学のノートパソコンを所有させ、共通教育でなく専門教育とリンクした導入教育を行っていること、武蔵工業大学環境情報学部での基礎教育の内容、広島電機大学での共通教育としての情報処理基礎演習の内容などが紹介された。これらの中で、中学・高校での情報教育の影響が現れつつあるが、現状ではそのような教育を受けてくる学生とそうでない学生の幅が広がりつつあるという認識が得られた。
 次に、ネットワーク教育に関して、金蘭短期大学では、メールの送受信の講義を通じて、ネットワークを体感させ、現状を理解させることを目指していることなどが紹介された。また、プレゼンテーション教育に関しては、家本氏より、情報処理実習という科目でスライドショー、評価法の手法を導入していること、広島電機大学では物理実験のレポートにプレゼンテーションソフトを利用すること、立正大学では、プレゼンテーション法、ディベート法の講義があることなどが紹介された。
 この2、3年の議論を通しても、今後とも情報基礎教育の内容は変化していくことは明らかであるが、中学・高校での状況を見極めて、どのような目的で教育するかを明確にして、カリキュラムを常に見直して、より良い方向を目指していく必要があるのではないかと思われる。



文責: 名古屋学院大学 梶田 建夫


D:マルチメディア教材の開発と活用

 本分科会は約25名の参加があり、昨年度の「マルチメディア教育環境構築とその試み」を受けて、「マルチメディア教材の開発と活用」のテーマで討議した。はじめに、真庭 功氏(追手門学院大学経営学部教授)から課題提起として、昨年度から始まった追手門学院大学におけるマルチメディア教材開発の経緯から教材の事例まで詳細な報告があった。
 その主旨は、今までの授業で行われてきた紙をベースにした教育から、映像や音声、動画などのディジタル情報を使ったマルチメディア教育環境を構築し、教育内容の充実や教育方法の改善に着手することにある。その対象は語学教育から、社会科学、自然科学と広範囲に亘るものであり、技術的な基盤はインターネットの普及によって整備されきたWeb(HTML)をベースにするものである。また、教材の開発意図にはアイデア支援、コミュニケーション支援など創造的思考と表現能力の育成、シラバスや評価システムとの連携にも配慮されており、企画意図から完成まで、シナリオの構成、絵コンテの作成、技術的な背景やノウハウなど教材開発の持つ総合芸術としての側面に苦労のあとが伺われた。
 課題提起後の自由討議では、出席者全員による活発な討議が行われた。前半では主に事例等に関する教材作成上の問題点、後半ではマルチメディア教材を授業の中でどのように有効活用するかについて意見交換が行われた。前半のマルチメディア教材の開発では、
  1. 著作権をどのようにクリアしたのか?
  2. プラットフォームのバージョンアップへどのように対応するのか?
  3. 膨大な制作費用の捻出方法は?
  4. メンテナンスを誰がどのように行うのか、その費用は?
など参加者から大学としての積極的な取り組みや豊富な資金に羨望を含めて質疑が行われた。後半のマルチメディア教材をどのように有効活用するのかについては、
  1. 一斉授業か個別学習など規模によるマルチメディア教材の有効性
  2. マルチメディアの双方向性をどのように引き出すのか
  3. オープンな作成教材の評価
などの話題に移り、具体的な活用面では などに有効であり、CAIの経験からテキスト依存型の教材としての利用に関しては否定的な意見が多かった。
 今後とも各大学での教育環境を整備する上で取り組まなければならない課題であろう。



