特集

ノートパソコン利用を考える(事例7)


東京理科大学諏訪短期大学経営情報学科



1.はじめに

 本学経営情報学科では、コンピュータリテラシーおよびネットワークリテラシーの教育を充実するため、いつでもどこでも自由に使えるPCが必要であると考えた。入学時に学校指定のノートパソコンを全員に購入してもらい、教育に活用している。新入生は公開入札で決定された指定業者から、指定されたノートパソコン一式(重量2Kg以下の本体、マウス、ネットワークカード、モデム)と基本ソフト(OS、MS-Office)を全額負担で購入する。一括払いができない場合は、分割払いができるようになっている。学生の負担を軽くするため、学科で品質管理支援システム・Visual Basic・Visual C++をライセンス購入し、受講生は講義第1回目に自分のノートパソコンにネットワーク経由でソフトウェアをインストールし、最終講義時にアンインストールしている。学生が学内のみならず、自宅でもノートパソコンを利用できるように、本体重量は2Kg以下の機種を使用している。また、学外からネットワークが利用できるように、RAS(Remote Access Service)を16回線用意している。
 ノートパソコンの利用は1994年10月から検討を始め、本学の3学科(電子工学科・生産管理工学科・経営情報学科いずれも定員100名)のうち経営情報学科のみが、1996年度入学生から実施した。事前準備として、すべての研究室にデスクトップPCだけでなくノートパソコンも準備し、教員に対するネットワークリテラシー教育も行った。この結果、すべての専任教員が開始年度までに電子メールを活用できるようになっていた。


2.ノートパソコンを活用している授業内容と効果

 次のような授業でノートパソコンを活用している。

(1)リテラシー教育

  1. コンピュータ演習(1年前期必修)
    MS-Word、MS-Excelの基本的な使い方の修得を目的としている。

  2. マルチメディア演習(1年前期必修)
    ネットワークの基本的な使い方の修得を目的としている。電子メール、学内LAN、インターネットの利用、個人ホームページの作成などを修得する。これにより、学生からの質問あるいは事務連絡などが、すべて電子メールで行えるようになる。他学科を含めた、学生一人あたりのRASおよび電子メールの利用状況を表に示す。

表1 RAS平均利用回数
学科 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1SD 0.0 0.0 0.1 0.4 0.6 1.4 1.8 2.3 1.6
2SD 0.8 0.7 0.8 1.2 0.9 1.0 1.1 1.3 0.9
1SS 0.0 0.1 0.3 0.5 0.6 0.6 0.6 1.0 0.8
2SS 1.1 1.4 2.0 1.7 2.4 4.0 5.3 6.6 5.6
1SK 12.9 13.6 15.0 18.0 13.9 21.9 21.0 18.8 19.5
2SK 21.2 22.5 24.2 22.1 23.1 20.2 17.3 15.8 16.7


表2 電子メール平均送信数
学科 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1SD 0.0 4.7 2.1 2.7 0.5 0.8 1.1 1.0 1.0
2SD 1.0 1.3 2.3 2.3 1.9 2.1 1.7 1.6 1.9
1SS 0.0 0.0 0.1 4.2 0.8 0.6 0.9 1.2 1.5
2SS 3.1 2.9 2.2 2.7 2.5 2.4 1.5 1.3 1.7
1SK 3.1 30.0 30.8 34.4 15.5 60.3 113.0 134.2 79.8
2SK 94.3 85.3 114.0 103.3 76.2 87.0 76.3 76.3 68.0


表3 電子メール平均受信数
学科 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1SD 0.0 6.5 3.1 4.7 1.8 1.3 2.2 2.7 1.9
2SD 2.3 3.3 4.7 4.1 2.7 3.7 4.8 4.3 3.3
1SS 0.0 0.0 0.4 6.5 1.6 1.4 2.4 2.7 1.6
2SS 4.7 5.9 5.0 5.9 5.0 5.8 6.2 7.8 6.3
1SK 14.4 106.2 60.8 61.9 29.4 98.1 207.1 181.5 164.8
2SK 181.1 178.8 176.1 199.6 131.7 166.3 181.6 222.1 194.1

