第2分科会 教職員が連携した戦略的な教育支援
討議概要
本分科会では、「ITを活用した戦略的教育支援モデル」を導き出す活動を通じて教育改革を推進するにあたっての課題を認識し、これを組織的に解決する際に備えるべき視点を獲得することを目指した。
参加者は、研修に先立ち自大学の取組や問題意識をメーリングリスト上で交換し、分科会の冒頭で入学前教育におけるeラーニング活用事例の紹介を受け、IT活用の可能性と課題について認識を深めるとともに、岩井洋氏(関西国際大学教授)とのディスカッションを通じ、教育目標を明確化し、PDCAサイクルに基づくシステム的なアプローチで教育改革に向き合うことの重要性を学んだ。その後、7名ずつの2グループに別れ、戦略的な教育支援モデルの創出に取り組んだ。完成したモデルは、教育の情報化をPDCAの枠組みで推進する教職連携の支援体制であり、教員の目標マップを取り入れた独創的な教授法改善プログラムであった。最終日にはグループ間の相互評価により自グループの検討経過を振り返り、研修後もメーリングリスト上で初期モデルの改訂作業を進めることとした。
組織的な教育支援の取組は、今なお多くの大学で構築途上にある。今後も手段としてのIT活用事例を参照しながら、本質的な議論の中から教育改革をマネジメントする意欲と資質を磨く実践的な研修が求められよう。参加者から提示されたアクションプランを見ると、研修の成果を関係職員や関連部局に示しながら自大学の教育改革にフィードバックしたいという意欲的な態度が認められ、本分科会の目標は十分に達成されたと考える。
報告書
討議まとめ
(1)分科会のねらいに対する結論
参加者は研修に先立ち、メーリングリスト上でのディスカッションを通じて所属する大学が抱える問題に改めて向き合い、その課題を相互に共有した。また、分科会冒頭では、入学前教育におけるeラーニング活用事例の紹介を受け、IT活用の可能性と課題について認識を深めることができた。そして、関西国際大学の岩井先生との膝を交えた意見交換では、教育目標を明確化し、PDCAサイクルに基づくシステム的なアプローチで教育改革に向き合うことの重要性を学び、教職員が連携した戦略的な教育支援について新たな視点を獲得することができた。
このように参加者の内発的な動機付けを経て自由闊達な討論の中から創出された「ITを活用した教育支援モデル」は、いずれも実践的、戦略的で完成度の高い内容となった。また、これをグループ間で相互評価する作業を通じて、自グループの検討経過を振り返り、教育改革に求められる視座と視点に関する理解の深化、意識の発揚が図られたものと考える。これは、研修会終了後もメーリングリスト上で活発な意見交換が行われていたことにも現れており、参加者から提示されたアクションプランにも「研修の成果を関係職員や関連部局に示しながら自大学の教育改革にフィードバックしたい」という意欲的な態度が認められた。
集合研修は3日間という短い時間ではあったが、事前ディスカッションから事後研修を通じて、すべての参加者の主体的かつ積極的な取り組みにより、分科会のねらいである、「教育改革を推進するにあったての課題を認識し、これを組織的に解決する際に備えるべき視点を獲得する」ことは十分に達成されたものと考える。
(2)討議テーマに対する結論
本分科会では、4つの討議テーマを掲げてグループワークによる戦略的な教育支援モデルの創出作業を行った。分科会終了後、討議テーマ別の目標達成度について「十分達成できた」、「概ね達成できた」、「もう一息」、「評価不能(この議論はしなかった)」の4段階で自己評価を行った。その結果は以下のとおりである。なお、カッコ内の数字は「十分達成できた」と「概ね達成できた」と回答した割合の合計である。
・FDを推進するIT活用モデルを検討するプロセスを通じて自大学において戦略的な教育支援を展開する際に解決すべき課題を認識する(92.3%)
十分達成 15.4%、概ね達成 76.9%、もう一息 0.0%、評価不能 7.7%
・教育資源のアーカイブ化と共有及び再利用に期待される効果と課題を明らかにする(30.8%)
十分達成 7.7%、概ね達成 23.1%、もう一息 53.8%、評価不能 15.4%
・教育活動の成果や学生の成長を総括的に評価するためのIT活用モデルを具体化するにあたっての参考情報や新たな視点を得る(84.6%)
十分達成 30.8%、概ね達成 53.8%、もう一息 7.7%、評価不能 7.7%
・ITを活用した授業改善を支援する組織的な体制を構築するにあたって求められる視点を明らかにする(100.0%)
十分達成 33.3%、概ね達成 66.7%、もう一息 0.0%、評価不能 0.0%
討議テーマのうち「教育資源のアーカイブ化」については議論の流れの中で十分に検討を尽くせなかったグループもあり、達成度は高くないが、その他のテーマについては深い議論が展開できたようである。特に、「教育活動の評価方法」、「授業改善を支援する組織体制」では、「十分に達成できた」との最高評価が3割を超えている点は注目に値する。グループ討議の最初の段階では、このテーマ設定(特にすべてのテーマにIT活用の視点が求められている点)に難しさを感じていたようであったが、各グループともに早い段階で確かな軸を見出し、本質的な議論が展開できたのは、メーリングリストでの事前研修や岩井先生を交えたミニ討議を通じてすべての参加者が高い問題意識を持ってグループ討議に臨んだ結果であろう。
現代社会のニーズに応えるため、教育改善を組織的に支援するという課題は、今後ますます重要になっていく。これを具現化する実践的方略は、多様化と統合を繰り返しながら弛まない進化を遂げていかなければならない。その際、組織的教育支援を効率的かつ経済的に実現するための手段としてITの活用は重要な構成要素として位置づくであろう。今後も手段としてのIT活用事例を参照しながら、本質的な議論の中から教育改革をマネジメントする意欲と資質を磨く実践的な研修が求められよう。
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