文責: 阪南大学 市川 隆男


E:文科系におけるプログラミング教育

 課題提起者である大岩 元氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)から課題のテーマである「文科系にもプログラミング」の報告があり、以下の内容について参加者と課題提起者の間で活発な討論が行われた。
 情報の基礎教育としてのリテラシー教育は、これまで多くの議論がなされてきた。しかし、大学の教育としての情報教育を考えるとき、専攻分野にかかわらず、1)コンピュータが利用できること、2)コンピュータの可能性と限界について理解を持つことは非常に重要である。1)については、コンピュータの技術進歩が速く、特定の応用プログラムの使用方法を覚えても、その知識は時代と共に急速に陳腐化する。従ってこのような使い方の知識のみを大学教育の内容とすることは、適切とはいえない。つまり、大学で行う情報教育は、コンピュータの利用を通じて、普遍的な能力を身につけるものでなければならない。一方、プログラミング教育は、単なる使い方を越えたコンピュータの本質的な理解を行わせる最適な教材であるといえる。つまりプログラムを書く経験を持つことによって、コンピュータの動作原理が理解でき、コンピュータは何ができて、何ができないかについて、理解することだけではなく、問題解決のための、問題の定式化、設計、実現、評価という一連の過程を体験させることができる。しかし、教育を行う教師は、プログラミング教育をプログラム言語の文法を理解させることだけを目的にしてはならない。プログラム作成の目的とは、問題をどのように捉えるか、それをどのように定式化するか、これをコンピュータ上で如何に分かり易く表現し、実現させるか、さらに結果が充分評価できているかで決定される。従って、それぞれの工程で細心な配慮が必要であることは言うまでもない。問題の定式化は、自然言語を用いた分析作業が中心となる。これらは問題が定まった後で、問題を解決するための手順を考えていくが、これは言語能力と共に論理能力が必要である。
 次にプログラミング言語で設計を具体化し、コンピュータ上での実現、評価と続く。一連の作業を通じて人間とコンピュータ、それぞれの可能性と限界を実現することに、大きな教育的価値がある。プログラム作成に当たっては構造化を考慮に入れること、コメントの重要性等、多くの知的労働を必要とする。また、グループ作業でプログラムを作成させることは手続きの概念やグループ間のコミュニケーション能力の育成等、さまざまな過程で、コラボレーション能力の育成にもなる。
 大学の情報教育として、実際に動くプログラムを作成する作業が、教育効果を上げることは明らかであるが、これには、教師が如何に効果的な教育を行うかの力量と、地道な努力が必要である。大学での情報教育は、「スキル」教育から「考える能力を養う」情報教育に方向転換すべきである。これによって、情報社会に、考える能力を持った優秀な学生を送り出すことができるであろう。
 最後に、大岩氏はプログラミング教育に日本語の運用能力が重要な役割を果たすことを強調された。フォーラム参加者は少なからず現在の文科系、理科系の情報教育について、今後どのような教育を行うべきかについての問題意識をもっておられる方々が参加し、活発な意見交換が行われた。



文責: 関西学院大学 雄山 真弓


F:ネットワーク環境下での図書館サービスの再構築 −国際基督教大学の場合−

 30名程の参加者の下、課題提起者である長野由紀氏(国際基督教大学図書館長)より、プレゼンテーション・ツールを利用され、「国際基督教大学におけるコンピュータ化の歴史」、「電子媒体やエレクトニック・リソースへの取り組み方」、「教育・研究支援(対学生、対研究者)や図書館サービスの概要」、「図書館員の業務内容の変遷と情報教育や研修概要」、さらに「大学の情報化と図書館再構築」の現状と諸課題について報告がなされた。続いて会場から、国際基督教大学が進めている図書館情報化への種々の質問が取り交わされた。特に、「所蔵からアクセスへ」に代表される図書館サービスの多様化への対応、さらに業務量が増加している一方で、図書館員の増加が望めない状況での図書館員の今後の業務のあり方や、図書館予算と洋雑誌等の費用アップへの対応(例:米国アンカバー社利用など)、大学としての情報化(図書館、情報教育サービス、大学のホームページ作りとその体制など)の統合化の具体案(副学長制)などについて多くの時間が割かれた。
 休憩後、会場の参加大学(例;国士舘、追手門、東洋、同志社、中央、駒澤、足利工業、城西、文教、立教等)からそれぞれの大学の現況や問題意識が披露され、種々のテーマについて討議が行われた。一つの結論を導くことは難しいが、多くの課題を整理すると、以下のような方向性を感じ取ることができよう。
 「所蔵からアクセスへに代表される図書館サービスの多様化、メディアの電子化、インターネットで代表されるネットワーク化・マルチメディア化、そして学術情報の電子的データーベース化時代を迎え、図書館としての場・空間・文化を尊重しながら、同時に大学の情報化における図書館のリーダーシップ性、さらに学部教育・カリキュラムとの連携課題等がクローズアップされてきた時代性を読み取ることができる。」
 また「検索機能の充実化/自由な検索のためのインデックス化」と「電子的保存」という電子化の意味合いを十分に考え、息の長い学術資産の電子化、大学の情報化への取り組みを考える時代を迎えている。
 なお、会場からの積極的な質疑並びに討議が行われ、また各大学相互の事例紹介もあり、有意義な参加型分科会であった。



