特集

ノートパソコン利用を考える(事例6)


日本福祉大学情報社会科学部



1.はじめに

 日本福祉大学情報社会科学部は1995年4月に開設した。本学部では学部開設当初から入学時に携帯用ノートパソコンを1学年のほぼ全員(約200名)に購入させている。本稿では、学部開設後4年間のノートパソコンについての運用・管理・利用状況などについて紹介する。


2.ノートパソコン導入の経緯

 学部のコンセプトである情報システムプランナの育成のため、問題解決の手段として、いつでもどこからでも計算機を使える環境を学生に与えることを目的とし、情報処理演習の授業、学内での課題学習、自主学習、調査統計、卒業研究、および自宅学習などでの活用を想定して導入した。


3.導入形態および貸出措置

入学予定者全員に大学(実際は学園関連の業者)から機種斡旋の通知をし、希望者は購入する。何らかの事情により購入できない者、あるいは授業に持ってくるのを忘れた学生のために、毎年の斡旋機種と同一機種を貸出機として用意している。また、個人でノートパソコンを所有している者については、その機種が学内のネットワークを利用した授業に耐えうる仕様であることを前提として、授業での利用を認めている。過去の購入者数・自己所有者数等は表1の通りである。貸出機は95年度は40台、以降は毎年20台を大学が購入し、該当学生には貸与している。貸し出し管理は情報機器利用の学内の相談窓口であるTA相談室で行い、当日返却を原則としている。自宅等の学外への持ち出しは認めていないが、夏季休暇等長期休暇中については、指導教員の責任で学生に長期貸出を行う例もある。年間貸し出し機の利用希望者は年々増加傾向にあり、その7割は留学生である。故障し、修理に時間がかかる場合の代替機として、販売メーカの負担で予備機を毎年5台用意している。予備機は自宅への持ち帰りも認めている。現在TA相談室では合計100台の貸出機と20台の予備機を管理している。

表1 過去4年間の購入状況
  学生数 購 入 購入率 年間
貸出
自己
所有
95年度
96年度
97年度
98年度
206
225
248
209
200
210
234
191
97.1%
93.3%
94.4%
91.4%
5
7
9
10
1
8
5
8

4.斡旋機種

 過去4年間の斡旋機種は表2の通りであり、学生への斡旋価格はいずれも大学側が定めた一定水準の金額以下である。機種(業者)選定のポイントは、最低仕様と価格条件を満たしていること以外に、保守条件・学内環境向けの初期設定などのサポート体制も重視した。納品は3月中旬頃までに行い、学内環境で利用するためのネットワーク設定、各種フリーソフトのインストールを行い、マスタ機を作成する。それを学内のサーバから全PCに複製する。アプリケーション(MS-Officeなど)のインストールは1台ずつ個別に行っている。
 学生への引き渡しおよび機器の取り扱い説明は4月上旬の情報処理演習の初回授業時に行う。

表2 過去4年間の機種と主な仕様
年度 機種 CPU メモリ HDD Display その他
95 FMV-450
N/SI
1486DX
50MHz
12
MB
250
MB
9.4DSTN
640*480
 
96 FMV-575
NU/Y
Pentium
75MHz
16
MB
540
MB
10.4DSTN
800*600
 
97 FMV-5120
NU2/Y
Pentium
120MHz
32
MB
1.0
GB
11.3DSTN
800*600
CD-ROM
98 FMV-5200
FP8/W
MMX Pentium
200MHz
32
MB
2.1
GB
12.1TFT
800*600
モデム内蔵
拡張ステーション
99
予定
FMV-6266
NS3/X
Pentium II
266MHz
32
MB
3.2
GB
13.3TFT
1024*768
モデム内蔵
コンパクトベース

5.利用者負担

 購入時の費用は全額個人負担である。支払いは一括が基本であるが、個人の事情等を考慮し、分割払いを認めた例もある。年間貸し出しおよび一時貸し出し、予備機の利用については利用者負担はない。


