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岳 五一(甲南大学理学部応用数学科)
松本 茂樹(甲南大学理学部経営理学科)
板書では、数式、複雑な概念図、プログラムなどの説明は時間がかかり、補足説明や学生の理解度をチェックしながらの授業進行は困難である。
学生はノート写しで精一杯のため、授業内容を聞きながら理解することは難しい。
個々の学生の学力レベル・学習進捗状況などに応じた柔軟な教育を行うことが困難である。
学生の基礎知識の格差が大きく、異なる思考方法を持っているため、同じ授業内容の理解に要する時間がかなり違う。それによって生じた学生間の学習速度のばらつきが激しい。
大教室の場合、後ろの学生は板書の字やスクリーンがよく見えず、講義の効果が得られにくい。
多人数のため、課題の登録、学生のレポートの提出と評価の登録などの作業は、大量の時間を要する上、記入漏れなども発生しやすい。
インターネット上で学習ができるように、教材をWebページとして作成した。操作性がよく、使い易いWebページを作成するため、フレーム、テーブル、アンカーポイント等を容易に作ることができる多機能のホームページ制作ソフト「DREAMWEAVER J」や「FrontPage Express」を使用した。また、概念図を作成するためにほとんどのコンピュータにインストールしてある「MS-PowerPoint」を使い、画像の形式変換のために「MS-Photo Editor」、Windowsに付属の「ペイント」を使用した。
音声、静止・動画像、グラフや写真、ビデオなどをコンピュータに取り込み、また、ホームページ上で他の言語(Visual C++、Mathematica等)を起動できるブラウザなどを取り込んでいる。
講義要項・シラバス、授業内容のテキストを掲載し、学習目標と目標達成の計画を明示し、授業・試験情報、試験過去問題、模範解答を挙げている。
関連あるページにリンクを張り、3)の各項目にジャンプできるように設定している。
画像ファイルをGIFファイル(拡張子.gif)で保存する。これは、GIFファイルの容量が小さく、教材への接続にかかる時間や、学生が画像をダウンロードする時間の節約になるためである。
CGIを用いて課題・レポート提出フォーム、クイズページ、掲示板などを用意した。課題・レポート提出フォームは書き込み後、ネットワークを介して教員宛に提出できる。クイズページは、データベースからランダムに問題が出題され、解答後、自動採点結果と正解が表示される。掲示板では、教師からは課題に対するコメント・質問の解答・連絡事項等が掲示され、学生からは質問、講義、課題に対するコメントが掲示される。さらに、学生の要望に沿うように教材内容を追加更新すること、返信機能で書き込みに対する個別な対応をすること、または即時的な対話機能により、教材に双方向性をもたせるようにした。
教員による課題の登録では、教員があらかじめ用意した定型フォームを指定することができる。定型フォームを利用すれば統一されたフォーマットで課題を受け取ることができる。学生による課題提出では、いかなる形式のファイルでも送信することができるため、文章だけでなく様々なマルチメディア情報を取り込んだ表現豊かなレポートを作成し、提出することができる。学生から提出された課題はブラウザ上で課題の評価、成績の登録、学生への課題に対するコメントの登録ができ、また成績一覧、課題提出状況をソートして表示することができる。そして成績ファイルをダウンロードすることも可能である。
講義室での一般授業はノートパソコン、液晶プロジェクターを利用して講義を行う。学生の解答にある問題を説明すると同時に、模範解答例や学生の発見的な解答について説明するなどの主要機能を備えている。
情報の信頼性を確保し、不正進入を防ぐために、講義受講者にはユーザIDとパスワードを配布し、「.htaccess」ファイルによるパスワード認証を行う。
そして、本システムを用いる教員側では、マルチメディア教材を以下のように作成できる。
各自今まで持っている講義ノートや講義プリント、その他OHP教材などを、スキャナーなどで取り込む。
講義ノートや講義プリントなどの文字はOCR(Optical Character Reader)ソフトによってテキストデータに変換する。
「MS-PowerPoint」または、「MS-Word」で作成した以前から使用している講義資料等はまずWordやPowerPoint で既存のファイルを開き、それをHTMLファイル(拡張子.htm)に変換する。
PowerPointやWordの画像ファイルの処理に対して、使用される機種・ソフトでは性能不足の場合、ペイントソフトを使用し画像ファイルを作成して、ホームページ作成ソフト(FrontPage Express)に貼り付ける。
こうして得られたHTMLファイルをWWWサーバ上に転送することによって、WWW上でマルチメディア教材を提供することができる。また、学生や教員からの新しい要求に応じて、リアルタイムで日々更新される生きた情報に簡単に書き換えることができる。
ホームページ上では講義・学習基本教材以外に、Mathematicaの習得マニュアルや、あらゆる状況に応じてパラメータの値が変更可能であるような計算やグラフィックスによって理解を深める演習課題を多く載せている。
学生がMathematicaを手持ちのコンピュータにインストールし、インターネットを介して学習を可能とする環境を構築していくことを進める。
Mathematicaを用いて微積分の理論や実例の研究、課題の提出などを行う。
マルチメディアを活用した本研究をもとに、今後の教育のあり方、考えられる具体的な実現方法を提案する。
本システムは現在、利用エリアと利用者を限定して試験運用中であるが、新学期に向けて実用化される。そこで多くの利用者から意見を聞き、よりよいシステムになるように改善していきたい。
本システムの活用においては、暗号化と認証の導入による情報の信頼性確保、教員が教材のホームページを活用する場合の対面授業との相互関係や、学生がホームページを作成・利用する場合の情報倫理教育、規定・ガイドラインの作成が不可欠である。研究調査の上具体案を作っていきたい。
教育目的のコンセンサスを確立し、これまでの教育内容をよく吟味した後、ネットワーク活用を織り込んだ新カリキュラムを設計する。