文責: 立正大学 山崎 和海


G:新しい情報教育の試みとそのレビュー

 本分科会では、服部隆志氏(慶應義塾大学環境情報学部講師)と、高木教典氏(関西大学総合情報学部教授)、小田原敏氏(関西大学総合情報学部助教授)から慶應義塾大学、関西大学における情報教育の現状についての報告があった。両校は関東関西における情報教育のモデル校ともいえるため、両校の教育内容は他大学にとっても大いに関心があるところである。
 慶應義塾大学については、総合政策学部、環境情報学部における、カリキュラムの基本構成、情報教育の位置づけ、各学年における情報処理教育の構成の説明等があった。プログラミング言語を自然言語に対して人工言語として位置づけており、言語教育を重視していること、UNIXをベースとして教育を行っていること、少人数制の講義を展開していること、TA、SAを本格的に導入していること、ネットワークの活用が進んでいる等の特徴がある。その他に、情報処理科目の1つではミニプロジェクトと呼ばれる科目があり、3人のグループで1、2カ月かけて1つのプログラムを作る授業のあることが注目される。本授業では最後の授業で報告を行うことになっており、学生にとってはかなりハードな内容であるが達成感があり好評とのことであった。集中的かつ自発的に作業を行うことは学生の情報技術水準を高める効果的な方法と思われる。
 関西大学総合情報学部の教育の基本目標は、情報ジェネラリストの育成であり、情報をかなり広い意味で捉えており、メディア情報モデル、組織情報モデル、知識情報モデルという3つの履修モデルを基礎におき春学期・秋学期のセメスター制を敷いている。慶應義塾大学と同様、コンピュータとネットワーク関連の設備が充実し、かつそれらを効果的に活用し、TA、SAの積極的活用も行っている。
 新しいメディア教育の一例としては、高度なプロダクション機能を有する編集室、スタジオを持ち実習が行えるようになっている。通信衛星の活用も行われている。これらは学生にとってかなり魅力的な教育内容と映っているようである。
 ネットワークを利用した学生による大規模、自主的な大学間の交流等も始まり、情報教育による知識が就職上有利になった例なども報告された。
 本分科会には60名を超える参加者があり、両校の現状や問題点について活発な質問や討論があった。両校における今後の情報機器増強計画、大学外からのネットワーク利用、マルチメディア利用の授業における著作権問題、情報機器に保守管理の方法、端末室のオープン利用、学生の個人用ノートパソコン購入など広範囲にわたる質問があった。



文責: 専修大学 斎藤 雄志


H:イントラネットを利用した教育情報ネットワークの構築とその問題点

 40名余りの参加者の下、杉本公弘氏(拓殖大学工学部教授)による同学科内の教育情報ネットワークの構築と運用における問題の提起によって始まった。杉本氏は教育研究情報の伝達は必要なときに必要なところで行うという考えの下に、大学全体の情報のカテゴリー分類(教育の実践、研究活動、福利厚生)から公開対象による区分(学内・学部内・学科内、事務局、教員間など)、公開の範囲(教職員間、職員・学生間など)などの分類をまとめられた。また、そのためのインフラとしての学内ネットワーク、外部とのシームレスな情報伝達、セキュリティの確保等を基礎項目として指摘され、学内ネットワークの実効性のためには学生用も含めた端末装置の導入、設置、運用に対する十分な考察も必要であることを説かれた。
 同学科では、学生個人にノートパソコンを購入させ、教育情報ネットワーク内に情報コンセント64口を開放して運用しており、セキュリティ、データ量などの観点からHTTP、E-mail、ファイルサーバの利用は許可しているとのこと。
 特徴的なのは電子工学科のホームページで、講義要項・シラバス等に加えて、授業情報(中間試験、レポート)、期末試験過去問題、レポート問題、模範解答まで上げている点である。これにより、教員の相互啓発・自己評価に効果があると考えられる。また、学科内ネットの運営を大学院学生を主体とする学科内組織「ネットワーク運用研究会」に一部を任せている。学生に啓蒙教育と実務訓練を同時に課す上、学生の主体性とボランティア精神を刺激する機会にもなっている。
 導入と運用の最大の関門として、教員に対する啓蒙実施の困難さがあげられた。また、システム側の問題点としては暗号化と認証の導入による情報の信頼性確保が不可欠との指摘がされた。
 杉本氏による50分にわたるプレゼンテーションの後、熱心な質疑応答と討論が行われた。以下は主な討議項目である。  その他、各大学が抱える種々の悩みについての報告と質疑が相次ぎ、私大におけるネットワーク利用が新しい段階に入ったことを実感させる分科会であった。



