第3分科会 キャンパスライフを支援する効果的なIT活用法
討議概要
本分科会は、学生のキャンパスライフを支援するためのITの活用について先進的な事例を学ぶとともに、参加者相互の意見交換により、参加者一人ひとりの問題意識の高揚と意識改革のきっかけを提供することをねらいとした。参加者には予め各大学の「現状」「問題」「今後」について事前レポートの作成をお願いし、問題点の明確化をはかるととともに、レポートをグループ討議の基礎資料とした。
冒頭、大阪学院大学と関東学院大学から実践事例の報告をしていただいた。前者は、情報リテラシーの向上をテーマとしたもの、後者は入学前教育をテーマとしたものであり、いずれも先進的事例であったため、参加者にとって有益なものとなった。
グループ討議は15人ずつ程度の2グループに分割して行った。両グループとも「学生生活に役立つポータルサイトのあり方」を中心にその他のサブテーマ(「携帯電話・携帯端末等を用いた学生支援のIT活用モデル」、「多様化する学生への個別指導・個別支援に有効なIT活用」、「多種多様なサービスの整理統合」)と関連付けながら討議を進めた。ポータルサイトの機能面での検討については、必要な機能を利用者(学生)側に立って分析し改善に繋げることが肝要であると結論付けられた。また、運用面からの検討では、コミュニケーション・ツールとしての限界を検証することの必要性があること、より有効な活用なために教職員の意識改革が必要であることが確認された。
テーマの特性上、多様な観点から複数の課題を整理しなければならず、時間的制約から必ずしも議論が収束しない場面もあったが、一方で各大学の実情や問題意識を相互交換するプロセスを通じて、それぞれの参加者が自大学で抱える課題を再確認し、その認識を深め、問題解決のアプローチについて示唆を得るなど実践的な研修成果を得ることができた。
報告書
討議まとめ
(1)分科会のねらいに対する結論
ほとんどの大学が何らかの形で学生生活支援のためにITを導入あるいは導入を検討していた。各大学の規模、IT化推進の状況、ITに対する力点の置き方等の違いを踏まえ、参加者各人の考え方・立場から意見交換を行うプロセスを通じて、他大学の状況を推察・理解することにより、参加者は新たな視点の発見、視点の拡大を得られたと考える。特に、事例発表はいずれも先進的な事例であったため、参加者にとって、大いに参考となった。
終了後の自己評価に、「他大学の実践例を聞く事が出来、今後の取組みに活かせる」「他大学の先進性を知ることが出来、自大学の現状を認識できた」等の記述がみられ、また業務への姿勢についても「業務は担当者の資質に依存する部分が多い」「現場レベルの意見のみでなく高い観点から考えることの必要性を感じた」等の記載があり、新たな気づきがあったことが分かる。
また、「ITツール利用により学生との対面コミュニケーションが減少することを危惧する」意見や「ITによる『便利さ』の追求のみでなく、教育上の有効性、必要性を考えることも重要」とする意見があったことは、ツールを運用する側の能力や熱意の重要さ、人材育成の必要性と組織体制の確立の必要性についての理解を示すものであることから、参加者のモチベーション・関心を高めるという分科会のねらいは概ね達成されたと評価できる。
(2)討議テーマに対する結論
グループ討議開始前に討議の方向性とテーマについて説明を行い、討議成果の発表により総括は行うが、発表することのみを目的とせずに討議の過程を重視し活発な意見交換をするようにお願いしたが、このことを参加者が意識していたことにより、議論が有意義に進められたのではないかと考える。
両グループとも、学生ポータルサイトをメインテーマとし他のテーマと関連させながら討議を進めたが、同じような討議経過で進み、発表内容も似たものとなった。このことは、各大学がほぼ同様の問題に直面していることの表れと認識できる。学生ポータルサイトについて各大学で共通して問題、課題と認識していた事項は、利用率の低さ、運用体制の未整備(部署毎の対応の不統一、ルールの未整備、他の掲示媒体との調整、基幹システムとの連携等)、個人情報保護の確立、携帯端末(携帯電話)の利用範囲等であり、この点に関して活発な意見交換が行われた。討議は、機能面、運用面を中心に進められ、機能面では、必要な機能を利用者(学生)側に立って分析し、今後の改善に向けた方向性を考察することができ、運用面の検討では、コミュニケーションツールとしての限界を認識するとともに、より有効な活用なためには教職員の意識改革が必要となることが確認できた。
グループ討議成果発表の内容自体は、時間的制約もあり、また各々のサブテーマ自体が多角的かつ奥行きが深かったため、表面的な内容に限られたものとなった印象があるが、討議の過程では様々な意見が出され、今後の展開に向けた萌芽が含まれた意見交換となった。
大学を取り巻く環境は厳しさを増している。志願者数の減少による入学生の多様化傾向、学生の志向の変化、社会からの要請の変化等、大学が対応しなければならない課題が山積している。こうした問題を解決するためには、個々の学生へのきめ細やかな対応が必要となり、IT利用を前提にしなければ有効性を期待できない。ITをどのように活用していくべきか、有効な利用方法について常に検討・検証すべき問題である。また、経営的視点、すなわちコストパフォーマンスの評価も今後検証テーマとなり続けるであろう。キャンパスライフを支援するためのIT利用については、様々な観点からの検討が求められている。今回のグループ討議は参加者各人にこのことを改めて意識させることとなり、次の展開に向けた示唆となったと考える。
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