6.授業での活用

 学内にはノートパソコンの利用が可能な演習室が4教室(40〜80人)あり、「情報処理演習1」、「データベース論」、「統計学基礎」などの授業でノートパソコンを利用してきた。情報処理演習のクラスサイズは40名である。
 また、毎年新機種に変わることにより、授業の科目担当者へは、授業期間について同一機種の貸出しも行っている。ノートパソコンを利用する授業は1年生の授業に集中しているが、随時ノートパソコンを使用する授業もある。また卒業研究での利用率(一時貸出)は極めて高い。学部完成後の99年度からは情報教育の改革が行われ、新カリキュラムではUNIXやC言語の自宅学習が可能となるよう、Windows98とLinuxのマルチOS環境とすることも検討している。


7.ネットワーク環境・自宅からのアクセス環境

 学内では、演習室、講義室、図書館、学生ラウンジなど、ほとんどの場所に情報コンセントが設置されている。半田・美浜・名古屋キャンパス間接続の他、学外とはSINET(学術系768K)、CTCN(商用系1.5M)のマルチホーム環境となっている。リモートアクセス環境は、公衆回線経由で、回線数は99年1月現在でアナログ11回線、ISDN4回線、合計15回線。98年度の機種からはモデム内蔵であり、現在のダイヤルアップ回線数では不足することは必至であるため、99年度前期中には回線数の大幅増設を計画している。自宅からの利用時も、ほぼ学内と同じように各種サーバの利用、インターネットの利用、プリンタ出力などが可能である。ダイヤルアップ接続者の比率は、モデム非内蔵の機種を所有する学生で約20%(個人でモデムを購入)、モデム内蔵機種の所有者については40%を越える。初めから環境を与えられることが、動機づけにつながっていることがうかがえる。


8.保守管理体制

 1年目は無償、2年目以降は年額5,000円で希望者のみ保守契約を結んでいる。2年目に保守契約をする学生は全体の約半数である。故障の1次対応窓口はTA相談室で、原因の切り分け(ソフトウェアかハードウェアか)を行い、ハードの場合は保守会社のCEに連絡する。通常は当日、遅くとも翌日午前には故障機の修理対応が可能である。


9.故障発生状況

 過去4年間の故障発生件数は図1の通りである。年々の稼動台数の増加(98年度で950台)に伴って、当然故障台数は多くなっており、故障率は6%程度である。年ごとの機種によって故障の発生個所に特徴があり、98年度ではハードディスクの故障が多い(図2)。(95年度の機種ではLCD表示部、96年度の機種では電源部の故障が最も多かった。)


図1 故障件数


図2 故障箇所(98年度)


10.現在の問題点と課題

 年々の機種の急速な進化に耐えうるようにいかに高性能な仕様の機種を一定水準の金額内で斡旋できるかが毎年最大の課題である。また、学生へ引き渡されたPC上のアプリケーション(MS-Office)はアカデミックパッケージで、学生自身の所有であり、ライセンス登録、バージョンアップ等は個人の責任(費用)で行うべきである。しかし教室のPCのアプリケーションのバージョンアップ時に当然個人のノートパソコンも大学がバージョンアップしてくれるものと思っている学生が多く、ソフトウェアの著作権についての再認識も必要である。
 また現在は個人が購入したノートパソコンを使用して授業が行われており、9割以上の購入率となっているが、99年夏の設備更新(PC設置教室の増設)によって、授業の前提が必ずしも学生所有のノートパソコンではなくなるので、2000年度以降については学生への斡旋方法については見直しが行われる可能性もある。大学が学生にノートパソコンを貸与する場合についての補助金の上限枠の拡大および優先的な採択が明確になれば、貸与も選択肢のひとつになると考えられる。



文責: 日本福祉大学半田事務部
  ネットワーク管理課 斎藤 真左樹

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