文責: 武蔵野工業大学 松山 実



第5回情報教育方法研究発表会報告



 「私立大学・短期大学の教職員による自主的な情報教育方法の研究を促進・奨励し、研究成果の発表・評価を通じて大学教育全般の質的向上をはかる」ことを目的に設立された情報教育方法研究会の第5回発表会は、情報教育問題フォーラム前日の平成9年6月30日(月)に開催された。今回の発表会は、第1次選考も兼ね、53件の研究発表が行われた。発表会当日に発表されたテーマ・発表者、内容は以下の通りである。
 その後、第2次選考も行われ、結果については、平成9年11月26日の私情協の臨時総会において発表される。



Aグループ

 Aグループ前半の内容は、A-1はインターネットを活用した英語の試験システムの試みについて発表された。インターネット活用によるメリット・デメリットについての説明が足りなかったことが残念であった。A-2は、数年にわたり工業英語の教育方法を試行した結果から、外国人教員と日本人教員との教育への関わり方について詳細な発表がなされ、また大学のCAIシステムについての説明も行われた。A-3については、英作文の授業の目的は英作文であって、コンピュータは書くための道具であるとの方針で教育を実施している。ライティングではプロセスアプローチにより英文の組み立てを教えているが、コンピュータリテラシについても、身につけたい技能や知識をプロセスに従い教えている。この結果、海外の研究成果を踏まえても、速いスピードでコンピュータリテラシ(技能)を修得させることができたとしている。プレゼンテーションも工夫されており理解しやすいものであった。また、A-4は、インターネット上で、ボランティア的に運営されているThe StudentESL Listを利用して、学生に英文練習をさせる試みで、注目される内容であった。教育効果などの分析も学生の使用した文型リストを示しながらなされ、理解しやすいものであった。この手法は実際にかなりの教育効果があるように理解される。着眼点が面白く、インターネットの機能をうまく利用した実験的教育である。A-5は、インターネットやWebないしプレゼンテーションについての知識を身につけさせるために、学生をコンピュータの販売店に連れていったりマイクロソフトなどの講演会に参加させるなど行い、学生はインターネットなどに興味を持つようになったとしているが、学習意欲を高めるための動機付けになっているかについての説明が欲しかったように思われた。A-6は、英語によるコミュニケーション能力を習得させることを目的として、インターネットを利用して、学生に課題テーマに関する情報収集や情報交換を行わせ、英作文の能力を高めるという内容であり、学生は自信を持って英語を書くことができるようになったなどの効果が報告された。A-7は、中国語の発声方法の図示と音声の提示、関連問題の表示、学習事跡の管理などCAIとしての基本的な機能はほとんどカバーしており、完成度の高い優れたソフトであると思われる。欲をいえば発声部分に動画を提示するなど、より音声面での練習をしやすくできればと思う。発表者は、プレゼンテーションについても要領よく発表され、システム的にはハイパーカードの能力をすべて引き出しているような努力作である。A-8はCAIとしての基本的な機能の多くも備えており、完成度の高いシステムといえる。発表では、問題文の作成が容易に行えるように工夫がされているとの指摘があり、利用者が自分の教育方針にあった教材作成ができるとのことである。コンピュータを利用したシステムの特徴や教育効果などをより前面に出したプレゼンテーションが欲しかったように思われた。



