基礎講習Eグループレポート
第1グループ 寸評【環境の変化に対応した『学士力』の修得】
「大学の質保証」という根源的なテーマに対して、ICTを活用した学生支援ツールの作成を提案している。履修登録をはじめ、シラバスの公開、学生カルテの導入、授業評価アンケート、e-ラーニング、就職支援ツールといった、学生が必要とする情報が集約されたポータルサイトの構築こそが、今の時代に即した学生支援であるとの主張だ。いずれの機能も研修全体を通して得られた各大学の好事例を取り込んだ内容となっており、グループ討議の成果が伺える。
だが、学士力の修得がICT化によってすべて保証されるわけではなく、ましてや退学率や就職率などの問題に対する特効薬であるわけでもない。これらのツールはあくまでも補助的な役割でしかないことを十分に押さえておく必要がある。
第2グループ 寸評【学生支援に対する情報の活用~「能動」へのキッカケ作り~】
学士力を身につけた学生を社会に輩出するために、大学職員としてできる支援とは何かという問いに対して教務系部門の観点から提案をしている。
具体的には、履修登録の際に「自己分析シート」の提出を義務づけ、シート情報を基に職員が「学生カルテ」を作成し、面談などで得られた課題や相談記録を都度入力・更新しながら成長を見守ることで、学生と積極的に関わっていく体制を整える。続いて、シラバスと連携したウェブ履修登録の流れを例示し、学生が能動的に学習できる仕掛けづくりが大切であることを示した。
全体として粗さはあるものの、大学の規模や構成内容によっては実現可能度が高く、初日の講義内容が活かされた内容であったと言える。
第3グループ 寸評【PDCAサイクルを用いた大学改善~あなたの一票が大学を変える~】
大学の主要構成員である「学生」「教員」「職員」の三者に注目し、退学者数の増加や学習意欲の低下の根本原因が、三者間におけるニーズとシーズのずれであることを指摘している。例えば、学生が本当に知りたい情報を大学が提供できていないことや、大学の抱える問題を教職員で共有できていないことなどを挙げた上で、問題点を可視化するために、その改善方策をアンケート調査に見出した。ただし、継続してアンケートを実施すること自体を目的としているため、その掘り下げが甘く上滑りな感が否めない。
しかしながら、大学における教育が満足できるものかどうかを測る尺度は必要不可欠であり、今回の議論を活かして次のステップにつなげてほしい。
第4グループ 寸評【職員間における情報共有の見直し】
グループ内の参加大学すべてに共通する問題点として、業務内容に関する情報を部署内や他部署間で共有できていないことを挙げている。それが結果的に業務のセクショナリズムを招き、ひいては学生対応におけるたらい回しを引き起こしていると考えた。これらを改善するために、ミーティングの活用、統一様式による業務のマニュアル化、業務レポートの作成などを提案している。いずれも基本と思えることばかりだが、実際にはできていない大学が多いという現実に驚かされる。
畢竟、学生をはじめとするあらゆるステイクホルダーの視点に立ち、いかに動くかが鍵となる。そのためには、大学の理念に基づいた組織全体の目標の明確化と共有が大前提であり、職員だけが取り組むべき問題ではないのかもしれない。
第5グループ 寸評【学生の満足度をあげるためには?】
学生の満足度を上げるための様々なアイデアが提案されている。中にはすでに他大学で実施済みの事例も含まれており、今後大学で提供されるべきサービス内容の類型として参考になる。なかでも、各部署の業務内容や相談事例をデータベース化し、キーワード検索が可能なシステムを構築する案などは先進的で興味深い。ただ、多角的に捉えすぎたがゆえに提案全体としてまとまりがなく、個々の改善策が有している訴求力が弱くなってしまった。
ブレーンストーミングによる発想をグループ化し、課題解決を図っていくという目標は十分に達成できている。次なるステージとして課題の緊急度や予算状況をも勘案し、さらにPDCAサイクルに則った立案ができればなお良いだろう。