私情協ニュース4
第6回短期大学部門会議開催概要
第6回短期大学部門検討会議は、去る1月23日に園田学園女子大学で開催され、64短期大学から96名が参加した。以下に会議の概要を紹介する。
1.短期型基礎的情報教育事例紹介
2短期大学から「集中型による基礎的情報教育の展開例」の紹介があった。
まず、金蘭短期大学の柳瀬優二氏から「短期ガイダンス型情報教育」について次のような紹介があった。
本学は英文科、国文科、生活科学科という教養を中心とする学校である。入学後のオリエンテーションの期間に、キャンパスネット利用ガイダンスを90分で行っている。
設備的には、五つの教室と自習室、授業を離れて自由にパソコンが使えるオープンコミュニケーションコーナーを設けている。入学式のときに教材としてのハンドブックとパスワードを一緒に渡している。90分のガイダンスなので学校の環境を簡単に説明する程度の内容である。ねらいは、高校の環境と大学の環境とは違う点を知ってもらうところにある。
対象学生数は約1,300人で、20〜30人程度を1クラスとして、60回行っている。講師側の体制は、派遣講師として20数人来てもらい、学生10人に1人のアシスタントと講師で1チームを作りリハーサルを行ない、五つのチームに分かれて行う。内容としては、電源を入れてログオン、ユーザ名、パスワードを入れてWWWと電子メール、ログオフして電源を切るといったほんの入口である。また、電子メールの講習が友達のできるきっかけになるといった、想定していなかった大きな効果がみられた。
このような短期ガイダンス型情報教育を行なってきた成果として、学生の能力が向上した。学生は電子メールを使っているのは当然となり、自分が見たホームページについて互いに情報交換しあうようになった。
次に産能短期大学の江崎和夫氏から「情報リテラシー教育の短期集中型授業」について、次のような紹介がされた。
本学は第I部に経営情報処理、秘書、経営能率の3専攻、第II部にビジネス、情報実務、経営・会計の3コースをもっている。情報環境の特徴はノート型パソコンのネットワークにある。1996年から全学生が入学時点にノート型パソコンを購入して、学校と自宅で自由にパソコンを利用できるようになっている。学内の委託研究制度を利用して情報リテラシー科目の開発を行い、全学的な共通科目とした。科目は「パソコン基礎演習I」、「パソコン基礎演習II」、「情報活用」、「仕事とコンピュータ」の4科目である。短期集中型授業は、パソコン基礎演習IIで行っている。
パソコン基礎演習IIは、50人を1クラスとして第I部、第II部合せて18クラスある。授業の目的はワープロをマスターする点にある。内容としては、ワープロソフトの操作のマスター、ビジネス文書などさまざまな書式の文書を作成できること、表や図を含むビジュアルで分かりやすい文書を作成できるようにすることにある。これを3日間で完全にマスターしてもらうという形で、1年の前期5月の中旬から下旬にかけて行っている。
クラス数が多いので、レベル的にも内容的にも揃えるために主務者を設けて、主務者がシラバス、共通課題、共通試験問題を作るという形になっている。第I部では、専任教員と兼任教員が担当して、兼任教員ミーティングを行い、2年生をTAとしてクラスに1〜3人程度配して行っている。第II部では、教員がコントロールして卒業生のインストラクタ経験者を起用しており、インストラクタに対する学生の評価は高い。
2.基礎的情報教育における多様な授業の運営モデルの提示
短期大学会議運営委員会より「基礎的情報教育の多様な授業運営のモデル」の提示について、次のような説明があった。
これまでの短期大学会議の経緯から、モデルシラバスとして示してきた情報活用A、B、C、Dの4科目構成を短縮した半期型授業、短期集中型授業、そのほかに専門科目型授業を取りまとめた。
半期型授業は、半期2コマの授業で26回〜28回の授業回数で展開するための週別シラバス、各授業回ごとの授業内容を時間配分、説明内容、実習、演習、課題などの形で示している。また、それぞれに必要であると思われる教材例もあげてある。
短期集中型授業は、単位取得を伴わない開講を前提として、最低限の基礎的情報教育を授業開始前のオリエンテーション期間中などで集中して行うためのモデルである。このモデルでは、90分で行う「90分型」、180分程度で行う「半日型」、1日かけて行う「1日型」のシラバスを示している。
専門科目型授業は、基礎的情報教育を専門科目の授業の中で展開したときの事例を2つ示している。今回は、十文字学園女子短期大学の古松弥生氏から「生活科学における情報活用の試み」、東京女学館短期大学の麦倉 哲氏から「社会調査法」で情報活用を応用した事例について紹介がなされた。
今回示したモデルおよび教材の内容についての意見交換の結果、高等学校の学習指導要領の動向を踏まえ、さらに手を加えてまとめていきたい。
3.全体会議
「基礎的情報教育の多様な授業の運営モデルの提示」を受けて、以下のような質疑応答、意見交換が行われた。
−授業運営に関して−
- 全員に同じような理解をさせて単位を出したいが、欠席が多い学生、習熟度の遅れている学生などに対して、別に時間を取るなどの工夫をしている例を知りたい。
→授業内容の概要や機器の操作手順を、プリントで配布するなどの工夫をする。
→能力差の問題なので、これをやればよいというような解決策はないのでは。
−授業内容に関して−
- 提示されたシラバスのモデルでは、週2コマの形で28回授業になっているが、半期13回でやっている短大もある。
- 90分の短期集中型授業も提示されているが、内容が多いため、実際に90分で実施するのは時間的に難しいと思う。
→2003年からの高等学校での授業が始まり、その卒業生が入ってくるまでは、このシラバスの内容ぐらいのことは身につける必要がある。
- 90分モデルでキーボード練習を入れてもらえばよい。来年度これを110分から120分の間で消化してみたい。
- 一番最初にキーボードに慣れさせるという部分が必要と思うが。
→タイピングについては、ある程度できるというのが前提である。できない学生については短期型授業のような形でガイダンス時にその習熟度を揃えるといったことが考えられる。
→能力差がでるところなので、授業外で何かサポートする体制があればよい。
→委員会では基礎的な情報教育として最低限必要と思われる部分をシラバスのモデルとして提示しており、タイピングについては授業外で行うものと考えている。
−授業・教室の体制に関して−
- このカリキュラムの前提として1クラスの規模と教師の配置などは想定されているのか。
→クラスの規模などは想定していない。各短期大学でそれぞれの状況に応じた規模で提示したシラバスを参考にして頂きたい。
- 専門科目でコンピュータを使いたいという要請があり、コンピュータ教室と台数の面で制限しているが、この点を調整されている例を知りたい。
→事例で紹介した例は、基礎教育の科目も専門科目も十分にコンピュータ教室を確保してというのが前提である。
→4年生大学と併設されている短大では、学生全員にノートパソコンをもたせているところもある。
→補助金なども利用して専門科目が使えるような演習室を作っていくことも考慮に入れる必要があるだろう。
また、事務局より大学の教育を活性化していくための11年度の新しい補助金について説明があった。
その後、園田学園女子大学の施設見学があり、多くの参加者が情報教育センター等を見学した。
最後に、会場校をお引き受け下さった園田学園女子大学の関係教職員ならびにアシスタントの学生の皆様に敬意を表します。
文責: |
短期大学会議運営委員会委員長 |
|
東海大学短期大学部教授 加藤 昭 |
【目次へ戻る】
【バックナンバー 一覧へ戻る】