A-1 インターネットを利用した外国語学習のためのテストシステム
高千穂商科大学 佐藤 孝一氏

A-2 新しい英語教育方法とCAI利用
金沢工業大学 丸尾 和美氏

A-3 Computer Literacy and Writing in English
昭和女子大学 Kevin Ryan氏

A-4 発信型英語学習のためのインターネット利用
北星学園大学 早坂 慶子氏
札幌国際大学短期大学部 堀内満智子氏
北海道薬科大学 吉田 翠氏

A-5 インターネットを利用した教育で大学生をいかに動機付け学ばせるか
創価女子短期大学 南 紀子氏

A-6 インターネットを使った「問題解決型」英語学習・教育システム構築の試み
獨協大学 阿部 一氏

A-7 中国語CAI開発と実践
東海大学福岡短期大学 李 奉賢氏
伊津信之介氏、斎藤 守正氏

A-8 日本語学習者のための自習が可能な「漢字の読みCAI」の開発と授業
東海大学 中村 フサ子氏

 Aグループ後半の内容は、打鍵技術教授2件、卒業論文のCD-ROM化、経済学関連5件に分類される。打鍵技術教授の発表は独創性に優れてはいるが、既存技術があるため、改良研究との認識が一部にあった。CD-ROM化の発表はゼミ教育の活性化に有用で、またモチベーションの引き出しにも有効で今後普及する可能性はある。経済学関連の発表はCAI利用が主で、対象が主体行動理論入門、経済法の歴史、ネットワークビジネスゲーム、経済学コースウェアと多様であった。一部の発表を除くと、教育の方法論、道具が立派で、自作の教材やソフトの高い完成度、先進性が認められ、年々発表のレベルは向上していることが伺える。

A-10 情報教育初期段階の打鍵技術教授に関するある研究
成蹊大学 佐藤ヒロシ氏

A-11 表計算マクロ製タイプ練習盤の展開
近畿大学 林谷 嘉博氏

A-12 卒業論文のCD-ROM化−マルチメディア教育の実践−
桃山学院大学  佐々木 宏氏
杉尾 拓司氏

A-13 主体行動理論入門のためのCAIシステム
中京大学 木村 吉男氏、中山 恵子氏
南山大学 近藤 仁氏

A-14 年表と図表による経済法の歴史
九州国際大学 高場 俊光氏

A-15 ネットワークワイドビジネスゲームの開発−教育資産の相互活用を目指して−
武蔵工業大学 村原 貞夫氏、三田村二郎氏
北海道工業大学 藤田 勝康氏

A-16 シミュレーション機能を持つ経済学CAIコースウェア
関西学院大学 村田 治氏、長峰 純一氏、野田 泰史氏、高田 茂樹氏
関西福祉科学大学 高橋  亘氏

A-17 会計教育のファカルティ・ディベロップメントにおける情報技術の利用
東京情報大学 武井 敦夫氏


Bグループ

 Bグループ前半は、B-1は大人数でのパソコン教育にSPI/Sシステムを導入することにより、少ないパソコン数で多くの学生の授業を効率的に行うことが可能との報告がなされ、B-2はキャンパスLANを有効利用するためのLAN構築の設計指針について、実際の千葉工業大学のLAN構築事例を基に報告がなされた。B-3は出席管理や課題提示・提出などの教育環境を、全てWWWで提供することができる教育支援システムを開発することにより、情報の即時性やレポート収集の簡略化などの効果があるシステムが構築できたことが報告された。B-4は3次元CADを用いた教育教材の作成について報告がなされ、B-5はLANを利用したCAD設計を教育に導入した際の効果的なカリキュラム作成についての事例報告がなされた。B-6はLAN利用を前提とした3次元CADをWWWの上に独自に開発することにより、効果的なCAD教育を行うことができたことが報告され、B-7はWWWを用いた教育提示システムを作成し、学生がどの項目をアクセスするかを解析した結果を基に、有効なホームページ作成についての提案がなされた。B-8は旧式な計算機システムに低価格のUNIX OSを導入することにより、多くの予算を必要とせずに、計算機教育に有効に利用できる事例が報告された。