     表より、経営情報学科(SK)の利用が他の2学科(SD,SS)よりも多いことが分かる。他学科も、電子メールの利用方法などを演習科目で教育しているが、組織(学科)単位で活用する環境がないと、電子メール利用は定着しないことが表からわかる。
     当学科の学生は、レポートをLAN経由で学科教育支援PCサーバに提出している。今年度の場合、4〜12月に学生がサーバに提出したレポート総数は、1人あたり平均118本であった。

  1. 情報処理演習(1年後期必修)
     MS-Powerpoint、MS-Accessの基本的な使い方の修得。
     学生はPowerPointを活用し、プレゼンテーションをする。また、Accessを使いデータベースの構築を行う。


(2)プログラミング教育

  1. Visual Basic演習(1年後期必修)

  2. プログラミング言語(1年後期選択必修)
     アルゴリズム・PD(Program flowchart Diagram)の修得、Comet&Caslの修得

  3. Visual C++演習I(2年前期必修)

  4. Visual C++演習II(2年後期選択)


(3)専門教育科目

 専門科目の理解を助けるために情報の収集・加工・及び発信のツールとしてノートパソコンを活用している。
  1. コンピュータ会計(2年後期選択)
    会計理論をMS-Excelで修得する。

  2. 経営学I・II(1年前期・後期必修)
    企業の組織・財務情報をWWWサーバから検索し教材として利用している。

  3. 情報社会論及び地域産業論(1年前期・後期選択)
    メーリングリストをディスカッションの場として活用している。

  4. 統計学I・II(1年前期・後期必修)
     統計的データ解析をMS-Excelを使って修得する。

  5. 品質管理I・II(2年前期・後期 必修・選択)
    統計的品質管理を品質管理支援システムを使って修得する。

  6. ネットワーク論(2年前期選択)
    TCP/IPの理解を助けるために活用する。

  7. コンピュータ利用技術(2年後期選択)
    ノートパソコンをWWWサーバとして、WWWとデータベースの連携を学習する。


3.支援体制と保守体制

 授業でのノートパソコンの利用は、原則として授業担当教員が運用する。授業の支援として、学科独自の教育支援PCサーバを管理運用している。この教育支援PCサーバの役割は、出席管理システム、学生のホーム領域、レポート提出領域、例題提示領域、プリンタサーバ機能、メールサーバ機能、メーリングリストサーバ機能である。学科がPCサーバを運用することにより、情報処理センタの運営規則に縛られることなく、学科独自の機能を付け加えたり、学科教員の要求に短期間で対応できる環境となっている。
 学生が使用しているノートパソコンの保守は、付属品を含めたハードウェアの障害に関しては、情報処理センタの専任職員2名が窓口となり、修理は購入業者が行っている。学生と購入業者との間で2年間の保守契約を結んでいる。また、修理期間中に使用する代替機として複数台の同型機を用意している。ソフトウェアに関する障害は再インストールも含めて、情報処理センタの専任職員2名が対応する。情報処理センタとは別に、学生アルバイトで構成されたPCCC(Personal Computer Consulting Center)がある。学生は気軽にPC操作や設定に関して質問できる環境となっている。


4.本学のネットワーク環境

 授業で利用可能な情報コンセントは、380名収容可能な大教室に173ポート、40名収容可能なゼミ室に23ポートある。そのほかに、講義の空き時間に学生がインターネットおよび学内LANを利用できるように、学生ラウンジに20ポート、PCCC広場に10ポートの情報コンセントを用意してある。情報コンセントが設置された場所には、ネットワークプリンタも設置してある。また、学外から学内のネットワークが利用できるようにRASを16回線使用しているが、アクセス回数が多いために接続しづらい状態になりつつあるので、1999年4月には、デジタル・アナログ共用23回線に増設する予定である。本学は512kbpsの専用線で、東京理科大学神楽坂校舎を経由しインターネットに接続している。回線の細さは、プロキシサーバを使うことにより補っているが、1999年4月に2Mbpsに増強する予定である。


5.現在の問題点

 現在の問題点としては、授業でパソコンを利用する部分のテキストは自作しており、テキスト作成に使われる時間がかなり多いことと、学科の情報系教員が教育支援サーバの管理運用をしており、この負担も大きいことである。



文責: 東京理科大学諏訪短期大学
  経営情報学科講師 広瀬 啓雄
  経営情報学科助教授 奥原 正夫

【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】