特集
今泉 忠(広報委員会委員)
現在のノートパソコンの教育での活用の点から、事例による紹介を行った。そこで挙げられているのは、教育プログラムの開発や情報教育システムの運用維持などさまざまであるが、目的や問題点には、学部や大学規模やノートパソコンの導入方法などを問わず、
情報コンテンツの整備拡充による1学生当たりの利用時間の増加と利用者の増加へ対応するために、デスクトップパソコン設置教室の拡充などの対応も推進されてきた。しかし、この場合、学生が無条件にパソコンを占有できるのは、講義・演習時間に限られる場合が多いという問題がある。これを解消するとともに、より能動的に学習できる環境(場所や時間、利用方法に依存しない学生個人ごとの利用環境)を整備しようとする点から、ノートパソコンの導入が積極的に進められている。以前にも、省スペースの観点や異なった教室での利用などの点からもノートパソコンは導入されていた。しかし、いくつかの制約はあるが、表示画面も含むノートパソコンの基本性能の向上、ネットワーク接続の容易さ、軽量、接続カードの規格統一などの特徴を持つノートパソコンの導入は、多くの教育目標を達成する情報機器として、教育での活用に耐えうると考えられる。
しかし、一方では、学生毎に異なる利用環境をどのようにサポートするかいう解決しなければならない大きな問題点がある。これは、従来のデスクトップパソコンを整備した環境での利用を「プッシュ」型サービスとすると、場所のみが提供され、学生個々人の異なった学習環境に対応できる「プル」型サービスへの対応という二つの教育サービスを、ノートパソコンという情報機器を用いて、どのように実施して効果をもたらすかという新しい問題への対応も考える必要があるということである。
大学としては、今後ともにノートパソコン導入による教育環境の提示が十分価値あるものとしてなされていくためには、従来のデスクトップを利用した環境の整備・維持に加えて、ノートパソコンにおいても学生自身が容易に維持管理できる利用環境、容易なネットワークアクセス、ファイルサーバの整備、セキュリティ措置などを含めた教育環境の整備と、電源設備がなされた教室、演習室、学習室の整備を行っていく必要があろう。