B-1 大人数プログラミング教育支援システムSPI/Sの開発
近畿大学 田中 弘氏、田中 敬一氏、鞆  大輔氏

B-2 キャンパスLANの教育・研究への有効利用に関する研究
千葉工業大学 竹本 篤郎氏

B-3 ユーザインターフェースを重視したコンピュータ演習環境の構築
いわき明星大学 吉田 裕樹氏、馬目 高伸氏、渡辺 景子氏、高山 文雄氏、川合 英氏

B-4 3次元CAD教育用教材の開発
日本工業大学 梅崎 栄作氏

B-5 LAN構築されたワークステーションを用いたCAD教育に関する研究
千葉工業大学 角張 健一氏、坂本 幸弘氏、竹本 篤郎氏、三須 直志氏

B-6 インターネットを利用した3次元CAD学習支援システムの開発
近畿大学 黒瀬 能聿氏、高山 智行氏

B-7 World Wide Webを用いた教材等提示システム−効果的情報提供のための試み−
大阪産業大学 大垣 斉氏、中村 孝氏

B-8 インターネット教育におけるワークステーションの端末機としての旧式のパソコンの活用について
近畿大学 ネルソン・ヘンリーエリック氏

 Bグループ後半は、現在の社会状況ではやはりinternetやWWW関連の話が多く(B-9,10,11,12,14,17,18)、どのようにして学生に学習の動機付けを行うかの試みや、具体的な授業法の紹介、その評価などについて発表が行われた。
 それ以外の発表のうち、B-13はリテラシーとして通常扱われる表計算ソフトが、その多機能性を生かすことにより、情報処理で扱う殆どの手段・題材を統一的に扱える画期的教材になりうることを実例とともに示した。
 B-15は当大学における情報処理授業受講学生に対するアンケート調査結果であった。今後のカリキュラム作成への参考になるであろう。B-16は計算機アーキテクチャ理解のために簡易マシン語で動く教育用コンピュータを自作し授業に用いているという発表であった。会場に実機が持ち込まれ、多くの聴取者の関心を引いていた。B-19は比較的小規模の文系大学でネットワークを安価に構築するために、全面的にFreeBSDを利用し、実現させたという発表であった。

B-9 WWWによる情報処理教育〜イベント開催とその成果〜
上武大学 宮坂 英輔氏

B-10 計算機利用の導入教育における授業計画の検討
福山大学 田中 始男氏、小林富士男氏

B-11 WWWによる情報創造・発信技術育成を目指した情報実験授業とその評価
拓殖大学 竹谷 誠氏、蓑原 隆氏、佐々木 整氏

B-12 一般教育におけるInternetの利用について
広島電機大学 中田美喜子氏

B-13 表計算ソフトウェアによるハイパーテキストの制作
兵庫大学 森下 博氏

B-14 情報教育における独創性・創造性と情報文化
立正大学 今井 賢氏

B-15 計算機科学実験の評価
岡山理科大学 大西 荘一氏

B-16 コンピュータアーキテクチャ理解のための実験教材の開発
帝京平成大学 弓手 康史氏

B-17 メディアリテラシーを活用したまちづくりに関わる知識・技法学習のためのカリキュラム開発とその実践
慶應義塾大学 金安 岩男氏、高森 要氏

B-18 インターネットの情報ネットワークによる地域広域情報システムの構築に関する研究
日本大学 大内 宏友氏

B-19 FreeBSDによる入門教育環境構築
九州国際大学 北川 正一氏


Cグループ

 Cグループ前半は、短期大学における情報リテラシー教育(情報処理I〜IV)の実践において、アプリケーションソフトの変更に伴う教育現場での混乱と、異なるソフトの学習の転移可能性の検討、および新しいWindows OSソフトの教育面での効用面と注意点、等についての報告がなされ、C-2は短期大学の自動車情報処理システム演習と情報処理教育等を短時間で効果的に実施するため、高度にマルチメディアスタジオ化され、また学外の遠隔教室とも双方向通信可能な最新のマルチメディア教室を構築し先進的な教育環境を構築していることが報告された。C-3は当短期大学での総合的情報教育についての10年間にわたる教育実践の足跡が紹介され、「不易」を一貫して追求されたこと、また、最近の情報機器の環境は操作性等の「流行」を越えてようやく「不易の情報教育」を展開できるようになってきたことが報告された。C-4は 小人数教育の持つ多大な有効性を大人数教育へ発展させるために大型スクリーン、OHC(書画カメラ)、AV機器、通信網と接続したパソコンを装備した大規模インテリジェント教室(700人教室)を設置して、レポート作成とその自己添削による個別教育指導を実践し、教育効果の急激な向上が見られたことが報告された。C-5は、大学における履修申告システムは教育支援システムの中核であり必須のものである。近年セメスター制の採用などで履修申告処理の複雑化、処理時間の短縮化が求められてきている。本発表の新システムではGUIを駆使したオンライン処理方式が採用されており、1日約3,700人分の処理が可能で数日間で履修者名簿の作成までの処理が可能との報告であった。C-6はOMRそのものは目新しいものではないが、本研究では学習の理解度を把握する手段として本教育支援システムを構築し活用されていることが報告された。特徴は解答の選択肢の並びを複数化するなどのカンニング対策の工夫等がなされており、また処理結果は表計算ソフトで直接処理されるなどの最新の技術も採り入れられている。C-7は、教育課程が改訂され、図書館学にもコンピュータを利用した情報検索等の実習が必修化されてきているという新しい時代の要請に対応して、充実した情報教育環境を構築した現状が発表された。C-8は、芸術系ではコンピュータ技術を応用することによって対話型の自己学習が可能になってきており、従来特殊な音楽訓練を必要とした楽曲創作をコンピュータを利用することによって「音楽的経験と知識に乏しい学生」が実践できるようになったことが報告され、教育演習・卒業研究に有効に活用されていることの具体的成果が卒業研究作品としてのコンピュータ演奏の披露を含めて報告された。

