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文学教育IT活用研究委員会

社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第1回法律学教育IT活用研究委員会議事次第

T.日時:平成16年6月30日(水)午後6時から午後8時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:吉野委員長、笠原、中村、町村、高嶌各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

 1.中村委員による授業事例紹介「ITを活用した授業指導の効率化」

中村委員より、前任校で使用していた、データベースを活用した学生の状況把握と学習管理システムについて報告がなされた。まず本システムを使用するまでの経緯について説明がなされた。

法科大学院の設立に伴い、学部教育に対する教員のエネルギーが裂かれてしまうことから、データベースに学生情報を集約し、個々の学生に対して適切に指導し十分なサービスを提供するとともに、作業の効率化を図るために本システムが導入された。

(1) これまでの状況確認

これまで大学が個々の学生の将来の志望、学習状況を把握していたかと言うと、将来の志望については年に一度就職課が収集した情報だけか、ゼミの先生が聞く程度であり、日々変化する学生の将来志望に対して適切な情報提供、フォローを行うことは難しい。学習状況はテストの成績表で把握するだけで、その学生の進捗や理解度を厳密に計測することは不可能である。

(2)学生指導にCRMの手法を  

そこで、ビジネスソリューションとして用いられているCRM(Customer Relationship Management)の手法を顧客である学生に対して導入することにした。

CRMとは、データベースを利用して顧客と長期的な関係を築く手法であるが、例えば単に住所氏名だけではなく、その顧客のニーズ、過去の購入履歴、問い合わせ履歴を総合的にデータベースに蓄積することにより、個々の顧客の購買意欲の方向性を把握して、顧客が好むと思われる商品やキャンペーンの情報を次々に提供することで、満足度を向上させる(最も身近な例としては、http://www.amazon.co.jp/を参照されたい)。

(3)ソリューション

学生は、高校時代に手厚い指導を受けてきたため、大学での学習方法に馴染むことができず、また教員は学生一人一人に顔と名前を把握していないことなどから、大学は何もしてくれないと不平をこぼしている。CRMの導入は、そのような学生のニーズに対して

適時に適切な情報を提供することが可能となる。

例えば、学習方法がわからないというのであれば、学習項目のリストアップとともに各項目にコンシェルジュ機能を付与して、将来の志望に合わせて重点的に学習すべきものにマークアップしたり、学習が足りない場合には適宜指導したりすることが可能である。また、学生の学習状況を把握できれば、将来の志望が明確でない学生に対しても成績に合わせて助言することが可能であり、また将来の志望と成績がマッチングしない場合には、進路変更の助言を行うこともできる。

また、教員が学生個々のポータルサイトにメッセージを送信すれば、学生の教員に対する親近感が沸き、研究室への訪問の積極化も図れる。(実際に教員は個々の学生にメッセージを送信するのではなく一括送信となるが、学生は他の学生のサイトを閲覧することはできないので、自分だけにメッセージが送信されていると思い込む。)

(4)学生ステータスカード・データベース

このような、個人ポータル用のデータは、学生が自らブラウザ上で登録し、適宜情報の変更を行うことが可能である。それにより、将来の志望が変更した場合には、適宜情報の変更が可能であり、大学側も常に学生の志望を把握することが可能である。また、同じ志望を持つ学生をグループ化することにより、それに関する講座が開講された場合や人数に応じて課外講座を開設することなど対応することができる。また、そのデータを就職相談室や学生相談室と共有することにより、部署間連携が実現できる。

学生の学習履歴状況管理については、学生の現在の学習項目の履歴を客観的にデータ化するのではなく、学生自身の自己申告により登録するため、学生はマイペースに学習することできる。また教員は申告された情報をもとに学生の進捗状況を把握し、将来の志望と学生の特性のマッチングや指導を行うことができる。

なお、本システムはLotus Notes/Dominoを用いて構築されている。詳細はhttp://www.juce.jp/senmon/houritsu/video/nakamura1.asx
http://www.juce.jp/senmon/houritsu/video/nakamura2.asx を参照されたい。

2. 笠原委員による授業事例紹介(ロースクール教育におけるIT利用)

笠原委員より、従来の講義の活性化を通じてキャンパス全体の活性化を図るための手段としての、IT活用事例を紹介いただいた。

 まず、笠原委員の担当授業とその目的であるが、学部では法情報学、法律表現演習、法律事例演習、ロースクールでは、法情報検索、法情報学を担当しているが、これらはITを駆使することのできる法曹家の養成を目的としている。具体的な授業内容としては、従来型の書誌CDロムによる情報検索、Webからの情報収集(教材提示を含む)、ML、ネットニュース、掲示板等でOB、専門家と意見交換することが挙げられる。学部のゼミでは、さらに情報作成・発信の実習として、ゼミ独自のサブドメイン下でのネットワーク管理、ゼミウェブページの作成なども実践している。

これらの授業は、@情報・資料の提供(Webページ)、Aヴァーチャルセミナー(ML、掲示板機能)、Bヴァーチャルオフィスアワー(チャット機能)、Cヴァーチャル講義(VOD)の四つのフレームに基づき実施されている。特にロースクールでは、知識の伝達を事前に行い(Webページ)、更に予め授業テーマについてディスカッションさせる(ML、掲示板機能)ことで、対面授業ではソクラティックメソッドによるより高度な授業が展開可能であり、またヴァーチャルオフィスアワーやヴァーチャル授業の実施は、時間の自由に無い社会人学生に対しては好評である。

このような授業を実施することにより、学生の学習態度が「教わる」から「学ぶ」、つまり受身の授業から学生が自主的に学ぶ授業への変容、いつでもどこでも学ぶことのできるユビキタス環境の実現、学生間の共同作業によるコミュニケーションの促進、期末テストに頼らない授業評価の客観化、OB、専門家、複数大学間における交流などの教育効果を上げることができた。

一方問題点としては、教員の過重負担、履修者の慣れの問題、発言者の偏りなど挙げられるが、それぞれTAの充実、受身の学生に対する働きかけ、単位による動機付けが必要である。

その他にサイバーコートも導入し、事故現場のヴァーチャルな再現、法廷記録の電子化、音声認識による速記録作成、遠隔地の当事者や専門家の参加等実践している。

ロースクールでは、e-Learningシステムを用いて、学内限定でWeb上でシラバス・授業内容、授業に関する資料の公開、掲示板、ビデオオンデマンドによる講義配信を行っており、これらは全教員に課している。しかし、笠原委員は複数大学間で大学の垣根を越えた議論を実現するため、ビデオオンデマンド以外の機能は外部サーバーを用いている。e-Learningシステムを導入すると、一大学での利用に限定されてしまうため、今後はハーヴァード大学で開発されたオープンソースのロティセリ等の活用も検討している。

 

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