C-1 DOS Lotus1-2-3からWindows Excelへの切り換えについて
関西女子短期大学 永井 重良氏

C-2 マルチメディアスタジオ化された教室を利用した情報演習
大阪産業大学短期大学部 松本 章氏、浜田 耕治氏、山本 正樹氏

C-3 家政系短期大学における総合的情報教育の実践
武蔵野女子大学 矢内 秋生氏

C-4 小人数教育を推進するための効率的・効果的な大人数教育の教授法と教育システムの開発
東洋大学 森 彰氏

C-5 学生履修申告システム(Navigator)の構築について
東海大学 寺尾 裕氏、齋藤 聡氏

C-6 OMRを利用した小テスト支援システムの運用
いわき明星大学  馬目 高伸氏、川合 英俊氏、高山 文雄氏、吉田 裕樹氏、渡邉 景子氏

C-7 情報機器・ソフトを利用した図書館学教育の試み
別府大学 佐藤 允昭氏

C-8 コンピュータと電子楽器を結合した楽曲創作(教材作成)
武庫川女子大学 田村 嘉崇氏

Cグループ後半では9件の発表が行われた。それらのテーマには、デザイン系の学習、医学系、心理学、数学、物理、化学の学習など多岐にわたっている。
 今回のデザイン系は文字だけの発表であったり、資格検定試験の推進の経緯であったり、発表方法や内容的に適切でない傾向を示していた。医学系の発表もその開発ソフトは書籍から脱していない内容であったり、アニメーション導入の努力はあるものの単調であったり、発表方法にも工夫が少なかった。もう一つの発表の情報活用能力の調査などを含めて考察すると、ひとつひとつの研究内容は立派であるが、この研究発表会の主たる目的が、参加する教育者にまだ十分に理解されていない印象を深くした。この研究発表会の歴史がまだ浅いこともあるが、この会の目的なり主旨をさらに広報し、理解していただく必要があろう。
 しかし発表の中には、基礎心理学の学習ソフトや化合物決定の演習など、いくつかの開発ソフトは、アニメーションを巧みに使用し、学習者の動機づけを引き出す工夫がなされた優秀な研究作品であった。アニメーションやマルチメディアを自由に効果的に導入するには、使用するコンピュータの種類にも影響される傾向がある。よって、多くの教育者はコンピュータの専門家ではないものの、学習の動機づけに効果的な表現ができる機能を十分に理解して、情報機器を選択利用することも大切である。

C-9 デザイン系学生のためのコンピュータグラフィックス基礎教育
神戸芸術工科大学 木村 滋氏

C-10 アパレルCAD教育システム開発と資格検定の総合的研究
女子美術短期大学 小倉 文子氏、江川 澄子氏、佐藤 善一氏

C-11 国家試験対策CAI教材の作成と実行
城西大学 尾崎 裕氏

C-13 動画による心電図教育
東京女子医科大学 霜田 幸雄氏

C-14 CAI教材を用いた基礎心理学授業
関西学院大学 中澤 清氏

C-15 見て、触れて、考える、そしてわかる、数学教育
東海大学 渡辺 信氏

C-16 物理学における情報機器の活用−プログラミング学習について
鈴峯女子短期大学 加藤 一生氏

C-17 化合物構造決定演習のためのNMRCAI−その構築とインターネット環境での利用−
日本大学 杉山 邦夫氏

C-18 情報活用能力と他の能力の相関分析
東京家政学院短期大学 小池 澄男氏、原口 正行氏



文責: 東京工芸大学 杉山 精
  東京女子医科大学 石島 正之
  名古屋学院大学 岸田 賢治
  関西大学 東村 高良
  千葉経済大学短期大学部 井芹 康統
  日本大学短期大学部 荒関 仁志

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